今年『ナイン』は大当たりする!
去年は知らなかったくせに、応援します。

               
『ナイン』勝手に観劇ガイド!
               




シェフ
『ナイン』東京公演は
いよいよ本日、初日を迎えます!

べ3

きょうは主人公グイド・コンティーニと
女性達の相関関係をもとに
ストーリーを紹介したいと思います!


シェフ
というのも、大阪公演の幕間で
おじさんたちが
「なんや登場人物多くて
 わかりにくいなあ」
と言っていたんですねー。
‥‥もったいないな、と思って。
もちろん『ナイン』の世界に
感覚的に浸り、
たのしめるかたが
ほとんどだとは思うんですけど。

べ3

ですので、僭越ながら、
ちょこっとだけ解説させていただきます。
もちろん予習なしでも
とても面白く見られると思いますし、
「知らずに見たい!」というかたも
いらっしゃるでしょうから、
ここから先は御自分の判断で
お読みくださいね〜!


シェフ
舞台は1960年代のイタリア。
フェリーニの「甘い生活」の時代です。
別所哲也さん演じるのが
主人公のグイド・コンティーニ、40歳。


チャップリン以来の天才といわれ
ガールフレンドには事欠かない
モテモテっぷり。
その私生活の派手さで
マスコミから追いかけられる日々‥‥。

べ3
そんななか、20年来の妻・ルイザから
突如「別れましょう」と!
ルイザは、高橋桂さん演じる、
眼鏡をかけている女性です。


グイドはルイザを
ヴェニスのスパ・リゾートに
気晴らしに行こうと誘います。

シェフ
しかしそこに追いかけてきたのは
マスコミの取材陣! それから、
池田有希子さん演じる、愛人のカルラ!
たっいへんセクシーな衣裳で登場します。
別のホテルにいるわね、遊びにきて、と。


べ3
そして次回作のプロデューサーである
大浦みずきさん演じるリリアンが
パリから電話をかけてきます。


構想がないのに適当なことを言ってしまう
グイドの言葉を真に受けて、
これからヴェニスに行くわ、と。
そしてほんとうに彼女はやってくる!

シェフ
福麻むつ美さん演じる
もと評論家でサブプロデューサーの
ステファニーを連れて!


さあ困った!
と、ここまでは
「現実の女性たち」なんですが、
このあたりからグイドは幻を
見るようになります。

べ3
純名りささんが演じる、
グイドの映画に欠かせない名女優、
クラウディア。


シェフ
花山佳子さん演じる、
グイドの亡きママ。


べ3
少年時代の自分、
そして少年時代に出会った女性、
サラギーナ。
田中利花さんが演じています。


シェフ
グイドのトラウマが
明らかにされていくんですよね。
あ、そうだ、スパのシーンでは、
ガイド役のようにして、
剱持たまきさん演じる
「スパのマドンナ」が
要所要所で登場しています。


べ3
他のキャストのみなさんは
現実のマスコミの取材陣としてや、
幻のなかで、かつてグイドと
関係のあったひととして出てきます。
こちらの回を読んでいただくと
女性達とグイドの関係が
よりおわかりいただけますよ。
舞台では具体的に説明されないことも
あるんですけれど。

シェフ
そのあたりが、おじさんたちが
「わかりにくい」と思っちゃう
あたりかもしれないですねー。
あと、別のホテルにいる愛人カルラから
電話がかかってくるシーンは
舞台にはカルラが登場しますが
それはあくまでも「電話線の向こう」の絵。

べ3
その登場のしかたがすごいんだけど
それは見てのお楽しみ!
さて、第二幕に入ると、
現実のクラウディア到着!
主役にはキミが必要だと。

シェフ
グイドはクラウディアのことが
ほんとうに好きなんだよね‥‥
奥さんを愛していながら、
カルラと愛しあっていながら、
クラウディアが忘れられない。
彼女からのインスピレーションで
構想がかたまったグイドは
「カサノバ」をモチーフに
新作を撮る事に!
スパのお客さん全員をやとって‥‥

べ3
撮影スタート!
でもその作品は、
彼の私生活、つまり、彼と、
妻や愛人が登場する、
まったくの私小説的なもので‥‥

シェフ
撮影が進むにつれ、
現実の女性達が
深く深く傷ついていく‥‥。

べ3
そのクライマックスは
ここから先は、ヒミツにしておいても
「わかりにくい」ということは
ないと思いますので、
あとはじっさいに
ごらんになっていただくのが
よいと思います!
そして、この作品に込められた思いは、
キウチさんの下のレポートをどうぞ!

               
第二五回 デヴィッドが話したこと(1)
               

きょう、東京公演が開幕です。

もっと『ナイン』に期待してもらうために、
もっと『ナイン』を味わってもらうために、
『ナイン』の演出家デヴィッド・ルヴォーが、
この春のある日ある場所で話していたことを、
何回かに分けてご紹介します。



ー デヴィッド・ルヴォーのことばー

日本での上演が決まったとき、
ぼくはこういうことを予想した──
女性たちが本能的に、
「グイドと彼の女たち」という感じに、
グイドの背景に回ってしまうかもしれない、
彼女たちの発想を変えるのに苦労するだろうって。

だけど『ナイン』は、
女性たちがグイドに「どう愛したらいいか」を
教育する物語なんだ。

女性はこうあるべき、
女性は若く、少女のように可愛らしくという、
狭く固定したイメージが文化のなかにあると、
それに合わせないようにするのは、
とても難しいことだと思う。
けれども、それでは舞台の上では、
女性はセクシーになりようがない。
『ナイン』っていうミュージカルは、
世界でいちばんセクシーなミュージカルなのに、
女性が持っている知性を使わなければ、
セクシーになりようがないと思う。


演劇でも他のメディアでも、
「固定観念」化したイメージが蔓延してる。
稽古を始めたとたんに、
まるで電線にとまるカラスのように取りついてくる。
まずそれを追い払わなくちゃならない。

「わたしは愛嬌が得意。
 わたしはきれいな女優だし、
 舞台に立つときはそれを求められてる。
 だから愛嬌を振りまこう」って。
これは危険なことと言っていい。

「愛嬌」以上のものを出してみたら?
ぼくは舞台で女優を見るとき、
周りがその人に抱くイメージじゃなくて、
本当のその人を見たい。

ぼくが出会う知性豊かな女性は、
自分の知性を表には出さない。
人と会話したり人に対するときは、
知性を覆い隠している。
だからぼくの仕事は、
「隠さないで、舞台上に必要なのは、
あなたの知性なんだから」
って言うことなんだ。

すると、途端になにかが変わる。
女優たちが、
「ここは自分の知性を使うところだ」と
感じたとき、
体の使いかたからなにから、
すべて変わってくる。

『ナイン』では、意識的に、
それぞれに違った個性を選んだ。
ひとりひとりが「女性」。
グイド役の男優は、毎日、稽古場で、
その16人の女性たちに囲まれる。
女性たちがみんな、
本当にいきいきと生きているから、
たいへんだとも思う。
とっても頭が良いし、ひとりとして、
「その他大勢」ではいないから。


男が「I love you」と言うときは、本気だ。
完全に本心で言ってる。真実。
愛を感じてるし、恋してるし、嘘はついてない。
問題は、その愛を次にどうしたらいいか、
どう発展させていったらいいかを
男は知らないってこと。
一緒に住む家を探すとか、
毎朝、食事を用意するとか、
現実的で具体的な、つまらないとも思える行動を
おこさなきゃっていうことがわからない。

ところが女性は、
男の「I love you」に、「じゃあ見せて」と言う。
「キャンドルの灯りでいただくディナーも
 ロマンティックで素敵だけど、
 愛ってそれだけじゃないわ」って。
もちろん、女性にロマンがないっていう意味じゃない。
女性は愛に伴う責任を考えてる。
愛について、とても現実的なんだ。
「これは愛だ、
 なにか行動をとらなくちゃ、前に進まなくちゃ。
 よし、荷物をまとめて、
 彼のところに引っ越そう」って、
実際的なことを考える。
男はそのとき、ただひたすら恋しているだけ。

大切なのは、
その男が愛情を継続できるかどうか。
生活するのはとても現実的なことだから。
日本にもよくいるんじゃないかなあ──
なんとかうまく関係を続けながら、
男が大人になるのを待ってあげてる女性。
彼を怖がらせないように、
ただひたすら育つのを待っている。

グイド・コンティーニのロマンティックぶりは、
女性にとって危険なものだと思う。
こうしている今も、
世界じゅうのいろんな場所で、
キャンドルの灯りのなか、
ワイン・グラスを傾けながら、
ロマンティックなディナーに酔いしれてる女性が
たくさんいるだろう。
紳士的で優しい相手の男を、
「この人こそが運命の相手だ」って。

『ナイン』では、
「ロマンティックなのは女性、
 男性は現実的」っていう固定観念が、
実は逆だということを証明してる。


(きょうの「デヴィッドが話したこと」は、
 あるインタヴューのときの言葉です。
 実際には使用されなかった部分ですが、
 おもしろいと思った話の部分を抜粋しました。
 次回は初日の舞台のようすや、
 28日のアフタートークをレポートしながら、
 デヴィッドの話をつづけます!)


2005-05-27-FRI
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