第4回 共通点

ほぼ日 沼澤さんやギャドソンさんが
ドラムをプレイするのと
われわれ素人の演奏では
明らかに違うのはわかるのですが、
なにが、どう違うのか、
やっぱりよくわからないんです。
おすしのサビ抜きのように
素人の演奏はグルーヴ抜きになってるんですかね?
沼澤 うーーん‥‥‥‥。
今までまぁまぁやってきたので
同じだったら逆に困るけど(笑)。
まず、グルーヴという言葉を
日本語に訳すとすると、
たぶん「ノリ」になるのかな。
で、ノリは音楽とは全然関係のない
日常生活の中でもつかいますよね。
「お前、ノリいいじゃん」とか
「ノリ悪いっすねー」とか、いうでしょ?
ほぼ日 ノリがいい、悪いはつかいますね。
沼澤 それは、たとえば
飲みに行こうぜって誘ったときに
いつも断られていたりしたら、
「ノリ悪いなぁ」ってつかう。
ほぼ日 はい、「付き合い悪いなぁ」って意味で。
「ノリ、いいね!」というときは、
やっぱり意見があったときとか‥‥。
沼澤 そうそう。
受け答えのなかで、すごく粋なことを
ベストなタイミングで返してくる、
そのスピード感がピッタリあったときに、
「おっ、ノリいいねー!」ってわけですよ。
要するに、
ノリのいい、悪いってことは、
その人たちの間に共通に感じられているものが
あるかないか、ということなんです。
ほぼ日 共通に、感じられているもの。
沼澤 そう。
なーんの共通点もないときには、
ノリがいい、悪いとかじゃなくて、
「何がいいの、それ」って、
もうそのこと自体が理解できないわけですよ。
ほぼ日 あぁー、そうか。
沼澤 なので、「この人はノリがいい人だ」と
たくさんの人からいわれていたとしたら、
おそらく、そのノリがいい人は
その人たちと何かしらの共通点を
もっているということなんだと思います。
ほぼ日 なるほど。
より多くの共通点をもっている人は、
たくさんの人とノリが合うわけですもんね。
沼澤 で、たとえば、
100人中95人が「ノリがいい」というAさんと
100人中10人が「ノリがいい」というBさんが
いるとするでしょ。
明らかにAさんのほうが
たくさんの人から「ノリがいい」といわれているけど、
それは決して、Bさんの「ノリが悪い」、
ということではないと思うんです。
少なくとも10人とは感じているものが共通しているし、
その感じているものというのが
その10人にとっては
間違いなくノリがいいものなわけですから。
ほぼ日 なるほど。
グルーヴの気持ちよさっていうのは、
単に数だけでは計り知れない、と。
沼澤 そうですね。
ま、基本的には、
このように、ふだんつかうノリと、
グルーヴは同じようなものだと思います。
ただ、特に音楽の世界では、
グルーヴが、作品の出来不出来まで関わってくる。
作品にものすごく影響する、
大きなファクターだってことなんです。
ほぼ日 あの人のドラムじゃ踊れないけど、
この人のドラムでは
自然に体が動いちゃうっていう、
違いになるんですね。
沼澤 そうですね。
音楽やドラムの世界では、
この人のドラムは技術が高くて
すごく正確に演奏してるし
とってもうまいんだけど、
なんだかつまんないって感じることがある一方で、
どうみても上手ではない演奏が
何かの理由でものすごくカッコよく思えて、
体が思わず動いちゃったり、
楽しかったり、ということがふつうにある。
ほぼ日 うんうん。
そういうことは、
考えてできることではないような
気がするのですが、実際にはどうなんですか?
沼澤 うーん、それは人によりけりだと思います。
たとえば、
ぼくがドラムをプレイするとき、
仮に、スガシカオさんのレコーディングに
参加することになったとしましょう。
そのときに、ぼくは
自分が持っている技術や表現力をどう活かせば、
スガシカオさん自身と、彼の音楽が光り輝くか、
ということを第一に考えます。
自分のバンドでプレイするときでも、
基本的には同じですね。
バンドのメンバーの演奏を
最高のものにするにはどうするのか、
と考えてプレイしてます。
ほぼ日 はー、そうなんだー。
幅広くいろんなミュージシャンたちと
いっしょに演奏している沼澤さんだから、
そういうところを
人一倍大事にされているんですね。
「オレのプレイを見てくれ!」
ってわけじゃない。
沼澤 そうかもしれませんね。
まずは自分がいるけど、
ぼくにとっての音楽は
だれかといっしょに奏でるもので、
一人でなんて、絶対にできないです。
なので、演奏する人だけでなく、
まわりの環境とか、
もうすべてが関与してきますね。
ほぼ日 環境、というと?
沼澤 グルーヴやノリって、
人の変化とともに、変わっていくんですよ。
たとえば、住む環境の変化とか。
いっしょに住んでいるときは
兄貴と仲悪かったのに
結婚して家を出て行って
いっしょに住まなくなったら
すごく気があうようになった、
みたいなこと、ありますよね。
ほぼ日 あります、あります。
沼澤 それと同じで、今回開催される
ドラム・マガジン・フェルティバル2012
でいうと、
ステージにドラムをセットする人、
マイクを立てる人、照明を操る人‥‥。
極端にいえば、車で会場までいって、
駐車場にいれるときに
「こちらへどうぞ」って誘導してくれる人や、
お昼のお弁当を持ってくる人まで、
それに関わっている人が大量にいるわけですよ。
で、その人たちが全部つながってくれてないと、
うまくいかないですよね、やっぱり。
なので、そういう関係性は
どんな状況でも一番大事だと思ってますし、
とても気になるところです。
ほぼ日 そうか!
ライヴというのは
ステージ上の演奏だけでなく、
お客さんやスタッフが一体となって
つくり出すグルーヴなんですね。
なるほどー、
グルーヴの入り口が
見えてきたような気がします。
沼澤 そうです。
つまり、
グルーヴとかノリがいい・悪いというのは、
お互いに何か共通してる感覚があるかないか
ということで、
ノリをよくしたいからといって、
練習したり、人から習ったりして
簡単に習得できるものでもない。
ましては、教則本などを読んで
養えるものでは決してない。
ジェームズ・ギャドソンという偉大なドラマーが
歴史的、世界的に最もグルーヴがある人と
音楽の世界で語り継がれてきている。
これこそが、
この人がいかにアーティストやリスナーをはじめ、
多くの人々との共通点があったか、
ということの証なわけです。
あえていうと、
グルーヴという言葉は
ギャドソンが世の中に現れたことで
生まれたに等しいことも。
ほぼ日 うわぁ、
なんだかドキドキしてきました。
沼澤 「ほぼ日」で18日の夜に
糸井さんにも参加していただくワークショップでは、
もちろん、可能なかぎり良質な音で
録音した映像をUstreamで配信できたら、
と思いますけど、
時間のある方は、ぜひぜひ会場まで足を運んで、
この「ドラム・マガジン・フェスティバル2012」で
ギャドソンが放つ生の音を体感してもらえると
より感覚的にわかってくることがあると思います。
先日もツイートしましたけど
太鼓の起源は通信なんです。
ステージだけでなく会場全体の空気が振動して
伝わってきた音で交信する、
つまり、グルーヴが生まれるので。
ほぼ日 今、ほとんどの音楽が
コンピューターとか機器をつかえば、
簡単に、しかも
絶対にブレることのないリズムを刻めるのに、
「ギャドソンのドラムでなきゃ!」
って人がたくさんいるのは
こういう理由があるからなんですね。
沼澤 それは、単純にドラムという楽器を
人間が演奏するものだからでしょう。
アコースティックな楽器は、
やはり血が通った人間の肉体と感情によって
表現されることに適しているはずですし。
ギターも、バイオリンもすべてそうです。
人間が楽器を演奏することと
機会がビートを生み出すということは
どちらもすばらしいけど、
全くの別世界ですから。
ほぼ日 うぁーっ。
最近、ライブに行くのはごぶさたでしたけど、
久しぶりに音の洪水に
身をゆだねたくなりましたよ。
沼澤 ステージの演出はすべて、
ぼくが考えましたし、
なんとか予定通りに行くといいんですけど。
そんなことより、
とにかくギャドソンの
生のサウンドとグルーヴを、
感じてもらえたら。

さっきいっしょに
サウンドチェックやってきたんですけど、
あまりにスゴすぎてお話になりませんでした。
立ち会っていた関係者たちが
全員ビックリしてましたから。
生の空気の振動で彼のビートが
伝わってくるのは
信じられない説得力があるんです。
ほぼ日 はい!
ライブでは深く考えずに
ギャドソンさんの
「Feels Good」を味わうことにします。
「ほぼ日」での沼澤さんの解説も、
たのしみにしています!
沼澤 はい、がんばります!

(沼澤さんインタビューは、終わりです。
 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。)

13日、本日19時より、
「ドラム・マガジン・フェルティバル2012」にて、
沼澤さんとギャドソンさんが共演されます。
まだ、ご予定が決まっていなければ、ぜひ。

2012-10-13-SAT