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晴れ
26℃
第1回 ある日、突然『ピクミン2』
ゲーム雑誌の編集部に勤めていたころは、
発売日にゲームを始めるということがとても重要だった。
わけもなく、遅れてなるかという気になった。
くらべると最近は「お、出たのか」という感じである。
けれども、どうやら冷めたということではないらしく、
ある日突然にそのソフトが気になり始め、
身体のなかのなんらかの歯車がグモングモンと回りだし、
その新しい駆動系に突き動かされるように
売場に向かうということがしばしばある。

発売から1ヵ月を過ぎて、
僕はその日、唐突に『ピクミン2』を求めた。
仕事として抱えていた大きなイベントが
ひとつ終わったということもあるのかもしれない。
前の週に昔の同僚に会って
ゲームの話をしたことが影響したのかもしれない。
もちろん前作を大好きだったということも大きい。

ともあれ、経緯やきっかけなどどうでもよろしい。
気がつくと僕のなかには新しい駆動系ができていて、
俄然そわそわし始めた僕は、
「ちょっと買い物に行ってきます」と告げて
しれっと魚籃坂の職場をあとにしていた。
駅までの5分ばかりは少々早足である。

南北線に揺られながら僕は財布の中身を確認する。
ついでにポイントカードの存在も確認する。
ゲーム売場のわいわいとした活気を想像する。
僕は渋谷へ向かうつもりである。
そして大手量販店をいくつかめぐり、
店舗ごとの販売価格差および特典などをたしかめたうえで、
もっともお得であると思われる店から
それを購入するつもりである。
購入の際にはレジカウンターにて
「貯めてください!」とアピールするつもりである。

目黒で山手線に乗り換えて渋谷駅に降りると、
夕刻とあって街は非常に混雑している。
人々は待ち合わせ、ネオンはきらめき、
携帯電話は鳴り響き、売り子は商品名を連呼し、
キャッチはギャルをキャッチして
キャッチされたギャルは
キャッチしたキャッチをサッサとふりほどく。
かっぱかっぱのかっぱかっぱらった。

スクランブル交差点の尋常ならぬ人混みをかき分けながら、
まずは眼前にそびえ立つTSUTAYAへ向かおう。
ゲーム売場は2階である。

それにしても、とあらためて思うけれど、
ゲーム売場の陳列棚というのは、
それ自体をひとつの面としてとらえてみると、
あまりにも拠り所がない。
なにがなんだかわからなくて途方に暮れる。
どれもこれもが同じように
おもしろそうで、つまらなそうで、
仕掛けいっぱいなようで、二番煎じなようで、
ロゴが飛び出ていて、炎がメラメラしていて、
メカメカしくて、ギャルギャルしくて、
なにがなんだかさっぱりわからない。
もしもゲームに詳しくない人がふらりと訪れたなら、
手がかりのなさにくらくらしてしまうだろうと思う。

幸い僕は長くゲーム業界にいたので、
陳列棚を個々のソフトの集まりとしてとらえ直し、
ひとつひとつのパッケージを詳細に眺めるなら
たちまちそこに判断材料を見つけることができる。
ははあ、これはあれのリメイクか。
移植にあたって新要素は? ふむふむ。
お、これは最近売り出し中の
あのソフトハウスが手がけたという。
サッカーゲームの定番はこれ。
野球ゲームはこれで決まり。
これはデータが新しくなっただけ?
お、これの廉価版が出てるんだ。
う~ん、どうしよっかなあ、でもなあ~。
否。目指すは『ピクミン2』である。

探すまでもなく『ピクミン2』は
ゲームキューブの棚のもっとも目立つ位置にある。
とりあえず手に取り、値段などをチェックする。
ほかの店も回ってみようかと思ってたけれど、
さっさと買ってしまおうかという気になる。
レジに向かって歩き始めたとき、
手にしたその箱にわずかな違和感を覚える。

んんん?

おいおいこりゃ『ピクミン』じゃないか。
つまりその、前作じゃないか。
欲しいのは『ピクミン2』なんだよ。
前作はとっくにクリアーしてるんだよ。
まったくまぎらわしいなあ。

ええと、『ピクミン2』は‥‥と。
ないな。え? ない? ないの?

おいおいおいおいおいおいおい!
と、意味もなく突っ込みを入れまくる。
1ヵ月前に出たソフトが
いまごろ売り切れってことがあるのかよ。
そんなわけないよな? 
と思いながら、店内を激しく移動する。
行きつ戻りつ戻りつ行きつ。
ゲームキューブの棚はここだから、ここにあるはず。
新作はこのあたりに並んでるから、ここにあるはず。
ここにないということはないはず。
あるはずあるはず、きっとあるはず。
ないはずは、ない。でも、ない。
おいおいおいおいおいおいおい!

思わず店内のスケジュール表をたしかめる。
ひょっとしたら『ピクミン2』は
まだ出てないんじゃないか。
すべては僕の早とちりではないのか。
すべてが夢の中の出来事で
起きたら始業式の朝に戻っているのではないか。
ところがスケジュール表を見ると
たしかに『ピクミン2』の発売日は1ヵ月前である。
ってことはなに? どういうこと?
ここで店員に即座に質問しないところが
我ながら愚かである。
なんというか、こちとら長くゲームファンだからして、
「あのう、『ピクミン2』はどこですか?」
ってなことを訊くのがなんだか悔しいのである。

行きつ戻りつ戻りつ行きつ。
冷静になった僕は現状を客観的に俯瞰し、
それらを理論立てて並べ直し、
いよいよもってひとつの結論に達する。

売り切れかよ。

わけもなく憤慨する僕である。
せっかく渋谷まで来たのに売り切れとはどういうことだ。
発売直後に売り切れならまだ納得もいくが、
いまは5月の終わりだぞ。
シーズンオフのホテルが満員のわけないだろう。
オリックス対ロッテ戦が満員のわけないだろう。
オリックス・ブルーウェイブと千葉ロッテ・マリーンズの
ファンのみなさまに深くお詫びいたします。

憤慨しながらもイヤな予感が背中を走る。
またやっちまったかと自戒の念がよぎる。
なにしろ、欲しいソフトをたびたび買い逃す男である。
そうなるたびに慌てて東京中を走り回る三十男である。
いや、しかし、これはいくらなんでも予想外だ。
だいたい売り切れと決まったわけじゃないぞ。
ひょっとしたら、この店の店頭在庫が
いまだけなくなっているのかもしれないぞ。
とにかくこの店にはないのだ。
つぎ行ってみよう、つぎ。

平然を装いながらエスカレーターを降りる。
ええと、つぎはどこへ行けばいいんだ?
じつは僕は渋谷の店にはあまり明るくない。
たしか道玄坂へ上るほうに
ビックカメラがあったはず。
暮れかける渋谷の街を小走りで進む、
おかしなおかしなゲームファンが約1名。
目指す赤いネオンを発見してさっそく店内に入る。
ゲーム売場は何階だ、ということで
フロアマップを検索するが、
なんとここにはゲーム売場がねえじゃねえか!

踵を返す僕は、むきになって過去の記憶を掘り起こす。
渋谷でゲーム売ってるとこってどこだっけ?
気がつくとそこは109の真ん前である。
こんなところにゲームソフトは売ってない。
センター街の中になんかなかったっけか?
大ざっぱな仮説を立てて文化村側からセンター街へ。
ものすごい人混み。暮れていく町並み。
ドツボ、という言葉が頭をよぎる。

と、目の前に現れたるは、さくらやの派手なネオン。
なんだよ、こんなところにあったっけか?
ともあれ、フロアマップをたしかめて、ゲーム売場へ突進。
DVDの棚を無視して、目指すはゲームキューブの棚。
そこに発見した文字列はこうである。

「『ピクミン2』売り切れ中。入荷未定」

うーんとうなりながら
真後ろへひっくり返って卒倒する僕である。
またこのパターンか。

無理矢理に人をふたつのカテゴリーに分けるとすると、
一方はここですっかりあきらめて家路につくタイプであり、
一方はここでムキになって違う店へ走り出すタイプである。
賢明な読者ならおわかりのように僕は圧倒的に後者であり、
すでに渋谷の街を走り出している。
どうやら頭のなかでなにかのスイッチが
「カチッ」と音をたててオンになったようである。

駅の向こう側にたしか1軒あったぞ。
ちょっと遠いけど、もうオイラ、止まんないぞ。
夕暮れの渋谷を逆ギレしながら走る、
おかしなおかしなゲームファンが約1名。
その首の後ろをなにかがポツリと打つとしたら、
それはきっと五月の終わりの雨粒である。
マジかよ、雨かよ、ふざけんなよ。

毒づきながらガードをくぐり、
通りを見渡すと人々の半分ほどは傘を開いている。
どいつもこいつも用意がいいじゃねえか。
とりあえず、傘のことは後で考えるとして、
逆ギレゲームファンはシャツを湿らせながら
ビックカメラ渋谷東口店に突入する。
よし、ここにはゲーム売場がある。
意気揚々と3階へ駆け上がるが
そこにあるのは前作の『ピクミン』のみである。

‥‥やっばいわ、これ。

長くゲームファンを続けている人はおわかりのことと思う。
大きな店を3軒ほど回って
ことごとくそのソフトが売り切れだった場合、
それ以上、どこを回っても結果は同じである。
つまり、流通する在庫が尽きているのだ。
ここはおとなしく時期を待つのが賢明である。
しかしながら、と考えてしまうのが
僕の愚かなところである。

思い出すのは1992年のことである。
思わぬ回想シーン突入とはこのことである。

当時、多くのゲームファンに待望されていたのは
『ストリートファイターII』である。
アーケードで大人気だったそのゲームが
スーパーファミコンに移植されるとあって、
ファンはそれを心待ちにしていたのである。
そしたら例によってあっという間に売り切れたのである。
僕は1992年のその日、今日と同じく途方に暮れたのである。
そのころ荻窪に住んでいた僕は
馴染みのゲームショップにそれがないことに愕然とし、
頭に来て電車に飛び乗ったのである。
『中央線』という歌とは無関係である。
ムキになった僕は隣の駅の阿佐ヶ谷で降り、
そこでいくつか店を回ったがやはり売り切れで、
しかたがないのでさらに隣の高円寺まで行った。
あろうことかそのまま僕は中央線の駅を
各駅停車で新宿までさかのぼっていった。
荻窪、阿佐ヶ谷、高円寺、中野、新宿。
『ぶらり途中下車の旅』とはこのことである。
「おやおや~、永田さぁん?」という
独特のナレーションは入らなかったのである。
それで、新宿まで行ったがやはり
『ストリートファイターII』はなく、
それでもあきらめきれなかった僕は
やや探し足りないと感じていた中野駅に再び戻り、
路地のひとつひとつを丹念に歩いた。
そしたら、中野ブロードウェイの入口のところの路地に、
とても小さなゲームショップを見つけた。
店は2階にあったから、見逃していたのだった。
ほとんどあきらめながら階段をのぼり、
そこに『ストリートファイターII』の
パッケージを見つけたときの
「夢じゃなかろうか」という思いを
わかってもらえるだろうか?

回想シーンの終わりに説明させていただくとすると、
大きな店を3軒ほど回って
ことごとくそのソフトが売り切れだった場合、
それ以上、どこを回っても結果は同じであるし、
要するにそれは流通する在庫が尽きているわけであって、
おとなしく時期を待つのが賢明であるが、
しかしながら、どこかの店の棚に、
それが平然と並んでいるという可能性は、
完全にないというわけではないのである。
毎度、話が進まんなあ。

僕は渋谷の街に関する記憶をたぐっていた。
あと、店はどこにあったっけ?
しかしながら僕には
渋谷でゲームを買った経験があまりない。
賑やかな音楽が鳴り響く大手量販店の店先で、
暮れなずむ雨の往来をにらむ
おかしなおかしなゲームファンが約1名。

どうしようかと迷っていたときに電話が鳴った。
ポケットからSO505iSを取り出し、
液晶部分をスチャッと半回転させて
通話ボタンを押すと、
馴れ馴れしく話しかけてくるのは
ほぼ日刊イトイ新聞の同僚、Rさんである。
同僚が馴れ馴れしく話しかけてくるのは当たり前である。

「もう買った? 『ピクミン2』」

否、と答える。

「あったら買っといて、『ピクミン2』」

承知、と答える。

つまり、その瞬間に僕は、
自分のほかに他人の楽しみをひとつ請け負った。
するとどうなるかというと、
「ぜひ『ピクミン2』を入手せねば」という
問答無用の義務感がいっそう強くなる。
「あったら買っておいてくれ」と言われて、
「なかったから買えませんでした」などと
おめおめ報告できようか。いや、できはしない。

雨の軒下で迷っていた僕の鈍い瞳が焦点を結ぶ。
瞬間、己の背後にボワッと炎がゆらめくのを感じる。
決心した僕は、店員に叫ぶ。
「傘ください!」
雨が降り始めたとたん、
店先にビニール傘がずらりと並び始めたのは
さすが大手量販店ビックカメラ、
おぬしもあきんどよのう、というほかない。
元来、傘嫌いの僕であるが、雨足は強まっている。
背に腹は代えられない。
「150円になります」
ひゃっ、ひゃくごじゅうえん!
突然の雨に遭い、
ポリシーを曲げてしぶしぶ傘を買うとき、
その傘が150円だったというのは、
得だと思いますか、損だと思いますか。
お手元のスイッチでお答えください。

ともあれ僕は移動するつもりである。
現状を冷静に分析するならば、
僕はこの地にたしかな情報を持たなさすぎる。
すなわち、渋谷、我が街にあらず。

くわっ、と目を見開いた僕は、
黒々とした雨雲を貫いて、遙か北の空を見つめる。
目指す街は‥‥新宿。
不夜城、新宿、である。

次回、新宿編へ続く。

と思ったが、
こんな話をわざわざ2回に分けることもないと思うので
無理矢理にこのまま書き殴ることにする。
みなさん、もうしばらくおつき合いください。
とりあえず、このあたりでひと息入れてください。
紅茶でも飲んできてください。
お風呂でも入れてきてください。
ふかふかしたクッションでも手元に引き寄せてください。
パリ・ローマ七日間の旅のことでも考えてみてください。

そんなのんびりムードとは裏腹に、
山手線に飛び乗った僕の目は血走っている。
最近はあまり訪れていないが、
新宿駅近辺のゲームショップについては
十分な蓄積がある。

車窓から雨の東京を見つめながら、
僕は今後の行動をシミュレートする。
まずは西口電気街。なければ南口を通って東口へ。

電車が新宿駅のホームへ滑り込むやいなや、
僕は列車の出口付近、ポールポジションをキープ。
開いた扉の隙間に身体を斜めにねじ込み、
エスカレーターへ身を躍らせる。
降りるとそこは西口の改札。
地下の広場を横切り、商店街の入口を突っ切って、
あまり人気のない階段を駆け上がるのが最短距離。
どんぴしゃ! 安田生命前!
眼前にはヨドバシカメラ西口本店のネオン。

傘を開く間ももどかしく、
僕はヨドバシカメラ西口本店を左手に見ながら走り、
やや離れたゲーム館を目指す。
ここは、人気商品を大量に仕入れることで知られている。
つまり、『ピクミン2』がある可能性が高い。
飛び込んで、目で追う棚に、いつもの文字。
え? ってことはなに?

「『ピクミン2』売り切れ中。入荷未定」

うーんとうなりながら
真後ろにひっくり返っている場合ではない。
初手のつまずきは、じつは折り込み済みである。
めぐるべきルートはすでにできあがっている。
つぎなるは、ソフマップ。
独自のルートを持つからか、
過去に幾度となく売り切れソフトを見つけたことがある
頼もしきソフマップ。
例のテーマソングが耳に残ってやっかいな、ソフマップ。
「行こうよ~なんちゃら~ひかりの世界~♪
 ハートのスイッチ~なんちゃらら~♪」
いやあ、歌おうとすると歌えないもんだなあ。

のんきに歌っている場合ではない。
ヨドバシカメラゲーム館から甲州街道方面へ直進。
熱い対戦をくり広げた懐かしのゲーセン、
スポット21を横目に見ながら左へ回り込む。
ほどなく現れたるは、ソフマップ!
いざ参らん! 
と、思ったら、ソフマップがねえよ!
な、な、長崎ちゃんぽん!
リンガーハットとはこのことである。

ことほどさように電気街の移り変わりは激しい。
ちょっと目を離すとすぐこれである。
どうやらソフマップのゲームショップは
甲州街道沿いに移動したようだ。
へええ、ここになったんだ。
ていうか、ここ、中古パソコン売場だったところじゃないか。
おっ、この路地もずいぶん変わったなあ。
やあ、美味そうなラーメン屋ができてる。
などとぶつぶついいながら店内に突入すると、
うわあ、狭い敷地にソフトぎっしり。
新品も中古もコンシューマーもPCも渾然一体。
目がチカチカしそうになるが、
冷静になって棚を見極める。
見えたっ! ゲームキューブはこの棚! 売り切れ!

すっかり動じなくなった僕は
そのまま甲州街道を駆け上がる。
人混みでめちゃくちゃなことになっている南口を走り抜ける
おかしなおかしなゲームファンが約1名。
フラッグス前の階段を駆け下りて、
パチンコ屋の喧噪を耳にしつつ、
エロ映画の毒々しいポスターをちらりと眺め、
少々路地を折れてルートを修正しながら、
TSUTAYA新宿店に突入。
階段を駆け上がってゲーム売場!
売り切れ! よし!
もはやないことをたしかめる
作業になっているようだが気にしない。
つぎなる予定は向かいにあるヨドバシカメラ。
TSUTAYAの階段を勢いよく駆け下りると、
そこに突然、「洋麺屋五右衛門」の文字。
ずばりいって、下りすぎである。
それは地下1階である。ほんとうの話である。
慌てて1フロア駆け上がり、
ヨドバシカメラのゲーム売場へ。
西口で売り切れなんだから、
東口でも売り切れだろうなと思ったら、
ほぅら、やっぱり売り切れだ! 思ったとおり!
向かいのビックカメラにもないんだろ?
あっ、やっぱりないじゃないか!
思ったとおりにことが運ぶとはこのことである。
うーん。

連戦連敗。向かうところ敵だらけ。
ところが、本命は最後にとってある。
すなわち、さくらやホビー館。
最大規模のフロアー面積をほこるこの店は、
在庫の量も桁違いであろうと予想される。
さっきも同じことを書いた気がするが、
この店で僕は何度も救われたことがある。

僕は覚悟を決めて、やや速度を落とし、
新宿通りをゆっくりと渡る。

長かった戦いが、いま、終わる。
ここでダメなら、いよいよダメだ。
目を閉じると瞼にいくつもの場面がよみがえる。
たのしかった遠足、力を合わせた運動会。
否、それは少々よみがえりすぎである。

ゆるやかな坂をトボトボとのぼり、
見えてくる、さくらやホビー館。
いざ、覚悟を決めて、店内へ。

入ってすぐ右手に、『ピクミン2』のディスプレイ。
つぶさに眺める。じっくりと眺める。
ところが、「売り切れ中」の文字はない。
んんん? あるのか? ないのか?
ゲームキューブの棚へ。
「売り切れ中」の文字はない。
あるとも、ないとも、書いてない。

どどどどどどうなってる?

激しく店内をうろうろし、
意を決して店員に向かって歩いていく。
質問するのは不本意だが、
訊かずば真理は得られまい。
訊くは一時の恥、
訊かぬはオヤジの禿頭。
知らざあ言ってきかせやしょう。
なにがなんだかわからんわい。

「あのぅ『ピクミン2』はありますか?」
「はい、売り切れで、入荷も未定です」

うーーーん、ばたーーーん!

ざざざ、残念!
雨のなか、渋谷から新宿と駆け抜けてきたが、
ダメなものはダメである。
無理なものは無理である。
暑い暑いと思うから暑いのである。
がっくりうなだれて店を出ると、
すっかり街は夜の気配。
「カラオケいかぁっスか、カラオケ!」と
手当たり次第に呼びかけるハッピのお兄ちゃんを
罪もないのにジロリとにらみ、
ネオンへ溶けていくおかしなおかしなゲームファンが約1名。
時間も9時になろうとしてますから、
つぎなる店を訪れるのも無理でしょう。

と、いうわけで、
連載開始早々ではございますが、
みなさまに残念なお知らせがあります。
まことに勝手ながら、
『ピクミン2』を購入するまで、
本連載は一時休載とさせていただきます。
だって、ないものはしかたないじゃんか!
逆ギレしながら連載第一回目の日記を終える。
どうなる次回。

2004-06-18-FRI


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