みうらじゅんに訊け! お金篇  ことあるごとに みうらじゅんさんのもとへ 何かを訊きに行く「ほぼ日」ですが、 今回のテーマは、お金です。 笑っているつもりが役に立つ‥‥かもしれない。 もしかしたら、ほんとのほんとはそうなのかも、 と思えてくるような すばらしいみうらさんの「お金論」、 短期集中毎日連載です!
第2回 土中の缶に気をつけよ。

ほぼ日 日本の景気には、高齢化社会も、
関係してくると思います。
みうら 年を取ると、お金の使い道が
あんまりないんですよね。
買うものといってもせいぜい
お墓とか塔婆ぐらいです。
思いっきり趣味があるといっても、
社寺仏閣廻りとかでしょ?
ほぼ日 はぁ、はい、はい。
みうら それまでえらく稼いで
お金も残ってるかもしれませんが、
その頃はもう
「ちょっと秋葉原に
 フィギュアでも」

とかいう気もなくなっているわけです。
足腰も弱ってますし、
わざわざ総武線に乗って
行く気にもなれませんでしょう?
そうすると、貯まる一方じゃないですか。
そのうえ、そういう世代の方々は、
銀行が信用できないとか言い出して、
自分ちの床下とかに
お金を埋めとくでしょ。
そうなったときですよね、やっぱり、
問題は。
ほぼ日 問題は。
みうら ぼくが小学生だった頃、
タイムカプセルというのが流行りました。
ぼくもいろいろ、漫画とか、
お菓子の缶に入れて、庭に埋めました。
1年ぐらい経ってすぐ、
どうなってるのか気になって、
開けてみました。
そしたら、漫画の色が抜けて、
全部なくなっていたんですよ。
ほぼ日 へえぇ。
みうら 酸素が足りないからか
何か知らないですけど、
印刷が全部なくなっているんです。
ですから、お金もきっと、
お菓子ケースに入れて埋めているうちに、
プリントがなくなりますのでね。
ほぼ日 はははははは。
みうら 稼いだのにもかかわらず、
白いもんばっかりが残ったりする。
そんな事態もあると思います。
お金って、べつに
鉄の板に彫ったものではありません。
所詮、印刷ですからね。
ほぼ日 そうですね。
みうら 甘く見てますよね、そういうとこをね?
ほぼ日 そうですね。
世を去るとき
だいたい2、3000万ぐらい持ったままだ、
と言われたりしますから、
それはもう、深刻な問題です。
みうら そうでしょ。
言ってること、正しいでしょ。
ほぼ日 はい、正しいです。
みうら 入れるのは、だいたい
ヨックモックの箱でしょう。
ほぼ日 お菓子の、ヨックモックの缶の箱。
みうら ヨックモックの箱に、おそらく
1万円をぎっちり詰めて
埋めてると思うんですよ。
はじめはちょっとしたチョコレート臭がつく、
それぐらいで済むでしょう。
だけど、何年かして、
ヨックモックの箱を開けたときに、
印刷がすべて取れてることに気づきます。
ほぼ日 まちがいなく。
みうら ええ。
道で1億円拾ったとかいう人、
いらっしゃいますが、
あれは、早く発見したからよかったんです、
道だから。
ほぼ日 酸素もあるし。
みうら 糸井さんもやっておられた埋蔵金、
あれは金(きん)だから出てきますけど、
紙幣だったら残念ながらないですよ、
印刷、取れてますからね。
ほぼ日 ははぁ、印刷はだめですね。
みうら だからこそ、
まだ印刷があるうちに使うべきだ、
ということを
ぼくはこれだけ言ってるわけですよ。
「金って、ただの紙さー」とか言う人いるけど、
ちがいます、
正しくは、お金は印刷のことですよ。
ぼくも出版界、長いですから、
そのあたりはわかります。
ほぼ日 じゃあ、印刷があるうちに
早く使わないと‥‥。
お年寄りはいったい
何に使えばいいと思われますか?
みうら 残った金は1回、
戻さなければだめですよね。
ほぼ日 戻す????
みうら だって使い切れなかったわけですから。
ほぼ日 はい、はい。
みうら ゲームでも、終わったら戻すじゃないですか。
人生ゲームでいっぱい稼いで、
その金持って帰るヤツ、いませんよね?
ポケットに突っ込んで帰ろうとしたら、
「おーい、
 俺のゲーム機じゃないかー」

と友達に言われることになるのは、
もう、おわかりでしょ?
ですから、お金というものは
大蔵省にもっかい戻すしかないんですよね。
ほぼ日 財務省に。
みうら 全部が元に戻されるということになると、
みんな真剣になると思うんですよ。
「だったら使わなきゃ!」
ということになって、死ぬ前に必死です。
ものをいっぱい買ったり、
いろんなことで遊んだりしてると、
そうやって、うまく世の中が回ります。
なのに、ぼーっとしてっから、
不景気になります。
大蔵省に戻ることを知らないからですよ。
ほぼ日 印刷が白になる、お金が戻る、
という2大現象を
わかっていさえすれば、
悔やむことはなさそうですね。


では、今回のみうらさんの語り、
もちろん動画もご用意しています。
ぜひ、ごらんください。

それでは、また明日。
(つづく)


2010-08-11-WED

HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN