葉っぱを お金に変えた人。  「いろどり」の横石知二さんから、グッドニュース。
第6回 隙があると‥‥。
糸井 横石さんとお付き合いをするために
近づいていらっしゃる方々は、
良い意味でも悪い意味でも
何らかの「欲」を持って
横石さんのところへいらっしゃいますよね?
横石 そう、ですね‥‥。
糸井 すみません(笑)、
また答えづらい質問で。
横石 いえいえ。
でも、そういうふうに言えると思います。
糸井 付き合うべき「欲」を持った人と
付き合っちゃいけない「欲」を持っている人と、
どうやって見極めているんですか?
横石 やっぱり‥‥自分の「立ち位置」ですね。
判断の基準になるのは、そこだと思います。
糸井 立ち位置。
横石 自分の立ち位置を保てているか。
人にお会いするときは、常にそれを考えてます。
糸井 その判断の方法で、当たってきましたか?
横石 当たってきましたね。
すぐわかるんです、そこは。
糸井 そうですか。
実はぼくも、けっこう当ててきてるんです。
ちょっと慎重すぎるくらいの
付き合い方をしちゃうんですよ。
なんていうんだろう‥‥
「人間って意外に怖いもんだ」
っていうことをぼくは知ってるつもりなんです。
で、その人間の中には、自分も入っている。
根本的にぼくは、
自分を信用しきってないですから。
「欲」については、自分だって危なっかしい。
横石 そうですか、そうは思えませんが。
糸井 いや、危なっかしいんです。
だから、自分を危なっかしく思う分量くらいは、
他人にも疑いの目を
向けさせていただこうと(笑)。
「信じることができないあなたは悲しい人だ」
と言われるかもしれないけれど、
信用しきったおかげで
両方もろとも死ぬのはいやですから。
横石 ああ、それはありますね。
糸井 疑いを持たずに愉快な話だけを信用して、
「信じたいんです!」なーんて言ってる自分は、
もう、隙だらけですよね?
横石 おばあちゃんの世界もそうなんです。
糸井 あ、そうですか。
横石 おばあちゃん自身が
「欲」に対して揺れているときは、
だめですね。
糸井 へええー。
おもしろいなぁ。
横石 おもしろいですよ。
「欲」で隙ができると
商品にあらわれてきたり、
いろんなことがうまくできなくなるんです。
糸井 隙かあ、隙ねえ‥‥。
この前、ちょっと短い文章を書いたんです。
「選挙に立候補しないか?
 と誘われるのは、その人に隙があるからだ」
っていう文章を。
つまり、横尾忠則さんとか、
赤瀬川原平さんだとか、
ぼくが付き合ってるおもしろい人は、
そういうことに誘われない人ばっかりなんですよ。
で、ぼくは一度だけ誘われたんです。
そのときは隙があったんでしょうねぇ。
横石 あー、なるほど。
糸井 その隙については、
自分でも思い当たるんですよ(笑)。
横石 いや、糸井さん、すごいことを考えますね。
そうですか、隙があるから。
糸井 結局、声をかけてきた人に一度会って、
「なんてくだらないやつだ」と思われて、
二度と会わないことになったんですけどね。
でも声をかけられたときに、
悪い気がしてなかったんですよ、おれ(笑)。
横石 私も、何年か前にありました。
糸井 ありましたか!(笑)
隙を見せた?
横石 そうだったんでしょうね。
糸井 そうかー、
「村のために自分は何かをやるべき!」
っていうのも、欲のうちになりますから。
でもそれは、身の丈じゃない自分なんですよね?
横石 ええ、そういうことです。
糸井 誤解のないように言っておきたいのは、
ぼくは政治全体を
否定しようっていうんじゃないんです。
ただ、自分の身の丈ではないと。
身の丈じゃないのに誘われるのは、
やっぱり隙があるからなんですよ。
横石 うーん。
糸井 だって、今のイチロー選手を誰が誘う?
横石 ぜったいに誘わないです(笑)。
糸井 いや、それにしても、そうですか、
横石さんも、ありましたか。
横石 みごとにありました。
糸井 あぁー、いい話だ(笑)。
でも、誘われるがままじゃないってことは、
隙はあったけど、
立ち位置はグラつかなかったんですね。
横石 まあ、大丈夫でした。
糸井 そうかぁ(笑)。
横石 変な欲がちょっとでもあると、
そういう隙ができるんでしょうねぇ。
で、お金っていうのは、
隙がうまれる要因としてすごく大きい。
糸井 力のシンボルでもありますから。
横石 はい。
糸井 だって少年にね、
「喧嘩強くなりたいか?」って言ったら、
「なりたい」って言うと思うんですよ。
そのくらい、人って力が欲しいわけで。
横石 そうですね。
糸井 そういうところから、
完全に自由になるのはなかなか大変なことで。
そこは、うーん‥‥。
ちょっと油断してると、すぐ誘われますよね?
横石 ええ(笑)。

(つづきます)
2010-06-17-THU
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