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「罪と罰」〜地球の継承者〜
〜最終ステージまで突っ走ろう!〜
1回遊ぶごとに、見えてくるものが
少し深くなってくるようなストーリーが理想なんです


新シリーズ、アクションシューティングゲーム
「罪と罰 地球の継承者」についての第4回目。
今回は、ストーリーについて話を聞きました。
次のステージを見たい、進みたいという欲求を
どのようにしてかきたてるのか?
ゲームのストーリーの役割は?

 
「罪と罰」〜地球の継承者〜
2000年11月21日発売
定価:5800円(税別)
アクションシューティングゲーム
1〜2人用
 

座談会出席者
 
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●前川正人
「トレジャー」代表取締役社長。
「罪と罰」のプロデューサー。

 
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●山上仁志
任天堂開発第一部。
「罪と罰」のディレクター。
過去の代表作は「パネルでポン!」
「ヨッシーのクッキー」
「ゲームボーイギャラリー」など。

 
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●武久 豊
任天堂広報室企画部。
「罪と罰」のプロモーション担当。

 


山上:
「罪と罰」はストーリーに注目してほしいです。
ストーリーも、やる人を先のステージに進ませるための
非常に大切な手段なんですね。
 
最初の頃、トレジャーさんのディレクターは、
ストーリーはそれほど大きなウエイトではなく、
「罪と罰」全体のイメージをわかってもらうために
付属的に考えたんだ、という話を
ちょっとしてたわけなんですけども。
 
私たちがそのことを聞いたときに、
「いや、それではもったいない」と。
やはり、初心者、初めて遊ぶ人たちを
引っ張りやすいのは、「先に行きたい」という
欲求を作ってあげることなんですね。
そして、「もうこの敵は倒せないんじゃないか」という
あきらめの気持ちになったときにでも、
「いやまてよ、ここで終わったら先のストーリーを
 知ることができないじゃないか」と。
「この敵を倒さなきゃ、先が知れないんだから、
 なんとかしてやろう!」と思えるようにすることが、
結果的に「罪と罰」の寿命をさらに延ばし、
やる人の満足度をさらに高めるので、
ストーリーはそういう方向に生かそうと話しました。
 
(「罪と罰」はどんなストーリーで、
 そこに出てくるのはどんなキャラクターなのか、

 
“ストーリー設定と主なキャラクターの資料”
 見てくださいね。)

 
トレジャーさんからいただいたストーリーは
最初は少し難解だったんです。
で、全体のストーリーは変える必要ないけれども、
先のステージに進んだときに、
主人公たちや、これから先のことが、どうなるのか?
ということについて、おぼろげでもいいから、
わかるようにする必要がありますよ、
とお願いしたんですよ。
 
それによって、初心者の人たちが、
ゲームに行き詰まりかけたときでも、
ストーリーを知りたいために、
先に行こうと頑張れる、と。

 
──:
その初心者って、僕ですよ(笑)。
先に進みたくなった……。
 
山上:
そうでしょう(笑)。
結果、より深く「罪と罰」に入り込んでもらえます。
で、トレジャーさんに特にお願いしたのが、
「1回遊んでわかるようなストーリーに
 変える必要はないですよ」と。
何回も遊ぶので、ストーリーは難解でいいんですよ。
「難解でいいんですけど、1回遊ぶごとに、
 見えてくるものが少し深くなってくるような……、
 というストーリーが理想ですよ」と。
ストーリーを追うためだけでも、
2回、3回と遊んでもらえますから。

 
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前川:
ストーリーに関して、山上さんに
そう考えてもらえてありがたかったです。
トレジャーとしては、すっごく細かい設定が
奥深くまで作ってあったんですよ。
「なぜそんなところまで設定されてるんだ!?」
という部分まで作ってある(笑)。
ウチのディレクターの頭の中でストーリーや設定が
膨大に膨れ上がってまして(笑)。
 
ただ、それをどこまでゲームの中に反映させるか……。
要するに、わざと難解なストーリーにするのではなく、
「なんだこれは?」という謎の部分、
わからなくてもいいという部分、
それを残しておきたいんですね。
そこを山上さんも理解してくれたんで、
だから、現場も対応しやすかったですね。
 
オープニングで何もかも説明してしまって、
すべてを理解した上でゲームに入っていくのは、
アクションゲームとしては面白くないと
私は思っているんです。
ただし、
「なぜ自分は戦っているのか?」が見えないと、
なんとなくクリアして終わり、
最終ボスを倒したら終わりね、になってしまう。
何もわからないで遊んで、爽快だからオッケー。
……それだけじゃつまらないんで、
そのためにストーリーがあるわけです。

 
──:
「罪と罰」をやってみると、いつも小さな“?”を
抱きながら先に進んでいる感じがしますね。
 
前川:
そうですね。
そうなるのが、いちばんいいんですよね。

 
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オープニングから、いきなり?マークを突きつけられて、
ストーリーがはじまっていくんですよ
 
山上:
僕がストーリーをひととおり読んだときに、
「難解な部分はあえて深く教えない」という
トレジャーさんの意図が見えたので、
そこは壊さないぞ、と。
壊すと全体のバランスが崩れると思ったんですよ。
難解さは残して、なおかつ、ストーリーが
おぼろげにわかるようにするためには、
何を入れればいいのか?
 
大きく変えていただいたのは、
エンディングのストーリーです。
それについてはトレジャーさんのディレクターも、
かなり反対意見があったんですけども、
私がいろいろゲームを作ってきて感じていることは
「終わりよければ全てよし」ということなんですね。
 
「いろいろあったけども、最後は
 やっぱりよかったよなぁ!」と思えるゲームは、
「よかった!」と言ってもらいやすいんですね。
ゲームの途中がよくても、最後があまりにも
しょーもない終わり方をしていると、
そのゲームは印象が非常に悪くなってしまうんですね。

 
──:
テレビドラマでも、最後に何人も死んじゃったりして
無理やりつじつま合わせたような終わり方だと、
なんだかな〜、って感じで……。
 
山上:
そうでしょ。「なんだよ、おい〜」って(笑)。
で、これだけ“?”が続くストーリーが
すべて“?”のまま終わってしまったら、
「なんだよコレ!」ってことになってしまいます(笑)。
だけど、10コの“?”のうち、
3つでも、4つでもわかったら、
続きを知りたくなりますよね。
そしたら「続編」につながるかもしれない。
ということは“?”をすべて明かす必要はないんです。
 
いくつかの“?”を解き明かすことによって、
プレイヤーが主人公になって戦ってきたんですよね。
自分の気持ちが主人公と同化するためにも、
いくつかの謎は知っておきたいですよね。
主人公と共有できる部分を作ることで、
「主人公=自分」だと思えて、
ストーリーに少しくらい謎が残っても、
「謎がわかった!」という気持ちの満足感で、
「ああ〜、よかったぁ〜」というように、
思っていただけるわけなんですね。
 
で、エンディングのストーリーでは、
荒廃した地球に主人公たちが降り立った後、
彼らがせめて幸せな方向に行きそうだよ、と、
そういう方向だけは絶対に入れてください、と。
明るい未来を少し提示するような、
終わり方にしてもらったんですよね。
刹那的で、絶望的な世界から、
将来の希望がパーッと見えるようにすることで、
プレイヤーを晴れた気持ちにできるんじゃないかな、と。
「いいストーリーを味わったな」と。

 
前川:
「トレジャー」独自の色を出したいので、
たとえば「最終ボスを倒して姫を助ける」
というような明快なストーリ−も入り込みやすいという
メリットがあるのですが、今回はやっぱり
深いところまで突っ込んだ
ストーリーにしたかったんですね。
アクションゲームのシナリオが分厚くてもいいじゃん、と。
「トレジャー」のゲームは、けっこうシナリオを
分厚く作ってたりするんですよ(笑)。

 
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主な登場人物たちの人間関係が、
よりストーリーから謎を感じさせてくれます

 
山上:
あと、ここも大事な所なんですが、
ストーリーの部分は、飛ばして先に進めるようにも
作ってあるんですよ。

 
前川:
ガンガン敵を倒すところだけやることもできるし、
それもアリなんですよ。

 
山上:
だけど、何回もストーリーを見てるのに、
次もやっぱり見ちゃうんですよ。

 
──:
そうそう、1回じゃわからないから。
 
山上:
そうなんですよ。

 
前川:
私も見ちゃうんです。
そういうバランスで作ってあるんですよ(笑)。
「ストーリーを省略すると話が分からなくなる」
という考え方もありますが、アクションゲームの場合、
アクションシーンを中心に遊びたい人もいるので、
省略出来ないと遊んでる人が苦痛になる場合が
あると思うんです。
飛ばせるというのも、すごく重要だと思いますよ。
別にたいしたことじゃないよ、と思うかもしれないけど、
飛ばせないとすごい苦痛だったりしますよ。

 
──:
いろいろな部分で、
プレイヤーが選択できるように作ってありますねぇ……。
 
山上:
人に売るものを作るためには、
人は千差万別なんだ、ということを
しっかり理解しなきゃいけないですね。
自分が「これは絶対必要だ」と思っても押し付けない、
というスタンスを取っておかないと……。
悪評は、いい話よりも早く広まってしまいますからね。
ということで、このストーリーについても、
「ぜひとも見て欲しいんだけれども、
 絶対に飛ばせるようにしてください」と。

 
──:
やるのが何回目かでも、
ストーリーの部分を見ちゃうというのは、
やっぱり少しずつ“?”が残ってるというか、
ぜんぶの謎は見えないというか、登場人物たちの
人間関係の謎がいつも引っ掛かってるんですよ。
 
前川:
謎が増えてくるようなストーリーになってるんで(笑)。

 
山上:
そのあたりのストーリー作りの上手さが
トレジャーさんのディレクターのすごさなんです!
このディレクターにだけは、
絶対にこのスタンスをなくさないようにしてもらって、
変えなきゃいけない部分だけ、変えてもらおう、と。
任天堂に言われたからやる、
というような気持ちにさせてしまうと、
彼のよさが出なくなってしまうと感じました。
 
ストーリー作りがものすごいうまい人だし、
あと、コマ割り、画面構成のうまさも、
すごく感じるものがあるんですよ。
次々に出てくるカットが、どれも新鮮で、
スピード感にあふれていて、あきないんですよね。

 
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航空母艦内での戦いから、空中戦へと、
早いシーン展開にゆさぶられまるんですね
 
──:
海の上で空中戦をやるステージ、
自分が空を飛んでる感じが、すごかったですね。
 
前川:
作るのたいへんなんですけどね(笑)。
作る側からしたら、ひとつの場面を作ったら、
それに要素を追加することで、
2段階、3段階遊んでもらう作り方も
あるわけですよ。現実的にはね。
でも「罪と罰」では、あるシーンが1回でてきたら、
次は違う場面を新しく作るということで、
まったく使い回しをしてないんですよ。
手間と時間はかかっても、プレイヤーに
「先を見たい」という新鮮な気持ちでいてもらうためには、
ステージが進むごとに、ぜんぶ場面を変えちゃう。
そんなことやってて、
2年もかかっちゃうんですけどね(笑)。

 
山上:
あのね……、不意打ちなんですよ。
次のステージに進むと、予想してないシーンが
出てくるんですよね。
新宿上空でひとつのステージが終わったら、
次はいきなり溶岩に飲まれそうになってしまって、
「うわー、なんや、なんや!?」という間に、
次のシーンになって、やっとやっつけたと思ったら、
次はいきなり海上の空中戦のシーンになって、
「え! そんな、飛ぶの!?」って、
考えてもみないことになって、
また「うわーっ!」っとやってくうちに、
終わったと思ったら、
今度いきなり地下鉄のシーンになってて、
「えーっ!」ってやってくと、
次は横スクロールのシーンになって……、
次から次へ、いい意味で期待を裏切るというね。

 
──:
胸ぐらつかまれて、
グワングワン揺さぶられ続ける感じですね。
 
山上:
マンネリ化させないという。
で、最後に……最後の敵がまた予想外の
「うえ〜っ! これ!?」というすごい敵が出てきて、
それを倒すのがまたすごい忙しいんですよね(笑)。

 
前川:
ゲームの展開は、ものすごい追求してる部分です。
要するに、“次から次へ”という感覚ですよ。
要するに、まずはザコと戦って、どんどん進むと
ボスが出てきて、ボスを倒すとステージクリアー
というアクションゲームの王道の作り方もありますが、
今回のように、次から次にどんどん場面が変わって、
もう中ボスだか大ボスだか分からないくらい
敵が色々出てくる、という展開は迫力もあって、
あきないですよね。
ただし、手間と時間がかかる(笑)。

 
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司令官ブラッドがどうなったのか……、
謎のままストーリーは進む
 
──:
細かいとこなんですけど、
ブラッドという若い司令官に、
将軍のような人がモニタから指令を出す場面、
……ああいうの、やっぱ好きで作っちゃうんですよね?
凝ってるなぁ……、と。
 
前川:
そりゃー、好きなんでしょうねぇ(笑)。

 
武久:
逆に言うとね、あの将軍みたいな人が誰なのか、
わからないという。

 
山上:
ブラッドも空に消えていきましたけど、
死んだのかどうかもわからない。
どうなったの? という。
ストーリーに謎が残るんですねぇ(笑)。

 
(つづく)
 
 
ストーリーの難解な部分はそのままなんだけど、
多くの謎や疑問のうち、いくつかを明かすことで、
「え? これはどういうことなの?
 この後どうなるのかなぁ?」と、
プレイヤーを先に進みたくなる気持ちにさせるんですね。
次回は、ディレクターの山上さん、
プロデューサー前川さんが、ゲームの難易度を
どのように考えているのか、という話です。



2000-12-21

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