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イメージ 「糸井重里のバス釣りNo.1 決定版!」
 〜釣りに行こう〜

 
 山口優&池上正インタビュー
 ゲームの音楽って、こうつくるんだ。
 
「糸井重里のバス釣りNo.1 決定版!」の「音」は、
アーティスト集団マニュアル・オブ・エラーズの
山口優さん、ゲイリー芦屋さん、岡村みどりさんが
BGMを、ハル研究所の池上正さんが効果音(SE)を
担当しています。
“頭について離れない”と評判のこの音楽、
いったいどうやってつくられたのか、
山口さんと池上さんにお話しを聞いてきましたよ!
 
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山口優さん(左)・池上正さん(右)
 
●64の音楽は、オーケストラをひとつ雇い、
 その人たちに全曲演奏してもらうようなもの

 
──山口さんと池上さんは、それぞれ所属している会社が
異なりますが、このゲームの音づくりは
どういう分担で行ったんですか?

 
池上:
一緒に仕事をしたんですが、同じ場所にはいないんですね。
東京と山梨という地理的な距離もありましたし。

 
山口:
でもネットがあるから、やりとりはスムーズでした。
 
池上:
このごろは、そういう作り方、多いですよ。
でも、今回の場合、音楽に関する制作は
最終的には山口さんのところで完結してましたね。
そうなる前は、僕のところで音源をつくって……。

 
山口:
というのも、僕はNINTENDO64の音楽をつくるのは
初めてだったんです。だからツールを借りてやっていた。
でも完ぺきにはウチではできない。
作業の一部は池上さんのところでやらなくちゃいけない、
というような状態だったんです。
その段階では、ファイルを何度もやり取りして。
 
──ファイルというのは?

 
山口:
楽器のファイル。64はカートリッジ型でしょう。
あのカートリッジの中に楽器が入っていると思ってください。
その楽器の音も、僕らがつくらなければならないんです。
その調整が、最初はウチでできなかったんですね。
 
池上:
サンプリングっていうんですけれど、
カセットに録音するような形で楽器の音を録音してあって、
シンセサイザーのような使い方で
楽器を鳴らすしくみなんです。
その楽器の部分をつくる仕事というのが、
最初はファイルを送ってもらい、僕のところでつくり直して
送り返したり。あと、2回くらいだったか、来ていただいて
一緒にやったりしました。

 
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──制約というのはどのくらいあるものなんですか。

 
山口:
ものすごくありますよ。
つまりカートリッジの中に入る音しか入らないわけです。
だから曲でいうと全部で24曲あるんだけど、
どの曲も、音を共通して使わなくちゃいけない。
オーケストラをひとつ雇っていて、そのオーケストラに
全曲の演奏をお願いしているのと同じなんです。
 
池上:
よく間違えられることなんですが、ゲームの音楽というのは
「音そのもの」をつくるのではなくて、
「音の鳴るしくみ」をつくるものなんです。
ゲーム機が、ゲームをするときに音を鳴らしているわけです。
そこが、ふつうの音楽制作とは違っているところですね。

 
──山口さんは他社のゲームの音楽をいろいろつくって来た
方なんですよね。違いはどうでしょうか。

 
山口:
他社のものだと、1曲単位内の音色のメモリの制約は
あるんだけれど、曲が変われば別の音を使うことができます。
だから全く別のタイプの曲をつくれるんですね。
それが64はできません。楽器の音をひとつ変えると、
オーケストラのひとりが入れ替わるようなもので、
ほかの曲にも影響するわけです。
ほかの曲のデータもぜんぶ変えなくちゃいけなくなるわけ。
だから終わりのほうで、メモリが足りないので
この音をメモリの小さいものに変えよう、ということがある。
そうすると、その音を使っているほかの曲の演奏データを
すべて開いて、音量や、演奏情報を調整したりとか。
池上さんが所属しているハル研では、そういうことをすべて
自分でやっているわけですよね。
ところが今回は、作曲を外注するということが
初めてだったんですね。意外なことにね。
だから、ほかの会社の人が使うツールではない、
内部で使うようなツールを貸していただいて。
 
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●イタリアのB級映画音楽のように、
 というイメージが、最初にあった。

 
──どういう経緯で山口さんに依頼が来たんですか。
 
山口:
ゲーム製作会社のダイスさんからです。
 
池上:
スーパーファミコン版の「糸井重里のバス釣りNo.1」も、
ウチとダイスさんの共同制作だったんです。
前回のサウンドは僕で。

 
山口:
僕もダイスさんとは古いつきあいで、
何度もゲーム製作を一緒にやっていたんです。
発注は……おととしでしたね。
 
池上:
そのころイトイさんのところで初めて会ったんですよ。

 
山口:
山梨で会ったんじゃなかったっけ。
 
池上:
合宿という名の打ち合わせをしたんですよ。

 
山口:
そうか。すごい昔のことで覚えてないくらいです(笑)。
 
──どういうふうに依頼されるんでしょうか。
「こういうシーンがあるからこういうものをつくって」
ということなんでしょうか。

 
山口:
今回は、ダイスのサイトウさんが音楽が好きで、
音楽をこういう感じにしたいというイメージが
最初にあったんです。
「イタリアのB級サウンドトラック」
というものでした。イタリアの映画音楽。
それは最近の音楽でいうと、
ラウンジ・ミュージックと言われるタイプのもの。
具体名が挙がっていたのが、
モリコーネとトラバオーリでした。
 
──それは山口さんにはピンと来る言い方だった?
 
山口:
そうなんだけど、……つくっていくとそのイメージに
合うところもあるんだけれど、
いまいちサイトウさん、糸井さんと僕との間で、
食い違いがあったんですね。
特にファイトシーン。あれにすごく苦労しました。
6曲くらいつくりました。使われているのは1曲だけど。
 
池上:
実は前作のときにも、ファイトシーンの曲って
苦労したんです。
7曲くらいつくって、そのうち2曲を使ったんです。

 
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──それはどういうことなんでしょう。
釣りを山口さんが知らなかったから?

 
山口:
そうですね、関係はあります。
一番最初に僕がファイトシーンに抱いたイメージというのは、
いわゆる格闘シーン、アクションシーンなんです。
テンポが速くて昂揚感があるもの。
最初につくったものというのはそういう感じだった。
でも糸井さんやサイトウさんの間では
「軽すぎる」
ということになった。そのとき糸井さんが言ったのは
「Born to be Wild」だったかなぁ。ステッペン・ウルフ。
割とそういうヘヴィなオールドロックのことを言うんです。
で、僕は、なぜそんなこと言うのかわからなくて。
魚がバシャバシャはねてて、リールをまくなんて、
すごく忙しい感じでしょう?
それが「Born to be Wild」でしょ? わからなくて。
それで魚釣りに行ったんですよ。山中湖。
そうしたら、魚ってあんまり跳ねないし、
かかったときの重さのイメージのほうが
体感的にはあって。
忙しい感じじゃなかったんですね。
実は重いものだった。
そのことはわかったんだけれど、
実際の釣りと、ゲームで魚がかかったときのイメージは
違う、というのがあって。
糸井さんはゲームよりも、本当に釣るというイメージが
頭に浮かんでいたんだろうな。僕はゲームをやりながら
「もっと速い音楽のほうがいいよな」って、
その両方を考えながらつくりましたね。
でも、それがなかなか決まらなかったもので、
ほかの音楽をつくるのが遅れちゃって。
最初は、チームの一員であるゲイリー芦屋に
つくってもらってたんだけど、もう行き詰まっちゃって。
「俺はもうこれ以上つくれない!」
って言われて俺がつくったんだ(笑)。
 
──そんなに簡単には行かなかったんですね。

 
池上:
結局ね、「情景に合う」ということでは
ないみたいなんですね。
実際の釣りの気分に近いというか。

 
──完成したものはその「実際の釣りの気分」に近くなった?
 
山口:
でもやっぱり、僕は、ゲームだから、
ゲームのイディオムにのっとったものじゃないと、と思って。
オタク的な発想をしたくなかったんです。
 
──バスフィッシングのオタクの世界に入ることになると?
 
山口:
そうそう。魚オタクにしかわからない、
というものをつくるのはいやだった。
ゲームをやっていて面白いもののほうがいいでしょう?
結局は、ゲームの文法内で
ピッタリくるものを選んだんだけど、
最初に抱いていたイメージのものからは
だいぶ変わりましたね。
 
●チームによる音楽制作
 
──ゲイリーさんというお名前が出ましたが、
山口さんはチームでこのゲームの音楽制作をしたんですね。

 
山口:
僕は最初、仕切りと、データ制作をやって、
曲はほかの人につくってもらおうと思っていたんです。
僕のところ(マニュアル・オブ・エラーズ)の音楽家である
ゲイリー芦屋と、岡村みどり。
結局は半分くらい僕がつくっちゃった。
スケジュールの関係とかでね。
 
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岡村みどりさん ゲイリー芦屋さん
 
──山口さん、ゲイリーさん、岡村さんの
担当はどんなふうに割り振ったんですか。

 
山口:
曲調によるんです。
ゲイリーは情景に合わせた音楽。
いかにも映画音楽的な部分ですね。
湖のバックに流れているのは全曲ゲイリーです。
明るい感じのポップなところ、
タイトルの画面とか、レストハウスなどは岡村。
残ったところを僕がやった(笑)。
でも、やっぱり、池上さんがいなくちゃできなかったです。
 
池上:
むちゃなお願いをしているんだろうなあと思ってました。
僕は、最初の印象ではもっと大変なものだと思ってた。

 
山口:
意外と、コンピュータ、使えたでしょ? 僕。
最初、使えないと思ってるんだろうなって思ってた。
 
池上:
曲がテープレコーダに録音されてくるのかとか。
楽譜はかけるのかな? とか。
それがデータまでつくれる人だったので助かりました。
最初、外部の作曲家に依頼しよう、という話が
ハル研で出たときに、
「MOTHER2」がモデルにあったんです。
それは、鈴木慶一さんに、任天堂さんから曲を依頼した。
そのゲームのサウンドが、ものすごく評判がよかったんです。
そのゲームと同じこと、越えることをやりたい、と、
当時ウチの社長だった岩田が言い出した。
それで、今回のバス釣りで「おまえやってみろ」と。
それで最初はどうしようかと思ってた。
外注の話というのは、いろいろ大変な話が多いんですよ。
慶一さんはそういうことはなかったけれど、
一般的に、音楽を外注すると担当が苦労する、
という話ばかり聞いていたので。
それはやっぱり、音楽家に、
ふだん違うことを要求しなければいけないわけで。
僕らは、ゲームの制約、という中でものをつくることに
喜びを感じている部分というのがあるのだけれど、
そういう人ではない場合が多いじゃないですか。
そういう人に頼むというのは、
非常に失礼なお願いだったりするかもしれない。
だから、そういうことに理解のある人ならいいなあと。
もし違っていたら、理解されずに、
関係が悪くなっちゃったらどうしよう?? って不安でした。

 
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──それって、音楽家に対して失礼なことなんでしょうか。

 
山口:
失礼だと思う人も、いるでしょうね。
僕はもう、そういう制約がないとつくれないっていう
カラダになってますから(笑)。
 
池上:
でもね、制約のないものづくり、ってないと思うんです。
音楽という表現だって、音という制約がある。
オーケストラがなんでもできるかっていうと
そんなことはないですね。
だから、ゲームのハードの制約も
それと同じだって僕は思っていたけれど、
それでも最初はどういう人かわからなかったので
自分の中でシミュレーションしてました。

 
──シミュレーション?
 
池上:
ファクスも電話もなくて北海道の山の中に住んでいるかも、
って。楽譜もかけない、って言われたら、
DAT持ってできた曲を採譜して、
僕の方でデータをつくらなくちゃいけないのかな、なんて。

 
山口:
そんな人いまいないよ(笑)。
頼まないよ、いても。
 
池上:
ダイスのサイトウさんも最初から言っていたんだけど、
ゲームっぽいものにはしたくない、と。
ゲームとは全然畑の違う人と組ませたい、
と、最初、言っていたんですよ。
ところが山口さんはゲームのことを知りすぎるくらい
知っていた。僕としてはラクでした。

 
山口:
僕の方がゲームに寄っちゃって(笑)。
「ゲームだったらこういうほうがいい!」って(笑)。
 
池上:
「プレステはこうなってますよ」なんて教えてもらったり。
僕としては逆の驚きがありましたね。

 
●ゲームの音楽をつくることは、
 「作曲する」ということと
 「データをつくる」ということの両方

 
──池上さんがした仕事を、くわしく教えてください。
「SE」というのは、Sound Effect……音響効果ですよね。

 
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池上:
鳥の声とか、蝉の鳴き声とか、ああいったもの全てですね。
前回の作品もやっているんですが、
「釣りの手ごたえ」を音で表現する。手の感触ですね。
そういうものを再現するのが、山口さんとの作業とは別の、
僕だけの仕事でした。

 
山口:
僕は池上さんがSEをやってくださったことで
非常に助かりましたよ。
 
──というと、ゲームの音楽は、
BGMもSEも、ということが多いんですか。

 
山口:
そうです。僕も、……僕の相棒に松前公高という
音楽家がいるんですが、
彼も、膨大な量の効果音のライブラリを持ってます。
音楽と効果音、セットで、という仕事が多いですね。
 
──今回、そこの部分を分けたのは?
 
池上:
今回の依頼がそもそも「作曲をお願いする」
ということだったんです。
最終的には山口さんのところでデータを打ち込む、
というところまでやっていただいたんですが、
それも山口さんだからできたことです。

 
──SEの種類って、このゲームにはどれくらい
あるんですか。

 
池上:
少ないですよ。150以上はありますけれど、
200は越えない。

 
──それは少ない?
 
山口:
少ないですよ。
 
池上:
規模の大きなゲームだと、1000の声を聞くまでは
行きませんが、何百単位ですね。

 
山口:
ゲームの音楽をつくる、っていうことは、
「作曲する」ということと
「データをつくる」ということの両方なんです。
データをつくることを前提にしていないとダメなんですよ。
「このゲーム機はこういう音しか鳴らないからこうしたんだ」
というね。ふつうのゲームが音楽制作を
会社内でやってしまうのは、両方わかるからでしょうね。
……昔のファミコンは音が3つだったですよね。
 

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──3音までしか、同時に鳴らせなかった。

 
山口:
それは3音内で作曲しなくちゃいけないということ。
データのことをわかってないと曲がつくれないよね。
だんだん進化していって、
だいぶ今はふつうに曲がつくれるようになったんです。
 
──クリエイティビティをおかさずに。
 
山口:
逆にね、今は、3音でつくるってことに興味がありますよ。
 
──ムーグを使うように。
 
山口:
あえて3音で音楽を成立させるための方法として、
すぎやまこういちさんが「ドラクエ」でとった方法があって。
それはバッハなんですよ。
バッハの音楽は単音がのっかってる、
という仕組みになっている。
あれを選択したのはえらい。
 
──このゲームの音楽をトータルすると、
普通の音楽CD1枚分くらいになるんですか。

 
山口:
いや、ループだから、なんともいえないですね。
 
──ループというのは?
 
池上:
繰り返しということなんです。
演奏データの何小節目をどう繰り返すかということ。

 
山口:
ABCとあるでしょう。Cのところで演奏データは終わる。
その後ろに「Aに戻る」というデータを入れておけば
ABCABCABCABC……って繰り返すわけ。
 
池上:
その音を鳴らすためのデータをゲームカセットに入れるので
楽譜が入っているようなものなんですね。
その楽譜の中に山口さんの方で
繰り返しの記号を入れてもらっているということです。

 
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●制約の中でどうつくるか、
 ということが面白かった。

 
山口:
曲のイメージの話なんですけど、
最初、つくり始めたころから比べると、
画面がどんどん変わっていってしまったんですよ。
最初は、キャラクターを描かれた
ひこねのりおさんの世界のような画面だった。
だから牧歌的な曲をつくり始めていたんですね。
ところが糸井さんのいろんなことがからんで(笑)、
どんどんホンモノっぽい画面になってきた。
牧歌的な音がぜんぜん合わなくなっちゃった。
「映画みたいなオシャレな曲にしてほしい」
とダイスのサイトウさんは言っていたわけだけど、
最初は「絵に合わないよ」と思ってた。
ひこねさんの絵にストリングスが合うのか? って。
でも、サイトウさんの頭の中には
最終的な絵柄があったんでしょうね。
ひこねのりおさんのキャラクターと、
リアルな情景描写が合体したものがね。
 
──ゲーム音楽の作家側の「完成」って、
制限のなかでどれだけやれたか、ということに
なるんですか。

 
山口:
両方でしょうね。
曲のよしあしと、データとしての完成度。
64の場合は最初に音色を決めた時点で
覚悟が決まるんです。
プレイステーションなんかだと、
音のサイズをぎりぎりまで落としつつ、
曲として完成させるということをする。
今回は、いちばん問題だったのが「同時発音数」。
同時に鳴らせる音の数が決まってて。
20いくつだったかな。
 
池上:
64って、同世代のゲーム機のなかでは変わっていて、
サウンドのチップがないんですよ。
グラフィックとまったく同じ場所でやっている。
だからどうしても、グラフィックの方が重いことをしたら
サウンドのほうは重いことができなくなる。
逆にサウンドというのは毎フレームなってないといけない
ものじゃないですか。止まれない。
グラフィックとサウンドで、計算機の性能のトレードオフ
みたいなことが、かなりあるんです。
だからどうしても発音数の制約がある。
それはダイスのプログラマと僕とで交渉したんです。

 
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──最初に、予算の配分のようにキッチリ決めるんですか。

 
池上:
プログラムがどれくらいの処理をするのかは
最初の段階ではわかりづらいですけど、
山口さんの音楽と僕の効果音で、
最低限つくりたい量がある。
これは越えないでくださいね、
という線引きは最初にしました。
あとから、余裕があって可能になった発音数とか
波形の容量を、僕と山口さんで割り振ったということですね。
でもね、このゲームのひとつ前のゲームで
山口さんに頼んでいたら、無理だったかもしれないことが
いろいろあります。
なぜかっていうと、今回は、効果音のほうで、
ウチ独自のドライバを開発してあったんですよ。
普通は効果音って、ワンショットというんですけど、
効果音の長さぶんの波形を用意しておいて、
それを再生するという仕組みなんです。
でもそうすると効果音の数だけ波形がいる。
メモリをバカ食いしちゃうんです。
それを、SEMLという名前なんですけれど、
……HTMLの効果音版。
サウンド・エフェクト・マークアップ・ランゲージ。
スクリプトを書いておくと効果音を再生してくれる
しくみなんですよ。
だから、鳥の声でも、長い鳥の声のループを
録音しなくても、鳥の声ひとつを再生させて
たくさんの鳥が鳴いているようにもできる。
そういう仕組みを開発した後だったので、
効果音でメモリを喰わなくて済んだんです。
BGMにはなるべく無駄な苦労をしてほしくない、
と思っていたので。
それでもいろいろ苦労させてしまいましたが。

 
山口:
いや、あまり苦労はしていないですよ。
 
池上:
いや、あれがなかったら山口さん途中で怒って
やめちゃってたと思う。

 
山口:
逆にがんばってやっちゃってたと思うよ。
 
池上:
あと、ツールもかなり下地ができていた。
以前は、マッキントッシュなどで作曲して、
そのデータをコンバートして、ロードして、
鳴らす、という作業が必要だった。
つくったものをすぐに鳴らせなかったわけです。
それをウチのほうで、64を直接MIDIで
鳴らせるようなツールをつくったばかりだった。
ウチのサウンドのスタッフにもそれを使ってもらったら
非常に評判がよかった。
だから山口さんのところに持っていったら、
「これならイケるだろう」って。
そのとき初めて「なんとかなる!」って思いましたよ。
ほんとに、その前まではでっかいワークステーションを
使わないと効果音ひとつ鳴らないという状況でしたから。

 
山口:
僕の方も、最初に楽器を決めるということをしたから
ラクでしたよ。それは本当にオーケストラに近いような
構成なんだけど。
ただ、サイトウさんのリクエストもあって、
ファイトシーンにはけっこうロック調の曲が必要だったり、
音つくったけど作家が使わなかったりして
調整はしましたけどね。
使わない音を削除したぶん、使う音のクオリティを上げる
ほうに回せるわけ。そうするとほかの曲の情報を
ぜんぶいじりなおさなきゃいけないとか、あったけど。
発音数の問題で、重要じゃない音を間引くとか……
この、間引く作業は相当やりましたよ。
 
──それってツライことですか? それとも……
 
山口:
僕は、好き(笑)。
 
池上:
山口さんからメールが来たんですよ。
「けっこう面白い仕事です」
って。そういう人でよかった(笑)。

 
 
お話のあと、山口さんがぽつり。
「このごろゲームの仕事が多いんだけれど、
僕が面白いと思う人が、みんな、
ゲームの周辺にいるんだよ」
たしかに、ゲームの現場はアツイ。
取材をしてきて、それはすごく感じました。
 
さあ、長く続いてきた
「糸井重里のバス釣りNo.1 決定版!」
次回が最終回です。お楽しみに!

2000-04-21-FRI

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