#26 はじめてカメラを買ったんです。その7
写真と音楽はよく似ている。

講師

菅原 「ドラムのように、リズムのある写真。
 正確な写真、ずれちゃった写真、
 天才的にずれた写真、いろいろあります」

司会

「むずかしいですけど、わかる気がします!」
「じぶんにはむりですけどねー」
「わたしは、そんなふうに撮りたい!」
「あのー、その件で、
 ちょっと相談していいですか?」
山下 「わ、びっくりした!
 もぎさん、いたんですね」
司会
シェフ 「今回は大勢ですが、よろしくおねがいします」
菅原 ここまで見てきて、
ぼく、おどろいているんですよ。
みなさんとっても上手ですよ。
なななにを!
おっしゃるんですか!
やめてください!
菅原 いえ、ほんとにね、
カメラを買ったばっかりで、
それがたのしくて、っていう感じって
やっぱり写るんだなあって
しみじみ思ってるんです。
ぼくには、むりだもの。
それに、甲野さんの笑顔写真、
僕はそういうの、
あんま得意じゃないんですよ、実は。
そんなそんなそんな。
シェフ あの、糸井さんが、もぎさんに、
何か、撮るときのタイミングがどうとか、
この間、言ってなかった?
えっとね、わたし、
1枚しか撮らないでしょ、写真。
どんなときも。

山下 そうですね、
決め撮りというんでしょうか、
いさぎよく1枚ですよね。
シェフ で、糸井さんが
「俺を撮れ」って言ったときに
1枚だけ撮ってたら、
もっと撮れって言ったんだな。
そうそうそう。でね、糸井さんは、
ハイ、チーズって言った後の顔より
ちょっとタイミングが遅れた方が
面白い顔が撮れることが多いから
2枚撮っときなさいって。
シェフ へえ。
菅原 なるほど(笑)。
あと、お前はシャッター押す
スピードが速過ぎるって言われたー。
シェフ わははははは。
菅原 ほんと速いね。
シェフ 速いよね。早打ちガンマンみたいだよね。
カメラを構えながらもうシャッターに
手がかかってるかんじ。
スナイパーですよ。
スナイパー。
ボケてても気にしないからね。
シェフ その糸井さんがちょっと遅れた方が
面白い顔だっていうのは、
彼が見つけたんでしょうね。
菅原 糸井さん、みごとに写真の定説を
体得しちゃってるんですよ。
シェフ セオリーがあるんですか。
菅原 リズム(音)と一緒で、
単調になるじゃないですか。
で、裏が入るとグルーブするじゃないですか。
それと一緒で、
アンリ・カルティエ・ブレッソンの決定的瞬間て、
決定的瞬間が写ってないって書いたじゃないですか。

シェフ はい、はい。
「写真がもっと好きになる。」で。
菅原 あれは寸止めみたいなことで、
当たる前の、その前後がやっぱり面白いんです。
それを撮ってるのがブレッソンなんですよ。
なぜかっていうと、前後を写すことによって、
その「決定的な、瞬間」を想像するんだよね。
このあとどうなったんだろう? とか、
この直前に、なにかあったんだ! とか。
でもそれが写っちゃってると
想像しないじゃないですか。
想像できた方が面白いんです。
それが「ずらす」っていうことなんですね。
ポートレートも同じで、
「撮られる瞬間」は緊張しているかもしれないけど
その前は油断してるかもしれない、
そのあとはリラックスしてるだろう、
というふうに表情も当然崩れるんですね。
この寸前は、きっと真面目な顔をしてたんだね、
みたいな想像もはたらくよね。
シェフ 確かに「その瞬間」が一番いいとは限らなくて、
北島康介がゴールした瞬間は
指先がタッチしているだけで、
つまんないじゃないですか。
どんなに記録であっても。
だけど、顔をあげて電光掲示板を見て
その記録に気がついたときとか、
拳を振り上げて叫んでいるほうが、
いい顔ですよね。
うん、うん。
菅原 でも本当に、その、一番いい写真ていうのは、
さっきの「リズム」じゃないけど、
「裏の音」がちゃんと正確に分かって、
たとえば沼澤尚さんのドラムのようにね、
正確に分かっていて、尚かつ、
それにバックビートみたいに
ちょっとずらしてとか、
ちゃんと自分でリズムを生み出せる、
みたいなことができると、いいよね。
写真も同じで、それができたら
もっといい写真になる。
やっぱりブレッソンとか、
ロバート・フランクとか、
いわゆるビックネームって言われてる
世界的な人たちはそれができてるんだよね。
シェフ へえ!!!
うーん!!!
菅原 できてるんです。
エグルストンとかできてるんですよ。
真似しようと思っても真似できないんです。
シェフ じゃやっぱり取りあえず、素人としては?
山下 いっぱい撮る?
菅原 だから糸井さんみたいにやってもいいし、
でも糸井さんはちょっと特別かもね。
あのひとの「わかっている」そのわかりかたは
ちょっとすごいので。
だから茂木さん、
まねしなくっても、いいですよ。
シェフ むしろ撮りたい、ジャストな自分の写真を。
菅原 撮った方がいいんじゃないかな。
なにも考えずに、撮りたい時に撮ったらいいよ。
シェフ 撮りたいときに撮れ。
菅原 ずらしたところを撮りたいと思ったら、
もちろんやればいいですし。
撮って「あっ」となった瞬間が
面白いっていうことに
気がついてなかったとしたら、
撮れても、ただの偶然で終わっちゃうから、
必然にならないじゃないですか。
シェフ そうか。
菅原 ただの偶然だけを追いかけるよりも、
偶然が必然になった方がいいわけだから、
そのジャストなところを
もっと意識しといた方がいいよね。
シェフ ジャストを意識する。
菅原 と思うな、僕は。
それは人それぞれ、やり方があるけれど。
多分、糸井さんから見ると、
わたしが何の考えもなしに
撮ってるふうに見えるのよね。
菅原 (笑)。
山下 心ないように見えると。
シェフ そうそうそう。
それがねえ、実際、心ないのよ。
シェフ 実際ない!
写りゃいいやと思ってるところが
ちょっとあるから(笑)。
シェフ いいんじゃないか?
菅原 いいんじゃないのかな。
うん、むしろ、
私は1回で勝負してますから、と。
(笑)。
かっこいい(笑)!
早くアップしたいじゃない、
だからうだうだしたくないのよ。
シェフ その目的があるからいいんじゃない。
菅原 多分、茂木さんは、
ぴゅっぴゅっと撮る癖が
ついてるんだと思うんです。
でも、カメラ、持ち始めたら
分かると思うんですけど、
カメラがなくても写真が撮れるって。
山下 こころのシャッターを切るということですか。
シェフ あまーく言うとね。
菅原 その速度、仕事のときはいいですけど、
1人になったときに
ゆっくりにしてみたらいいと思う。
武井さんもそうだと思うんだけど、
写真ってね、
やっぱそんなに明るい趣味じゃないんで。
シェフ わははははは。
覗き趣味?
菅原 うん、覗きだから、
わりとそんなに明るい趣味じゃないって
ぼくは思ってるんです。
シェフ 昨日、夜、水たまりがあってね、
水たまりにビルが映ってて
すごいきれいなんだけど、
それを撮りたいなと思いつつ、
むこうから人が来て
これ、スカート覗きだと
思われたらどうしようって(笑)。
(笑)。
菅原 分かる!
シェフ あと、坂道になってる路地の奥に
きれいなビルが見えるとするでしょ、
撮ろうかなと思ったら
その細い路地の向こうから
女の人が歩いて来ると、
あ、やめようとか。
やっぱりね、都会はちょっと
せちがらいね。

山下 障害がありますね。
菅原 三脚を持ってないから
壁とかに貼り付いたりしてね。
怪しいね。
シェフ 怪しい。
怪しいです(笑)。
なるほど、「明るくない趣味」というのが
わかった気がします。
ひとりだからこそ楽しいっていうことも。
菅原 だからこそ、写真って、
やっぱり1人のときに
一番本領を発揮できるものだったり
するんじゃないかな。
シェフ そうですね、
1人のときの方がいいですね。
菅原 そのときに、普段のこういう
さっと撮る癖が付いちゃってると
勿体ないからね。
冨田さんの花も結構、
ゆっくり撮ってるんですよ。
あ、うん、その場にずっといました。
菅原 ゆっくり撮ってる。で、失敗して、
うわーって思って、またちゃんと撮ってって、
かなりゆっくり撮ってるんですよ。
それでいいんですよ。
シェフ そうだね。ひとり旅に持って行くと
ほんとに面白いよ、カメラって。
そっかー。
そっかー。
シェフ うん、寂しくないし。
(つづきます!)
その6へ 最新のページへ その8へ
2008-07-23-WED