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イメージ 「糸井重里のバス釣りNo.1 決定版!」
 〜釣りに行こう〜

 糸井重里インタビュー その1
 前作でできなかったこと、全部やってみせる。

1997年にスーパーファミコンで発売された
「糸井重里のバス釣りNo.1」が
NINTENDO64ソフトになって帰ってきます。
プロデュースは、もちろん、darling。
その開発の模様、いままで「ほぼ日」では
まったくお伝えしてきませんでしたが、じつはdarling、
ずーっとこのゲームをつくっていたのです。
その全貌をみなさんにお知らせできる日が
ようやくやって来ました。
いま、「糸井重里のバス釣りNo.1 決定版!」は
試作品がほぼ完成、この春の発売に向けて
最後の追い込みに入っています。
おおっ、任天堂の広報室・武久氏から、
発売日のアナウンスが到着しましたよ。

ついに「糸井重里のバス釣りNo.1 決定版!」の
発売日が3月31日に決定!!
前作スーパーファミコン版を大きく上回るリアルな釣りが、
もうすぐ楽しめるぞ。
今までの釣りゲームにはない「バスの居場所を推理する」
楽しさが味わえるまであと2ヶ月あまり。
今回は初心者も安心なヘルプモードに加えて、
「つりコン64」にも対応。バス釣りファンだけでなく、
バス釣りをやったことのない人をも唸らせる出来映えに
乞うご期待!


今回からの「樹の上の秘密基地」、
じっくりとこのゲームについて迫っていきます。
第一回は、この人に登場していただかない
わけにはいくまい。ゲーム・プロデューサーの
糸井重里さんです。
 
イメージ バス釣りが「ルールのあるゲーム」だとわかって
やめられなくなっちゃった
イメージ まずね、釣りっていろんな楽しみ方があるんだけど、
釣れるにまかせて運だのみで釣ってる
っていう釣りがほとんどなんですよ。
その、レジャー白書なんてみるとよくわかるんですけど、
ほとんどのひとが釣りって経験してるんですよね。
日本中でたしか7割くらいがしてるんじゃないかな?
年間でも1000万みたいな大きな人数が
釣りをしてるんですよ。

でもところが、パチンコやなんかとおんなじで、
運がよければ釣れて、運が悪ければ釣れない。
腕がいいだの悪いだのっていうのに関しては、
結局、ニジマスか何かのつりぼりで子供がよく釣れてさ、
「やっぱり邪念がないとよく釣れるんだなあ」
とかそういう話になっちゃうわけですよ。
それはそれで楽しみとしてはおもしろいんですけどね。
ぼくらがちっちゃい時にやってた釣りって
そういうとこがあるわけです。

ところがぼくも始めてから分かったんだけど、
バス釣りっていうのは、あとから輸入されただけに、
やり方のある、それにしかもそのやり方が
非常に覚えやすくて伝えやすくて
いちいち理屈の背景のある釣りだったんですよ。
それを知ったときに、
アメリカ人って何でも「NASA」だよって思ったわけ。
宇宙に行く、あの「NASA」ね。
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追求していったらどこまでわかるんだよ、っていうのを、
戦争をやるようにやるんですよ。
よく、釣りやってる人が、
「ぼく釣り好きなんですよ」なんていって、
「たまには、じーっと何も考えずに
水を見てるのはいいですよね」とか
言ってるわけですけど、
そういう釣りじゃなかったわけですよ。
それっていうのが、ぼくにとっては
最初の驚きだった。
それを知ったら、
受験勉強なんかでもそうだと思うんだけど、
「おいおい、だったら勉強すればするほど
受かるのかよ」っていう気持ちになった時に、
受かりたかったら、勉強しますよね。
それと同じ感覚になって、燃えちゃうわけです。
ふつうの仕事とか勉強とかとおなじような感じで
釣りというのがあるんだなぁ、と。
情報戦争だったり、テクニックの戦争だったり、
いろんなかたちで競い合える
ルールのあるゲームだってことがわかって、
これはもうたまんねえぜっと思ったわけ。
イメージ 広告のノウハウが
バス釣りに応用できた
イメージ で、ぼく自身が広告の仕事をずっとやってきて、
いわば、会ったこともない人に
ものを売ったり話をきいてもらう仕事を
ずーっとしてきたんですよ。そうすると、
会ったこともない人とぼくとの関係っていうのは
ないわけですし、特に広告なんかでいったら
僕が作ってるかどうかなんていうことも
お客さんには関係ないわけですよね。

あるポスターがある場所に張り出される、
それをどのくらいの人が見て
どのくらいの人が感じてるのかを考えるっていうのを、
体系化しているのかどうかはわからないけど、
ずーっと繰り返してきたわけですよ。
そういう技術とそっくりじゃないかと、思ってさ。
広告と、ルアーでやるバスフィッシングとが
そっくりだっていうことが
おもしろくてしょうがなくなってきたわけですよ。

そしたら、これは、今までやってきた
広告のノウハウみたいなのは、
逆にバス釣りに応用できるぞ、と思うわけです。
同時に、バス釣りのノウハウっていうのは、
今まで広告でやってきた自分の
退化してきた筋肉みたいなのを・・・
頭の筋肉っていうのも変な言い方だけどさ、
退化してきた神経回路みたいなのを、
刺激しなおしてくれるだろうな、っていうふうになって
どんどん釣りにはまってきたわけですね。
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で、まあ例をあげるととてもよくわかるんだけど、
自動販売機に仮に飲み物を入れて置いといたら
みんなが120円入れて買ってくれますよね。
でも山奥においといても、熊は買ってくれないんだよな。
缶コーヒーとか飲みたくないんだよ、熊は。
飲みたくっても、お金も持ってないし、
買い方わからないじゃん。
それじゃあ自販機を置いても、一銭にもならないよね。
あ、熊の話じゃなかった。
山奥に自動販売機置いてもだめだって話だ。
売る方法は、飲み物をおいしくするってやり方だけじゃ、
ぜんぜん足りないわけです。
もっといい飲み物の置いてある
自動販売機のとなりに置いといたら、どうかとか。
あるいは、自動販売機をきれいに
ぴかぴかに磨いておいたら、とか、
たとえばそこに絵を書いたらどうか、
言葉を入れたらどうなるか、
中にどういう飲み物を入れたら売れるか、とか、
自動販売機置くこと一つでも考えますよね。
いちばんてっとりばやいのは、
人通りが多くてのどの渇く場所に
自販機を置くことだよね。

これはもうマーケティングの考え方だし、
広告の基本中の基本の考え方なの。
だから、ほんとにいいコピーを書けば
絶対通じるかっていうと、そんなことはありえない。
極端に言えばさ、黙って自分でノートに書いて、
しまっておいたら、誰も読んでくれないんだから、
説得できないわけですよ。
で、メディアっていうものがある。
あるいはそのメディアの届く時期とか
範囲っていうものがある。
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それを今度釣りに置き換えると、
魚がひとっつもいないところに
一生懸命ルアーを放り込んでるとか、
いっこないのにじっと待ってるっていうのは、
山奥に自動販売機を置いてるのと同じなんですよ。
まず、「それは違うんだよ」っていうところから、
バス釣りのおもしろさってはじまるわけだ。
最高のルアーがあっても、いないところでは釣れない。
そのことさえも、
釣りをはじめたばっかりの人には気づけないんですよ。

だからぼくははじめて釣りをやってすぐの時は、
バリ島に正月行って、道具を持ってって、
で、もうとんでもなく間違ったルアーをつけて、
人が海水浴するような海辺で、
100メートルも200メートルも遠浅の場所で、
ジーンズの足まくって朝早く起きて、
一生懸命ルアー放りこんで
「何で釣れないんだろう?」って思ってたね。
それを後ろでかみさんと子供が見てたよ。
そういうまぬけなことしてんだけど、
あれは、釣りをはじめてまだ半月くらいだったんだけど、
あの時はシーバスっていう、
スズキを釣ろうとしてた時代なんだけど、
そういうことってみんなやってるわけですよ。

まずそこにはいないんだよっていうか、
そこでそのやり方では釣れないんだよ、
っていうのを知ることがまず釣りのはじまりだし、
更に言うと、じゃあいる場所で、仮に
丸太に縫い針をつけたようなルアーが仮にあったとして、
それで釣れるかっていったら釣れないんだよなあ。
今の時期どういうふうにやったらどういうとこで
どういう魚が釣れるのかっていうのを、
考えれば考えるほど釣るチャンスが増えてく。
わかればわかるほど腕が上がる。
 
イメージ 「これをやるとほんとの釣りがうまくなる」
っていう釣りゲームが作りたかった
イメージ で、たとえばの話、本当に釣りが目的で
いっぱい釣るっていうのが目的だったら、
冬の時期に釣りに行くってことはすごくコスト高い。
つまり、釣るチャンスは少ないんだけど、
それでも釣りたい人は行きなさいっていう。
で、いつの時期にどの場所で
どういう釣り方したらいいよっていうのを
全部わかった人には、ノーフィッシュってないんですよ。
プロでノーフィッシュってことは、やっぱりね、
根本的にはあんまりない。
つまり、大会でもない限り釣れない時には船ださない、
っていうか、釣り、しない。
だからノーフィッシュってない。
それを最初にぼくはバスプロに、
バスプロの沢村さんっていうぼくのお師匠さん、
その人に最初に会った時に、
「やっぱり沢村さんでも
 ボーズ(釣れないこと)ってあるんですか?」
ってきくと、
「いや、プロになってノーフィッシュっていうのは
 ちょっと考えにくいですよねえ。
 特にバスを対象にしていたら、ないですね。
 バスっていうのは、
 非常に生態がわかっている魚なんですよ」
って言われてびっくりしたの、それだけで。
覚えれば覚えるほど、わかればわかるほど
釣れるようになってくし、競える遊びなんだって。
それが最初に、自分がバス釣りにはまった
理由のひとつなわけですよね。

おんなじことをゲームで再現できるなって思って
ゲームを作ったのが
『糸井重里のバス釣りNo.1』なんで、
だから、スーパーファミコン版も、
理にかなってないとだめなんですよ。
乱数で適当にやってるよりは、
わかって考えて、推理してやってる時のほうが
釣れるようにできてるんですよ。
いろんな情報を今の時期こうだからこうで、
こういう釣り方でこういう場所にいるな、
今の時間っていうのは
これはいい加減にやっててもいいな、
みたいなのが楽しめるように作ったんで、
だいたい釣りやってる人で
『糸井重里のバス釣りNo.1』を買った人は
満足してくれたと思うんですよ。
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で、僕自身がそういう遊びのできる
釣りゲームを作りたかったんです。
釣りゲームはいっぱいあるんですよ。
でもやっぱり、根拠のない釣りゲームが多いんで。
根拠のある釣りゲームを作りたいっていうことで
『糸井重里のバス釣りNo.1』のスーファミ版を作った。
で、箱に、パッケージにも書いてあるんだけど、
これやるとほんとの釣りがうまくなりますよ、と。
で、ほんとの釣りがうまくなると、
このゲームもうまくなりますよ、っていう、
超シミュレーションゲームを作りたかったんですよ。

で、『糸井重里のバス釣りNo.1』作って
とってもうまくいって。
釣り知ってる人にほんとに好評だったし。
で、やっぱり
絵がどんだけきれいかっていう・・・
ムービー画面で勝負するっていう他の方法を
選ばなくてほんとによかったって思ったんだよ。
そういう自信があったの。

ここまでホントのメソッドを追っかけるって、
よそはしないだろうな、
っていう自信があったんだけど、作ってる最中に、
もっとできることいっぱいあるんだよって
そういうことも思ったの。
それは何かっていうと、
ほんとの釣りって、縦横上下にルアーの動きがあるし、
竿をコントロールする時も縦横上下に動かせるんですよ。
それを2次元で表現してたんで、
近さ遠さっていうのを、疑似遠近法で表現するしかない。
その疑似遠近法を使って2次元で。
仮にというかたちで表現するしかないっていうのが、
残念でしょうがなかったの。
 
イメージ 本当の釣りにもっと近づけよう、
本当の釣り以上に楽しめるようにしよう
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で、ポリゴンを使って、
向こうこっち高さ深さ右左ななめ、
こういうものが立体的に表現できるようになった時に、
ほんとの釣りにどんどん近くなる、
そういう風に思いながら、
ポリゴンになるといいなあーっていいながら
「1」の後半戦を作ってたの。
で、その悔しさが、今度はポリゴンになったんで
「出せる」ということになったんですよ。
で、じゃあ作ろうという風に思ったわけ。
動機の一番のポイントは、それだな。
「1」を作った時に、
本当の釣りにもっと近づけるはずなのに
できなかった。
っていうのができるようになったんだから、
みすみすやめておくよって手はない。
っていうか、自分でそのゲームをやりたかったんだよ。

で、ある意味ではほんとの釣り以上に
楽しめるっていう風に作るゲームって、
できうるんだっていう夢があったんです。
プログラムのほうは岩田さんが
後ろにひかえてたからもともと自信あるんだよ。
それができるようになったっていうのと、
もうひとつは、
ほんとに釣りのできるしつこいくらい詳しいスタッフを
今回は特別にふたりつけてるんですよ。
ぼくだけじゃなくて、
釣りをやってはノートをつけつづけているような、
ちょっと「まるキ」の入ってる人を
ふたりつけたわけです。

そのふたりが西と東にひとりずついて、
もうくどくどくどくど、
「それとちゃうねん、ルアーの動きはそれとちゃうねん」
「そんな時に魚はこない」
とか。それをものすごくしつこくやったんで、
まあ普通のプロダクションとかだったら現場から
泣きが入ってたかもしれないね。
でも、それ「1」を作ったスタッフが
「あそこでできないことを絶対やってみせる」
っていうふうに意地を張ってやっていたんで、できた。
 

 
次回も、このインタビューの続きをお届けします。
どうぞお楽しみに!

(C)2000 Nintendo / HAL Laboratory,Inc. / Shigesato Itoi
Character (C) Norio Hikone



2000-1-21-FRI

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