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「ゼルダの伝説 〜ムジュラの仮面〜」

 〜新しいゼルダを、とことん語ろう〜

 
 宮本茂+青沼英二+小泉歓晃インタビュー その2
 ふつうなら3年かかるプロジェクトの
 終盤1年間だけを一気に走り抜けた。
 
 
NINTENDO64ソフト
「ゼルダの伝説 〜ムジュラの仮面〜」
制作者インタビューの2回目です。
別のプロジェクトから呼び戻された小泉さんと
青沼ディレクターたちが
どんなふうにタッグを組んだのか?
そのあたりをお聞きしています。

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●参加者
 
●青沼英二(あおぬま・えいじ)
任天堂株式会社情報開発部所属。
担当作品に、スーパーファミコン『マーヴェラス〜もうひとつの宝島〜』
NINTENDO64『ゼルダの伝説〜時のオカリナ〜』がある。

 
●小泉歓晃(こいずみ・よしあき)
任天堂株式会社情報開発部所属。
担当作品に、ゲームボーイ『ゼルダの伝説〜夢を見る島〜』
NINTENDO64『スーパーマリオ64』
『ゼルダの伝説〜時のオカリナ〜』がある。

 
●宮本茂(みやもと・しげる)
任天堂株式会社情報開発部所属。
担当作品は、NINTENDO64『ゼルダの伝説〜時のオカリナ〜』
『スーパーマリオ64』ゲームボーイ『星のカービィ』
『ポケットモンスター』など多数。

 

 
イメージ   ──物語自体も、いままでのゼルダシリーズには
あまりなかったものではないですか?
いままでのゼルダには大悪党のガノンというやつがいて、
そこにみんなが勇者になって戦う、
そういう流れになっていましたよね。
今回の「ムジュラの仮面」は、主人公が、ほんとうに
ひとりの少年です。子供といっても、
「時のオカリナ」を経験して、オトナの部分も持っている
子供なんでしょうけれども。スタルキッドに出会って
オカリナとかエポナを盗まれて、
なんだか迷いこんでしまった世界で、月が落ちてきて……
そういうふうな物語にしてしまおう、というのは
最初から考えていたことなんでしょうか?

 
青沼:
3日間の話にするには、どうしても3日間を
終わりにしなくちゃいけない、
それなら、月を落としちゃえ、というのが
いちばん最初にあったんですね。
じゃあ、何度も月が落ちたらゲームオーバー、
というふうにしてしまえばいいんだけれども、
実はこれがリプレイにしているんだよ、
という仕組みができたところで、
ストーリーもすんなり決まりました。
 
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宮本:
前作もそうなんだけれど、いままでのゼルダというのは
ちょっとヒロイックな感じがするので、
そこまで行きたくない、もっとフツウの子がいい、
というのがあって。
しかし、おそらくユーザーもそうなんだと思うんですが
現場でも、ゼルダに対する思い入れが強いと、
「大人リンクでやりたい」という意見が出る。
でも「ゼルダはやっぱり子供リンクだろう?」
という僕らの思いもあって。
最初、前に出てきたキャラクターのなかで、
いちばん悪いやつにしたら面白いのは誰か?
ということを考えました。
森の中でスタルキッドというやつに襲われて
何かとんでもない目に遭わされる、
というのを決めちゃったんですよ。
それより前に、もうちょっと違うオープニングデモが
できていたんですけれど、
それは置いといて(笑)、
とりあえずスタルキッドがケタケタと笑ってて
リンクがとんでもない世界に引きずり込まれていって
ガノンっていう筋骨隆々としたやつが
親分なんじゃなくて、いちばん細くて妖しいやつが
笛吹きながら悪いことをしている、というような
世界観で、子供のリンクが事件に巻き込まれる。
それが密度高く作られていること、
というのが僕の出した要望だったんです。
それができてれば、あとは何でもいいから、なんて(笑)
ホントに言ってました。
そのあたりがいちばん大事なポイントだった。
最初、現場はがたがたしてる時期もあったけど。
一年ではできない! みたいなね。

 
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──どれくらいの時期にですか?
 
青沼:
本当に初期の話です。
いろんなことが煮詰まって、
これじゃ一年じゃできないでしょ? って、
一度、バーンと潰しているわけです。
「時のオカリナ」をつくって、
一回仕事が終わってるでしょう。
その後だから、次はどうしたい、という思いもあって、
ストーリーもこんなのがやりたい、って
みんながみんな、考え始めてしまって。
そうなると、どんどん広がってしまうんですよ。
僕も最初のころ、それが止められなくて(笑)。
 
宮本:
長屋の花見状態(笑)。

 
青沼:
「よしわかった! みんなやろう!」って。
 
宮本:
洋食も和食も食べるのはダメ!
和食にしぼる! というようなことを言って。
ローストビーフとかは、もう一回、
別の味で作りなおしてきなさい、って。

 
イメージ 青沼:
やっぱりリアルなスケジュールのもとで作るということは
必要なので、その上でコンパクトにするには
どうすればいいの? という事を、
戻ってきた小泉と一緒に考えて。
で、いまの形にだいたい落ち着いてきたんです。
それから、じゃあ、最初の話はどうしようか、って、
小さなところから話が展開していって。
「3日間というコンパクトな世界」で、
「だけど、ずっと遊べるもの」に落ち着いたんです。
 
──その一年間というのはどんな感じなんだろう……
 
宮本:
ぼくはだいたい3年間でひとつ、というのを
やってきたわけだけれど、そういうゲームでも、
最後の一年間というのはだいたい一緒なんですよ。
今回は、非常に順調に進んでいるプロジェクトの
終盤一年間だけをやった、という感じですね。
密度濃く。

 
小泉:
夏に「スペースワールド」というショーがあって、
とりあえずまずはそこに向けて必要なものを
そろえていくという作業を始めて。
どう構成していくかとみんなで話し合ったら
すぐに台割(構成進行表)ができた。
それをこのあいだ久しぶりに見てみたんですが、
ほとんど、そのまんまなんですよ。
つまり、企画通り、順調にできたって事なんです。

 
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宮本:
それは珍しいよね。

 
小泉:
企画書以上にモノは盛り込めたけれどね。

 
青沼:
3日間で時間が終わってしまっても
そのあとオカリナを吹いて、
またスタートに戻ることができる、
というのが今回のゲームなんですけれど、
その時、リンクは、どういう状態なの?
ということがあって。その時のセーブを
どういうふうにするか、ってことですね。
「かわいそうだから、集めた道具は
 使えるようにとっといてあげようか」
という意見も出ていたんだけれど、
「それじゃあ、緊張感が出ないでしょう?」
という話になって。
 
宮本:
理屈とか、現実とか、気持ちとか、
いろんなものが交錯している。

 
青沼:
結局、ばっさりと、権利だけを残して……
 
──権利?
 
青沼:
ゼルダの世界の中には数というものがありますよね。
何をいくつ持っているか、ということ。
その数を、ゼロにしちゃおうか、と。
でもプレイヤーの記憶は残ってますから、
「僕は弓は手に入れたから
 弓を射ることはできるんだよね」
と、そういう記憶だけは残しておいてやろう、と。
だから、戻ってきて、弓は使えるけど、
矢の数はゼロなんですよ。
「矢から集めなくちゃいけないんだ!」
というときに、矢を集めるのにもっとも効率のいい
ルートというのを、プレイヤーに探してほしいんです。
前にこうして手に入れたから、すぐにそこへ行こう、
というような。
ゼロになったところから
自分で組み立てていくということを
やってほしい、そういうゲームにしたかった。
そこで、バサっと、プレイヤーにとっては
「ウソォ!?」ってことなんですけれど、
この世界はそういうものなんだよ、というところで
どうやってクリアしていくかを考えてほしい。
 
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宮本:
そういうことでもあるんだけど、
3日間をやり直すってことは
取り返しがつくってことでもあるからね。
矛盾をしないでつなぐっていうことと
心地よくつなぐというのが非常に難しいことで。
極端な話、ダンジョンを解く、というのが
ゼルダではいちばん大事な要素なんで
そのなかに時間制限をつけるというのは
最初は絶対ダメ! って考えますよね。
でも作っている途中で、
「せっかく3日間というゲームをつくってるから
 ダンジョンのなかでも時計は動いてて
 3日目の最終になってからダンジョンに入ったら
 そのダンジョンは絶対にクリアできない」
というのは絶対にやりたい、と。
残り1分で入ったのに、延々とダンジョンのなかで
暮らしていたら、残り1分という緊張感はない。
ゼルダではご法度のようなことですけれども、
やっぱり、あえて、ダンジョンのなかの時計を動かすと
いうことをやったんですよね。
マリオクラブにかけるとね、
「ゼルダに合ってない!」
という意見が最初はいっぱい来ました。怒りの声が。
でもしばらくすると「やっぱりよかった」に変わるんです。

 
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青沼:
「ダンジョンってじっくり考えるものでしょ?」って。
「中に入って、これはどうやったらいいのかってことを
 じっくり考えさせてくれるのが今までのゼルダだったのに」
って言われ方を、最初は、するわけです。
刻一刻と時間は過ぎていくんで、
ゆっくりなんかしているとすぐ月が落ちてくる。
「それはつらい」って、言われたんですが、
やっぱりそこを何度もがんばってチャレンジしていくうちに
緊張感と、ダンジョンをクリアするということを
どうやったらいいのかが習慣化していくわけですよ。
そうすると、あまり苦じゃなくなる。
 
宮本:
案外便利なものにね、時を速くするメロディとか、
時を遅くするメロディとかあるわけですよ。
それから、フットボールやラグビーの最後みたいなもので、
一個やるとポーズかけて、時計を止めてから
じっくり考えて、なんてこともできるしね。
結構楽しいですよ。
いままでのゲームでは味わっていない緊張感。

 
──マリオクラブの評価というのは
時間が経つにつれて上がってきたんですか。

 
小泉:
上がってきましたね。

 
青沼:
最初はボロクソで。
 
イメージ 宮本:
「死ねやぁ!」って(笑)。

 
小泉:
言ってない言ってない。
でもまあ、辛辣なことは毎日毎日ね。

 
青沼:
最初はつらかったなあ。
でもまあ、最初はほんとにバッサリと
3日間を容赦なく進めていたんで
そう言われるのももっともでね。
それで先程言ったような、時間を遅らせる要素を
入れていったんです。で、なおかつ、みんながゲームに
慣れてきて、評価が上がっていった。
 
小泉:
マリオクラブと一緒に仕事をしているという
気分がありましたね。

 
宮本:
按配よく作る、ということと、
面白く作るということは違いますからね。
按配を考えると新しい事が止まる。
だからまず新しい事をやって、
按配はあとからつければいいんですよ。

 
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次回もこの続きをお届けします。
お楽しみに!


2000-05-25-THU

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