#013 きらわれたくない、というパパのために。

講師

菅原 「山下さんが写真のことで悩みがあるとか」

司会

シェフ 「そうなんですよ、写真をとったばかりに
 息子にきらわれたらしいんです」
山下 「どどどうしましょう‥‥」
菅原 山下さん、なにがあったんですか。
シェフ どうやら、息子の写真を撮っていて、
うっとうしがられたらしいんです(笑)。
山下 ええ‥‥。
菅原 くわしいことを聞く前に、なんだけど、
「息子さん」を撮ろうとして、ではなく
たんに「写真」を撮ろうとして
関心がないのにカメラを向けたことを
嫌がられたのではないですか。
山下 そ、その通りです。
シェフ ぼくから説明しますと、
山下が「50ミリの単焦点レンズ」を
あらたに購入したんですよ。
1万円以下でいいものが買えたと喜んで、
家に持って帰ったらしいんですね。
しかし、奥さまからは反応がもらえず、
ちょっといじけながら、
ぱしゃぱしゃ撮っていたらしいんです。
山下 「おお、すごいなこれ、
 いいぞ、いいぞ」
なんて言いながら‥‥。
でも無反応で。
シェフ 勝手に買ったからでしょう。
それで、ならば、一人息子の
成長のすがたを撮りたいと、
息子の部屋に押し掛けたそうなんです。
山下 せがれは、マンガを読んでました。
それではあまりに被写体として
さびしいではないですか。
シェフ いいじゃん、そのままで。
でも山下さんは、
「いいレンズ買ったんだ、
 ちょっと撮らせてくれ」と、
息子にギターを持つように指示、
「えーっ‥‥」と
しぶしぶ息子はつきあってくれたと。
  niwaka
▲撮影:山下 「ギターをたのしく弾くせがれ」
シェフ 「たのしく」じゃないでしょう。
どう見ても「しぶしぶ」じゃないですか。
山下 ええ。ところがですね、
せがれの座ってるのがちょっと暗がりで。
「おい、窓際の明るいところに
 座り直してくれ」と。
  niwaka
▲撮影:山下 「あかるい場所でにっこり」
シェフ 「にっこり」じゃないでしょう。
どう見てもいやがってますよ?
そしたらどうなったんですか。
山下 ひとこと
「‥‥うぜぇ」
ですよ。
菅原 ふむふむ。
シェフ それで逆ギレした山下さんは
「もう、いいっ!」と
後ろ手でドアをしめて
出てっちゃったんですって。
気の毒に。
山下 でしょう?
シェフ 息子がだよ。
山下 だって‥‥。
菅原 わかりました。
それはね、山下さんが悪いよ(笑)。
やっぱり「写真」が撮りたいだけで、
「息子さん」を撮りたいわけじゃ、
なかったんでしょう?
山下 そのときは、新しいレンズに
興奮しておりまして。
菅原 ギターを弾くのが好きな息子さんなんですよね。
だったら「こいつ、どの程度、
できるようになったのかな」
とかっていうことのほうが、
写真を撮ることより、
本当は彼にとっても
こちらにとっても興味の対象で、
優先のはずなんですよ。
山下 そうですよねえ。
いま冷静になってみれば、よくわかります。
菅原 だからね、レンズを買った興奮は
ちょっと隠してね、
「ちょっと聴かせてくれよ」って、
そのときにカシャって撮れば、
たぶん問題は起きなかったでしょうね。
「お、お前うまくなったじゃん、けっこう」
ってカシャ、みたいのがOKだと思うんですけど、
「写真撮らせろよ」っていうとね。
山下 いや、もうレンズ買ったことで
あたまがいっぱいで。
(笑)
シェフ どっちが子供かわかんないじゃないですか。
『ちびまる子ちゃん』の
たまちゃんのお父さんみたいですね。
娘のたまちゃんを撮りたいのか
カメラが好きなだけなのか
わからなくなってるお父さん。
菅原 マニアの人たちが陥る落とし穴です。
そうして撮った写真には
「本当のこと」が、
たぶん出ちゃうんですよ。
やっぱり一曲聴かせてもらって、
「お、お前うまくなったじゃん」みたいな感じで
「ちょっと撮っといてあげるか、記念に」
みたいなぐらいのほうが、
たぶん向こうも嫌がらないですよね。
山下 カメラはたまたまそこにあったように
さりげな〜く、なんとな〜く、
置いておく、っていうことですか。
菅原 いや、そこまでは、
演出しないほうがいいですよね。
(笑)
シェフ つまりこれは、
買いたてゆえの失敗ですね。
ふだんそういうことしてないんだもんね。
山下 してないです。
家のなかでカメラ持って歩くなんてことは
まったくありませんでしたから、
せがれにしてみれば、
異様だったのかもしれないですね、それ。
菅原 それでも「新しいレンズを買ったんだ」
ということが、
息子さんにちゃんと伝わっていて、
撮られることが面白そうだと
興味を持ってくれていれば、
「撮って、撮って」ってなるけど、
たぶん彼は興味なかったんですね。
新しいレンズに。
山下 ないんですね。なかった。
妻も、なかったですし。
「レンズ買ったんだ」って言ったら、
「‥‥」と無言でして。
菅原 (笑)
山下 その状況で、何とかこう、
よさをアピールしたかったんです。
「こういうのが撮れるんだよ」っていうのを
妻に見せたい、と。
菅原 ああ、なるほどね。
それはやっぱり、
一人で解決したほうがいいですね。
(爆笑)
菅原 人を巻き込まないで、
一人でこのレンズのよさを、
散歩しながら堪能してくるべきですね。
シェフ 山下にとって大事なのは家族なので、
撮りたかったんですよね。
きっとね。
それを「うぜぇ」と言われて
傷ついちゃったんですね。
山下 家を飛び出してやりました。
(笑)
シェフ 今の中学生にとってはたぶん
普通の言葉なんで、
必要以上に傷つく必要ないと思いますが。
菅原 それは言えている。
でも、山下さんはね、
単焦点買ってよかったと思いますよ。
それはまちがってないからね(笑)。
山下 ありがとうございます。
ちなみにこのゴールデンウィーク、
いっしょに琵琶湖に釣りに行きまして、
こんな写真を撮りました。
  niwaka
▲撮影:山下 「釣り、サイコー!」
シェフ ‥‥「サイコー!」って
表情には見えませんが。
山下 きっと眠かっただけです。
朝4時にたたきおこして連れて行ったので。
シェフ なんか、まだまだ壁が厚そうですね……。
山下 ではこちらはいかがですか。
  niwaka
▲撮影:山下 「たのしいさんぽ」
シェフ 「撮るなよー」って言ってません?
山下 いえ、これは照れているだけです。
せがれは、照れ屋なのです。
シェフ そ、そうですか。
じつは、「こどもをじょうずに撮るには?」
という質問は、多数寄せられております。
きょうのこの教訓を胸に、
こんどぜひ「ほぼ日」のパパ部で、
こどもを撮る写真ワークショップを
ひらくのはどうでしょうか。
まだちいさいこどものいるものが
なんにんか、おりますので。
菅原 もちろんです、やりましょう。
山下 うちは、もうちいさくはありませんが、
ぜひ参加させてください。
(ということで、パパ編の取材を待ちながら、
次回は「おいしそう」はどうやって写す?
の更新です。 おたのしみに!)
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2008-05-08-THU