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(第25回の5
ファイアーエムブレム〜封印の剣〜
そのCMを誰が作ったか?
倉恒良彰インタビュー その3

“12年目のオマージュ”
    

 
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♪ファーイアーエムブレム
 手強いシミュレーション
 勝ってくるぞと 勇ましく
 危なくなったなら スタコラ逃げろ
 驕れる者は ドツボにはまる♪
 
もうご覧になりましたか?
任天堂ゲームボーイアドバンス専用ソフト
「ファイアーエムブレム〜封印の剣〜」のTVCM。
屋外らしき石造りの舞台で、
甲冑や僧服などの中世的な衣装を
身にまとった人々が歌う、オペラ調のCMです。
3月29日に発売になったこのゲーム、
もうすでに入手して“はまっている”方も多いと思います。
今回の「秘密基地」のシリーズでは
このCMを作った仕掛け人の
倉恒良彰さんに、お話を伺っています。
 
前回までに、このCMが、12年前にオンエアされた
「ファイアーエムブレム」の第一作のCMのことや、
倉恒さんがつくってきた任天堂の名作CM
(ファミコンウォーズなど)の
メイキング話をお届けしてきました。
「スーパーメトロイド」のCMではボヤ(!)をおこし
“クラツネには火を使わすな!”のお達しがでたとか。
しかし、最新作のファイアーエムブレムでは、
CMの中で火のついた矢が飛び交っています。
これはいったい……???
というところから、スタートです。
 
 
イメージ ●プロフィール
■倉恒良彰【くらつね・よしあき】
米国海兵隊の演習風景をパロディにした
「ファミコンウォーズ」のCMから、スチャダラパーを
起用した「ゼルダの伝説 神々のトライフォース」など
印象に残る任天堂の多くの広告を制作してきた
クリエイティブ・ディレクター。現・任天堂企画部所属。
なかなか表に出てこなかった、謎の人物でもある。
『CM制作に携わってくれたスタッフには
 いつも感謝しています!!』
   
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■火遊び禁止令。
 
火、ですね。そう、僕には
「クラツネには火を使わすな!」
のお達しが出ていました。
「消防署に怒られる!」って。
これはギャグでしょう。
こんなん誰がいったのかな・・・?

でも、ファイアーエムブレムのCMでは、
どうしても火を使いたかったんです。
なぜかというと、
オペラだけでは表現しきれないことのひとつに
ゲームのアクション性、というのがあります。
対戦シーンの画面を取り入れることで
その一端は担えたんですが
やっぱり「火」と「剣」というアイテムは
ファイヤーエムブレムの象徴として取り入れたかった。
ゲームとプレイヤーを結ぶ鍵のようなものとして
大切にしたかった。
お約束ですね。

オンエアされたCMに火は使いました。反対を押し切って!
イヤイヤ。実は使っていない。
これ、種明かしをしてしまうと簡単なことで、
今回のCMに使われている火、かがり火以外の、
空を飛んでいる火は、すべてCG合成です。
もはやたいそうなことではありませんが、
技術の進歩に助けられました(笑)。
これは12年前にはできなかったことのひとつですね。
でも……ほんとだったら、
油をたらしたところに火が燃えていて
そこから矢に火をうつして、ビュンビュンと飛ばす、
という、ハリウッド映画的な演出がしたかったなあ……。
もう一度・・・したかったなあ・・・・・。
 
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■音楽は前作のままに。
 
今回のCMづくりの大命題に、
『前作と表現のクオリティを変えない』
ということがありました。
「規模も縮小したくない、
 むしろ、ムードとしては大きくしたい」というのが
作り手の僕らの思いです。
その大きな要素として
あのコマーシャルソングの存在は大きかった。
音楽は、お気づきになりましたか?
実は12年前の録音を、そのまま使っています。
フルオーケストラ、フルコーラス。
全く同じ曲を、ノー・リミックスで使っているんです。
新しく刷新する可能性も検討してみたりしましたが、
どう考えてもあれをもう一度やる意味が感じられない。
全くの新曲ならいいんですが。
もちろん、ゲームファンの方々の
思い入れなどもわかっています。
そこで、スタッフと元曲を聞き、
調整なども含め検討を行いました。
で、結局そのままを使うことを決めました。
オンエア前に関係者から、録りなおしてよくなりましたね、
と言われクオリティを確信しました。
12年たっても音楽があせないなんて驚きでした。
最初の録音のクォリティが高かったのもそうですが、
やはり、僕はこの「楽曲」、
ファイアーエムブレムのテーマ曲が
素晴らしかったのだと実感しています。

 
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■撮影のエピソードですか?
 
う〜ん馬ですね。いや出演の「白馬」なんですけれど、
前作では、動物プロダクションから借りた
“演技のできる”馬だったのが、
今回は諸事情で、乗馬センターの馬に。
いや、笑わんでください、笑いこっちゃないですよ、
たいへんだったんです。
「いななけ!」言っても無理だし、
人を乗せるおとなしい馬だから
撮影中はじっとしていていい馬だねって。
近づいて馬の担当の方に話しを聞くと、
おーい、深夜撮影で馬が寝てるんだって。
寝てるんかいな!(笑)
老馬だから待ち時間なんかがあると寝ちゃいますと。

一番困ったのは、春先の暖かい時期のロケだったのに、
その日だけマイナス2℃だったこと……
これ、屋外の舞台ですからね、まともに寒い。
出演者の吐く息、白いんですよ。
これCMにも写っちゃっていますよ。
マニアックな見方だからやめたほうがいいかな?

出演者は全員日本人です。
外人にしないの、ということも言われたりしますが、
これがまた、ちょっとしたトラウマがあって。
むかし、外国人をつかって
剣劇を入れたCMを作ったんです。
それがね、どうにも、へなちょこで、
うまくできなかったということがある。
腰がだめなんですね。素人は剣を持つと腰がひける。
へっぴり腰ちゅうやつですか。
ですから、グラディエーターの
ラッセル・クロウになれっていったって
簡単にはなれやしないんです。。
ほんもののサーベルだと、切りつけて馬ごとふっとんでも
びくともしないようなものを、映画では使いますよね。
でもそういうことは、僕らにはできない。
できるのだけれど、とても高くつく。
ハリウッドなら撮影道具として
本物にちかいものがすでにあったりするので、
そこから加工できたり、そのまま使えたりする。
(ちなみにファミコンウォーズのM-16ライフルは本物です。
 日本なら間違い無くモデルガンですね)
けれど日本ではそんな都合よくは揃わない。
となると、また、これも作ることになる。
今回はアップには耐えないものですが、シャキッと張りのある
新鮮な剣を一本、金属で作りました。
あっ、そうでした。
外国人を使うと、見場はいいんですけど
中世モノを描くとどれも同じような
コマーシャルに見えてしまうので
埋没しちゃうんで使うことはないなということですね。

任天堂のコマーシャルでは古くから特撮なども
多く手がけましたが、
過去のいろんな映像表現の実験結果として、
ファイアーエムブレムのCMで
「中世」を表現することを追求するのなら
ほんとうに予算をかけて、徹底的にやらないと
できないんだ、というところに行き着くんです。
甲冑にしても衣装にしても場所設定にしても
ごまかしきれない。
だから「オペラ」にすることで
それが全部オーケーになる、という道を選んだんです。
オペラとしてくくることで世界が成りたつんですね。

 
  ■積極的にゲーム画面を使いたかった。
 
最初のファイアーエムブレムの広告では
広告にゲーム画面はでていませんでした。
しかし、今回は積極的に、
出来るだけ多く出したいと考えていました。
それは、いちばん最初のファイアーエムブレムを
継承してつくられている、
伝統的な作品であることを
一目でわかってもらいたかったからです。
しかし、狙いの真意は
しばらく発売されていなかった
ファイアーエムブレムシリーズですから、
このゲームのシズル感を出すことでファンのみなさんに
「あ〜これこれ」といった気分を
共感していただきたかったのです。
画面を選ぶのには、
ファイアーエムブレムらしさを大切に、
新しい要素を踏まえた画面の選択が重要になりました。

ま〜こんな感じで
今回は勘弁してくださいよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!。

 
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いいCMができたと思っています。
最初、プロモーション戦略で
気にしていたことがあって
それは、ファイアーエムブレムの
コアなファンの人に見切られない、
その人たちに通用するプロモーションにしよう、
ということでした。
最初からエムブレムのメインテーマを
CMに使うことは決めていたんですが、
「オペラで行こう」と決めたのは、
エムブレムというゲームを表す上で、
初めての人にもコアな人にも通用する共通解が、
オペラだと思ったからです。
あのテーマというのは、
いままでのファイアーエムブレムファンには
すごく思い入れのある曲なんです。そして、
これからプレイする人にも、
ぜひ覚えて欲しい曲ですから。
過去のオマージュシリーズ、というのかな、
倉恒さんとは、またこれからもエムブレムに限らず、
「これは懐かしいけど、新しい!」
というタイプのCMをつくっていくつもりです。
どうぞお楽しみになさっていてくださいね。

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今回で倉恒さんのお話は終わりです。
ありがとうございました!!!
次回はふたたび、西村さんと成広さんの
ゲーム開発秘話をお届けしますよ!
お楽しみに!
 
  2002-04-12
 
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