ほぼ日刊イトイ新聞

 鶴見の糠漬け。

ぬか漬けって、どうして漬かるの?
 

ええっと、
出版社で単行本の編集をしている鶴見と申します。
これから、ぬか漬けのいろいろについて、
ぼちぼちと連載していこうと思います。

料理好きで、かなりいろいろ作りますが、
ぬか漬け暦は浅くて3年です。
あ、これから私が書くのは、
昔からぬかみそ漬けと言っていたものです。(注1)

小さい頃から、夏休みには、ばーちゃん家で毎日ぬか漬け、
冬は母の白菜漬けと漬物食べて育ったので、漬物ラブ。
でも自分の家で漬けていたのは、浅漬けまで。
ぬか漬けのためにぬか床を作るまでには至らず……。
手を出したのは最近のこと。
料理と違って、
ぬか床ってお世話しないといけないってのが
プレッシャーでした。

ナス

私が始めた時、
食いしん坊で料理好きな友人たちは口々に
「世話が大変でしょ?」
「旅行とか出張とか行くとぬか床死ぬでしょ?」
と言われました。
世話? 死ぬ? まるでペットみたいですね(笑)。
でも、そうなんです。ぬか床って生き物なんですよ!!

ぬか床って生きてるの??
とびっくりな方へまず、
ぬか漬けのしくみを説明いたしましょう。

ぬか床の基本は米ぬかに水と塩を加えた、
ぽったりとした半固形状のもの。
ここに野菜を入れると、
野菜などについていた乳酸菌(注2)
酵母菌が入って増殖。
さらに、ぬか床の塩分が野菜の細胞から水分を追い出し
(昔、理科で習った浸透圧ね)、
その後にぬか床の栄養分(主に乳酸菌)が入り込み、
漬物になるというわけ。

米ぬかは、玄米を精米(白いお米にする)するときにとれる
外皮の胚芽部分で、
食物繊維やビタミンBなど良質の栄養が含まれています。
そこに水が加わってますから、
放っておくといろんな菌が繁殖し放題! 
『もやしもん』(石川雅之著)を読めば分かるように、
世の中には菌がうようよしてます。
菌はいいこと(醗酵)も
悪いこと(腐敗)もします。(注3)
放っておけば腐敗菌が大活躍、
ぬか床は腐ってしまいます。

だいこん

というように、目には見えないけれども、
ぬか床は生きています。
なので、お世話(管理)してやらないと、
ダメダメなやつに育ってしまいます。
ぬか床の中にいるのは、さっき書いたように、
主に乳酸菌と酵母菌。
この菌が、ぬか床の中で適当(ほぼ均等)に
繁殖している状態が一番いい状態です。
なぜかというと、乳酸醗酵がどんどん進むと、
どんどん酸っぱくなっちゃって味が悪い(不味い)から。
酵母菌は、アルコールなどを出して
乳酸菌が増殖するのを抑えるので
両者のバランスが取れてこそ、
美味しいぬか漬けライフが楽しめます。

ええ? ほぼ均等?? どうやって??

乳酸菌は嫌気性菌といって、空気の嫌いな菌です。
そして、酵母菌は好気性菌という空気の好きな菌。

つまり! かき混ぜて空気をぬか床に取り入れることで、
中の乳酸醗酵にブレーキをかけ、
酵母の働きを促してバランスを取るというわけです。

あ、かき混ぜの効用はそれだけではありません。
腐敗菌や白カビはぬか床の表面にいるので、
空気に触れる面を小まめに変えてあげることで、
カビの発生を抑え、
さらに乳酸菌の出す酸で腐敗菌の
活動を鈍らせることができるのです。
かき混ぜることでぬか床をいつも菌にとって
(人にとって?)いい状態に保つのが肝心。

ぬか床には菌がいっぱい。
その活躍でぬか漬けができると分かったところで
1回目は終了〜。
次回は、よいぬか床作りに挑戦の巻!! 乞うご期待。

糠漬け参考図書
『もやしもん―TALES OF AGRICULTURE』

『もやしもん―TALES OF AGRICULTURE』
 ※1巻〜5巻が刊行されています(8/27現在)

「菌」が見える主人公が、
農大に入学して、さまざま経験していく話。
「菌」「微生物」について、かなり物知りになれる!

2007-09-04-TUE