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イメージ 「糸井重里のバス釣りNo.1 決定版!」
 〜釣りに行こう〜

 制作スタッフ座談会 その2
 よし、今回は、他の釣りゲームソフトに
 戦いを挑もうよ。
 
 
前回にひきつづき、制作スタッフであるダイスの皆さんと、
「釣り監修」の倉恒さんをまじえての座談会です。
このゲーム、水中でのルアーの動きがばっちり
わかるんですが、これがコントローラの操作で
クイックイッとじつに気持ちよく動くんですよ!
そのプログラムを組んだ裏側には、いったいどんな苦労が
あったのか……。そうです、こぉんな苦労があったんです。
 
●参加者●●●●●●●
 
●倉恒良彰さん
前作から引き続き、『糸井重里のバス釣りNo.1 決定版!』のアドバイザー。
関西在住。「釣り監修屋でございます」。実際のバス釣りと、ゲームとの差を
埋めていくのが仕事。「そう簡単にはOK出さへんでー」

 
●小関昭彦さん
株式会社ダイスの社長であり、プロデューサー。「苦情処理と、問題解決を
担当しております。毎日心臓を強打されるような問題と取り組んでおります!」
と元気に語る。

 
●サイトウ・アキヒロさん
株式会社ダイスの共同代表であり、ディレクター。
『糸井重里のバス釣りNo.1 決定版!』全体のディレクションを担当。
倉恒さんからの要望をクールに理知的に処理する二枚目。

 
●アベキ正博さん
株式会社ダイスのCGデザイナー。当時ダイス唯一の釣り人だった。
サブウインドウの魚はこの方の担当。
「あべ」は「木へんに、青」という、パソコンでは出ない字。

 
●村野嘉泰さん
株式会社ダイスのグラフィックデザイナー。
「地面、地形などのフィールド・デザインを担当しました」

 
●川原田祐司さん
株式会社ダイスのデザイナー。「サブウインドウ、タックルボックス、
3Dエフェクト、しぶき、ルアーのアニメーションなどを担当してます」

 
●能登谷哲也さん
株式会社ハル研究所所属。制作進行および、パッケージやマニュアルなども担当。
「倉恒さんと、ダイスの皆さんとの間に入るのが仕事です。ふうふう」

 
●武久豊さん
任天堂株式会社企画部の、プロダクトマネージャ。プロモーション担当。
いまも、全国を駆け回る多忙な旅人。

 
●糸井重里さん
『糸井重里のバス釣りNo.1 決定版!』の、ゲームプロデューサー。
 

 
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「プログラム変更に半年…
…長かった」と
ダイスのサイトウさん。
サイトウ:
ルアーの動きをアニメーションからプログラミングへと
移行しよう、と決まって、プログラマーを専任で
用意したんですよ。
今度は動きをどういうふうにプログラムするか、
というところになったんだけれど、とはいっても、
全くの自然をシミュレーションするのでは、
あまりにもやることが膨大になってしまう。
そこで、倉恒さんから聞いている話をもとにして、
「これとこれのパターンは同じ方向性で」
「このルアーは形は異なるけど、動きの基本は同じ」
というように、かなり大きな分類をしましたね。
それをさらに細かくしていく、ということで、
プログラミングしていった。
アニメで、一時期、ちゃんと動いていたんですよ。
ゲームがそれでできていたんですけれども、
それをあえて解体して、プログラムでルアーの動きを
つくるまでには、半年近くかかりました。

 
糸井:
そこは、ものすごく、大きかったですね。
 
サイトウ:
ルアーに関しては、半年近く、何も見せられないような
状態でした。

 
小関:
途中で見せて、また倉恒さんに怒られちゃったりしてね(笑)。

 
倉恒:
いや、ワタシはね……(笑)途中で見せられるわけですよ。
見せられたら「違う」と言うしかなくて。
皆さんが作って「これくらいでオーケーですよね」っていう
気持ちで見せている、とは思っていなかったから。
ダメ出しばっかりしてたんですよ。
でも実は、そういうことだったんですね。
 
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「それじゃアカンて!」と
鬼コーチの倉恒さん。
サイトウ:
それで大分類していくわけなんですが、
そのルアーごとの個別の処理というのを
加えていくんですが、それは「このルアーには
何が一番重要なのだろうか」ということを
見つけ出していって、アド・オン(追加)していく作業。
それは、倉恒さんがいなければできなかった。
スーパーファミコン版からのディスカッションの中で
「このルアーにおいては、この動きとこの動きは
再現しなければいけない」というのを付け足していく。
それで、実際に付け足してから、また見てもらうんですが、
「いや、まだ、この部分が足りない」
って、また、しばらくディスカッションが続いていく。

 
糸井:
ルアーってね、ラインと、ワームなんかの場合だったら
シンカーといって重りがついているから、
全部、そこに、重力と抵抗がかかっているわけですよ。
それをね、全部再現しようって言うんだから。
 
──ルアーに限らないわけですよね。
 
サイトウ:
そうです。魚の動きとかも。

 
倉恒:
いつだったっけか、逆転したことがあったよね。
動きが。チューブワームのダウンショットだったっけ。
キャロライナ・リグ(仕掛けの名前)や。
たしかね、重たい重りの後ろに、ラインでもって、
軽いチューブワームを引っ張っているんですよ。
それが、アクションすると、追い越すんですよ。
「これ、あかんやないか」
「でも、できないんですよ」
「できない、じゃ、ない! それじゃダメなの!」
って。プログラムとして追い越してしまうんだけど、
軽いものが重いものをなぜ追い越すのか、
水中でこんなこと起こってないよね、って。
そんななかで「もうできませんよ……」というときも
ありました。でも、やってもらわないと困るから。

 
──ルアーって種類がものすごくありますよね。
それを1個ずつ?

 
小関:
そうなんですよ。それぞれに苦労があってね。

 
アベキ:
まず、さきほど話したように分類をしまして、
そのおおまかな動きをつけました。
そのあとに倉恒さんとまたお会いして、1個1個、
「重りが何オンスのものはこれくらいのスピードで
落ちるよね」とか、「これはもうちょっと速く」とか、
すべて、倉恒さんと僕で1個1個、検証しながら。
水中は、プログラムでデバッグモードというのがありまして、
「ここはこれくらいの速さだよね」
というのを、直接プログラムをいじりながら修正して。
永遠に続くかと思われるほど、しばらく、続けました。
それでようやく今のような状態になったわけです。
ルアーの方も、基本的には先程あったようにプログラムで
動かしているんですが、それだけではやりきれなかった
ところもありまして、3分の1くらいはアニメーションと
併用して動かしています。すべてがプログラムという
わけではないんですよ。

 
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「やれ!って言われたら、
もちろんやりますよ!」と
威勢のいいダイスの皆さん。
倉恒:
さっきの糸井さんの話を受けてなんですが、
ルアーの変則的な動き。あれ、いろんなルアーに、
全部に当てはまる話なんですよ。
一種類ずつ、変則リアクションの動きをビデオで、な?

 
小関:
そうなんですよー。

 
倉恒:
僕が水の中にもぐってルアーになって説明できれば
いいんだけど、さすがにそれもできないですからね(笑)。
そやから、水の中と想定して、ビデオ回して、
僕がルアー持って、手で、「こう動くんや!!」って。
それを一種類ずつやっていったんですよ。
たとえばクランクベイトっていうのが出てくるんですけど
ふつうのクランクベイトは、障害物に当たったら、
横方向にスライドしながら、平打ちっていう、
おなかをギラッと反転させて戻るという動作をするんです。
それと、もう一つ、当たったら逆回転。ひっくりかえって、
戻る。それをウチのゲームでは、両方やれ! って
話なんですよ。

 
ダイス一同:
「やれっ!」って(笑)。

 
倉恒:
……「やってね?」っていうか……(笑)。
スピナーベイトに関してもそうだし。

 
アベキ:
平打ちパターンに関しては、3方向の動きがあります。

 
倉恒:
そんなゲーム、どこにもあらへんのよ。ないもん。
 
糸井:
(小声で)……つくろうとは、思わないもんねぇ。
 
倉恒:
(大声で)思わない!
 
小関:
そんなー(笑)。

 
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これがその水槽だ!
──ゲームをしながら思ったんですが、実際ああやって
絵を動かすのは……実際に見て再現するのはできるかも
しれないけれど、水の中で起こっている動きでしょう。
いったいどうやって観察したのかが疑問だったんですよ。

 
小関:
そのために、水槽を、買ったんですよ。
それはぼくらとしては大きな出来事だった。
ぜひ、自慢したいことのひとつだね(笑)。

 
──スプリットショットリグを使っていて、引くと、
重りが先にトーンとついて、ルアーがちょっと進む、
そういうの、知らなくちゃ再現しようがないですもんね。

 
小関:
でかーい水槽なんですよ! 長さ180センチ、
高さ60センチ、奥行き60センチ。

 
倉恒:
棺桶サイズやね。
 
小関:
棺桶って!?

 
サイトウ:
あれを買ったことは非常に大きかったですね。

 
アベキ:
じっさいワームの種類も8つとかあるんですが、
ふだん釣りをしていると勝手なイメージがあるわけです。
このワームはこう動いているんじゃないかな、って。
ところが、水槽で実際に動かしてみると、違うんですよ。
「アレッ? こいつ、こんなに速く動くんだ!?」
「ええっ? こんなに遅いの?」
という、新たな発見がある。
ぼくらの思い込みを新たに見直すことができたんです。

 
小関:
実際の釣りだと、水中はイメージの中で
釣っているんだよね。

 
アベキ:
それが修正できた。

 
小関:
最初、小さい水槽しかなかったんですよ。
でもそれだと限界がある。どうにか大きいのがないと
だめで。でもなかなか売っていないんですよね。
なおかつ、大きくても間仕切りのある水槽ではダメ。

 
糸井:
水槽まではさ、お金のあるチームはけっこう買うんだよ。
 
小関:
ウチ、お金がないのに買いました!(笑)。

 
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「水槽買ってよかった〜」と
小関さん。
糸井:
でもそれをどう使うか、ってところなんだよね。
「魚ってかわいいな」ていうことをわかるために買う人も
いるし、ルアーの動きでも、ざっとした動きを理解するに
とどまる人もいる。でも、ダイスの場合は、
水の抵抗に対するルアーの変化だとか、魚がどう食うか
だとか、より実践的な部分で「見つめる」ことが多かった。
「水槽買ったんですよ」って言ったら、よそはきっと
「ウチはもっといい水槽買いましたよ」って言うんですよ。
今回、すごくライバル意識があるんだけど(笑)。
 
倉恒:
そこ大事。大事やね。
 
糸井:
「ウチの水槽はもっとでかい! 継ぎ目なんかないぜ」
とかね。でも、何をしたかったか、というのが、
ぜんぜんレベルが違うんです。
どのチームでも、詳しい人がいれば、そういうことは
思ったろうけれども、諦めたと思うよ。
武蔵のラーメンだよ。「ノウハウは開示しますけど」って
言われても、よそはやらないでしょう。
 
サイトウ:
アニメで作っているものも、決して見劣りするものでは
ないんですよ。今出ているほかの釣りのゲームソフトの
ルアーの再現状態よりもいいくらい、ちゃんとできていた。
でも、それでも「やっぱり違う!」って。

 
糸井:
よし、今回は、戦いを挑もうよ。ほかの釣りソフトにさ。
 
一同:
そうですね!

 
    
 
 

 

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アベキさんと倉恒さんの
間には厚い師弟愛が……。

倉恒:
そのほうがいいですよね。
しかもね、釣れるルアーと釣れへんルアーというのが
あるんです。僕ね、昔、釣り具屋やってたんですけど、
商品セールスもしてるし、商品開発もしてたんですよ。
その頃、バスプロの人と一緒に、釣れるルアーと
釣れないルアーの分類をしてた。
クランクベイトでも、釣れるのと釣れへんのと、
いろいろあるんです。そこでできるだけ、釣れないやつを
排除して、釣れるものを入れよう、という経験があった。
そやから、僕としても、今回のゲーム、目標値が高かった。

 
小関:
ヘッドコーチの高い目標。

 
倉恒:
それがね、迷惑というか、気の毒やったかもしれんね。
 
アベキ:
いや、それは、気の毒というのとは違います。
「僕はもうダメだ」っていう部分を、倉恒さんが
「そんなんじゃダメだ」って叱咤してくれたことが、
今につながっているんです。
もしかしたら、途中で、妥協してたかもしれない。

 
小関:
ぼくも「なんでこれでダメなんだよアベキ!?」って、
「もういいじゃないか」って思うことが何度もあった。

 
倉恒:
しかも、もっとばかげたことをやっているんです。
実際の動きとして「これ以上は無理だ」というところまで
いったん、たどり着いたんですよ。アベキさんの言うように
もうこれでNINTENDO64のゲーム機のできる
限界までやりました、という日が来たんです。
僕はそれで「わかった」と。さすがにそれ以上は言えない。
それで、「じゃあ次は?」と考えたんですよ。
まだ先がある。それはね、実際に釣り場で投げるでしょう。
その投げたときに、ルアーが沈んでいく速度と、
ゲームの速度が違うんですよ! そこにものすごい違和感を
感じるから、今回、実際のルアーの動きはサブウインドウで
見えているんだけど、実際の釣りでは、それは見えない
状態ですよね。。水深4メートルのところに、
16分の1の重さのジグヘッドリグをキャストしたときに、
何秒間くらいで底に落ちるか、ということ。
これは、実際に釣りをする人はね、その感覚を、
ちゃんとカウントしている人もいれば、全くの感覚として
覚えている人もいるわけです。
で、今回のゲームでは、カウントする時間の問題よりも、
肌で感じている「ハダカン」を大事にしようよ、
ということで、そこから全部、重量浮力調整を
やり直したんです。

 
糸井:
うーん!
 
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ルアーの動きを見よ!
倉恒:
巻いているときの巻き上がりも、微妙に違うんですよ。
実際にキャストして底に落ちて、スピナーベイトを
巻きだしたとき、デッドスローでゆっくりとローリング
させるのと、そこそこの速さにするのと、中くらいのと。
それをコントローラの「スロー」「はやい」「ノーマル」、
全ルアー、それぞれに速度まで変えたんよ。

 
アベキ:
3段階でね。やりましたね。

 
倉恒:
同じ速度で均一化してしまうと、ルアーによっては
おかしくなっていく。
それでまた、えらいことになって。
あのときは、僕とアベキさんとで、直接プログラムの
数字を修正していったんだよね。

 
アベキ:
僕としてもその部分は不安があったし、逆に倉恒さんに
突っ込まれたことで「やらなくちゃ」という認識ができた。
「よし、ここまでやったんだから、やりましょう」って。

 
倉恒:
あのルアーの動きは、NINTENDO64で、
やれることは最大限、やったんですよ。
……もっと、やりたいことは、あるけどね(笑)。

 
ダイス一同:
……あはははは……。

 
倉恒:
それからさっき糸井さん言ってましたけど、根がかり。
根がかりをわざとさせて、外して釣る、ということも
やろうということになって。
ハングアップというんですけど。

 
──それは糸井さんのアイデアだったんですか?
 
糸井:
いや、釣りをする人なら知っていることなんだけどね。
ゲームだからって諦めていることと、
実際の釣りには差があるわけだけど、どこを諦めるのか。
早く諦めたら、ただ糸を垂らしていれば釣れるという
ゲームになってしまう。「ホントはこうなんだけどなあ」
っていうことを我慢しているところをどれだけなくすか、
というのは、僕じゃなくても、釣りをしている人だったら
みんな思っているんですよ。ただ、できるかできないかと
いう戦いですから、オリンピックに出ようぜ、というのと、
国体が目標だというのとは、違うじゃないですか。
これは、オリンピックを目指したい。そういう気持ちで、
倉恒さんはコーチですから「そんなんでオリンピック
出られんのかいな」って言うわけです。
本当は、釣り人は全部オリンピックに出たいわけです。
だって、釣りがしたくてこのゲームを買うわけだから。
 
倉恒:
そこなんですよ。糸井さんから一番最初にそういう発注を
された。だから妥協できなかったというのがあった。
 
  糸井:
もっと釣れなきゃヤだ! という人が買わないとしたら、
諦めるというところからスタートしているわけですよ。
そのお客さんとは縁がなかったと。
そうやって、あるていど、市場の形まで小さくコンパクトに
して、そこにマーケティングしているんです。
将棋ソフトに近いかもしれませんね。
コンピュータ相手にどんどん勝つゲームなら、
すぐ作れるよね。コンピュータを馬鹿にすればいいわけで。
でもね、今回、勝負だから。
他の釣りゲームにも戦いを挑んでいるし、なんか、
わけのわからないものにいっぱいケンカ売ってるね。
「諦め」にもケンカ売ってるというか(笑)。
 
小関:
でもね、あるとき、糸井さんが、
「今回のテーマはルアーだ」と宣言したんですよ。
なにか諦めたくなっちゃったりとか、何か悩んじゃったりと
いうことになったときは、必ず「ルアーだ!」というのを
思い出してやろうよ、ということをおっしゃった。
それが僕にはとても印象的で。それからルアーを本物、
もしくは本物以上に気持ちよく作ろうよという気になった。
それで鬼コーチの倉恒さんにビシビシしごいてもらった。
そういうことが、非常に大きかったですね。

 
 
イメージ こんなところまで作り込んでいる釣りゲームって、
ほんとにほかにはないですよ!
「もっと!」っていう気分が、このゲームをここまでに
したんですね。
次回も、この座談会の続きをお届けします。どうぞお楽しみに。


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