ルールを原始的に。 ルディー和子さんと、お金と性と消費の話。
 
第8回 うすれゆく日本人のセックス。
糸井 ぼく、正直言って、
性から解脱してますもん、もう。
とっくに。
性欲って思えるようなものは
いくらでもあるし、
いつでもスイッチ入れられるけど、
その、なんだろう。
そんなにたいへんなこと考えなくても、
他でおもしろいわ、っていうような。
ルディー そうなんですよね。
まぁ、ほんとに、
いまネットとかいろんなのあって、
あまりにもエキサイティングなことが
たくさんあると、今度は反対に、
昔の報酬系がもうそのぐらいのことでは、
活性化しなくなったってことで
あったとすればですよ、
これはもう、しょうがないですよね。
糸井 うん(笑)。
で、そのわりに、アメリカ人って、
プロテスタンティズムの
裏返しじゃないかと思うんだけど、
バイアグラ売るじゃないですか。
外国の調査を見ると、
とにかく性的にアクティブですよね。
で、日本人だけが異常なんだっていう
調査になっちゃうんですけど、
人類そんなにアクティブに性に関わるって、
ちょっと昔の脂肪を取りたがってた
時代過ぎるんじゃないかなぁ。
でも映画なんかで描かれてる、
『アメリカン・ビューティ』みたいな
タイプの映画とか見ると、
もう、そこ、終わってますよね。
どっちよ、と。
ルディー わたし、これ言っちゃうと
ほんといろいろ語弊が
あるかもしれないんですけど、
やっぱりアメリカって国の強さは、
移民を入れてるってことと、
それから、やっぱり、
他人との比較ってものがあるということ。
男の人って、
コンペティティブっていうか、
競争でしょう。
自分も性的にがんばらなくっちゃ、
っていうところが出てきますよね。
それから、移民っていうことは、
やっぱり、新興国とか、
開発途上国から来てる人たちっていうのは。
糸井 じゃんじゃん子ども作るぞっていう?
ルディー はい、そういうのがやっぱり、
アメリカの強いところじゃないかなぁと思います。
糸井 ああー、そうかぁ。
競争相手が上にも下にもいるんだ。
ルディー そして新しい血が
入ってきてるんですよね、どんどんと。
糸井 なるほど。
そうすると、うかうかしちゃいられねぇぜ欲が。
ルディー やっぱり、競争心が出てくると思うし、
いつも新しい血が入ってきてるってことは、
DNA自体も少し変化することだし、
やっぱり、全体としての強靭さが
全然ちがってくるんじゃないかな、
と思うんですよね。
糸井 ヨーロッパともちがいそうですよね。
ルディー ヨーロッパも移民が多いですけど。
イギリスとかドイツとか、
なんか日本人と似て、
一所懸命働きそうなところっていうのは、
やっぱり、いわゆるほんとに、
セックスの頻度は──。
糸井 下がってる。
ルディー 日本ほどじゃないんですけど。
糸井 ああー。
ルディー 逆に南欧はもともと、
ギリシア危機みたいな感じで、
みんなスローライフを送ってるんで。
糸井 食べ物に対する欲望、
性に対する欲望、
もう、一個は、ちょっと
近代的な意味じゃなくって、
健康とか生きることに対する欲望、
この辺りの、実は知らず知らずに起こってる
パラダイムの大転換を、
ちがう物語を間に挟んで、
ごまかし、ごまかし、いまを生きてるだけで。
ルディー そうですよね。
糸井 あと、100年経ったときには、
これはあんときは過渡期だったねぇ、と。
それが先にわかるのは、ぼく
日本人じゃないかなぁと思うんです。
ルディー あ、そう思います。
ある意味では、いちばん先端を行ってる。
糸井 足りてるしね。
ルディー 足りてるし。
糸井 のんびりしてるし(笑)。
ルディー 競争あんまりないし、
そもそも競争社会じゃ、あんまりないし、
新しい血もあんまり入ってきてないし、
そういうことを考えると、
これも──、
ほんとにあんまり言っちゃいけないと思って。
本に書こうと思ったら
出版社にやめてくださいって言われたんですけど。
糸井 そうですか。
ルディー 過激すぎるとか、
品が悪いとか言われたんですけど。
糸井 はい。
ルディー 排泄するところと、性に関係するところと、
場所、すごい近いじゃないですか。
糸井 うん。
ルディー だいたい、どうしてそうなったのか、
そういうふうに作られてるのか
わからないんですけど、
清潔という点から考えたら、気持ち悪いですよね。
アメリカ人はそれでも毎日シャワー浴びますけど、
ヨーロッパって、けっこう
みなさん同じ下着で1週間とか、
そういう調査結果が出てるんですけど
先進国のなかでも日本人っていちばん潔癖症なんですね。
あまりに清潔好きなんで、
アジアの人たちと共同生活できなくなる、
とか昔いろいろいわれましたけど。
わたしはほんとに、
どうして性のことに関してだけ、
報酬系が活性化しないのかなと思ったときに、
やっぱり日本人は清潔好きすぎるんだって考えてて。
糸井 そうですね。
ルディー すっごくそれって、若い世代には、
とっても関係あると思うんですよね。
糸井 うん。
ルディー それで、そのときに、
ウォシュレットの普及率が増えると
性に興味がなくなってくる、
っていうの書いて(笑)。
糸井 はぁー、おもしろーい。
ルディー 原稿書いて出したんですよ。
そしたら、
すいません、これは、
日経新聞の品にちょっと
合わないんだけど、と。
糸井 ああー。
ほぼ日刊イトイ新聞は大丈夫ですよ。
ルディー はい。
糸井 きれいにしておく、っていう発想と、
性が普段持ってるタブーを
全部はずしてしまって、
わたしとあなたは一体化しましょう、
っていう、レッツ、っていう姿勢とは、
やっぱり矛盾しますよね。
ルディー ええ。
糸井 これもね、誰かの研究を
吉本さんが読んだんだと思うんですけど、
おもしろかったのは、
女性にとって、男性との性体験というのは、
子育ての練習だ、っていう説があって。
ルディー ああー。
糸井 まぁ、品悪く言えば、
ぐっちゃんぐっちゃんの泥んこ遊びがアリだ、
っていうことをそこで覚えて、
自分のアイデンティティをぶっ壊しちゃって、
新しい何かを見るっていうのを、
男との関係で学んで、子どもを育てるんだ、
っていう説があるんですね。
ルディー はい。
糸井 これ、ちょっとリアリティーがあって。
子どもとかいらない、っていうのと、
男とも、もっと清潔に付き合いましょう、
っていうのは、
けっこうニアリーイコールですよね。
でも、アメリカンポルノを見てると、
とにかく、一緒に地獄に落ちましょう、
っていうメッセージが入ってるんですよ。
で、日本のポルノグラフィーっていうのは、
女はそういうことはしたくないのに、
男が誘うからだと。
ルディー そうですよね。
糸井 つまり、サディズムなんですよ。
で、それをもう一回逆転させて、
サディズムがひっくり返っちゃいました
さぁ、たいへんっていうのがもう一個あるわけで。
どっちにしても、
合意のもとに一緒に地獄に落ちるっていう
レッツっていうポルノグラフィー、
基本的には日本にはないんですよ。
ルディー うん。
糸井 そこもたぶん、日本独特のSM趣味というか、
嫌いなのを誘って、力任せに
連れ込んじゃおうぜっていうのが、
日本の男の力の誇示の仕方なんですね。
ルディー うんうんうんうん。
糸井 それもきっと、無意識でお金の話と
重なることだと思うんですよ。
ルディー いや、関係、すごくあると。
使ってる脳の仕組みは、
おなじところ使ってるんで。
糸井 たぶんねぇ。
オレがこうやって、
100万円出すって言ったら、あいつ転んだよ、
っていうのは、サディズムじゃないですか。
一緒にお金使って、なんか無駄遣いして
騒ごうぜっていうのとは、ちがいますよね。
ルディー うん。
糸井 どっかで、理性が入ってるんですよ。
日本人の、欲望との関係って。
それを両方、しゃべってる自分って
なに人なんだって気がするんだけど。
なんなんでしょうね。
ルディー うーん!
糸井 いや、この話、やっとできた!
ルディー いや、わたしもあんまり
言ったことなかったんで(笑)。
糸井 そうですか。
ぼくね、社内でもね、
言う相手がいなくてね、
我慢してたんですよ。
ルディー いやー、いまいちばん不思議なのは、
ほんとにさっきも言ったように、
なぜいちばん不潔なところと
性に関係するところと近くにあるのかな、って。
これは絶対若い世代には受け入れられないな、
と思ったことが、やっぱりありますし。
やっぱり、ほんとに、どうして、
性に関することだけは、報酬系とか
そういうのが、うまくはたらかないように
なってるのかなっていうのは、
ものすごく不思議ですね。
糸井 それは、ずーっと宿題にしてたら、
なんか、急にわかったりするのかもね。
ルディー いやー。
いろいろ、もしかしたら
新しい研究が出てくるのかもしれないんですけど。
糸井 まったくちがう研究ひとつが、
そこに、補助線みたいに入ったら。

(つづきます)
2010-07-21-WED
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