ニュースのご近所。
あの出来事、近くで見るとこんな感じ。

第61回 原発とマルチ商法のご近所。


みなさん、こんにちは。
今日の「ニュースのご近所」は、ちょっと
マジメなものばかりを、お届けいたしますね。
まずはじめは、匿名のおたよりではありますが、
とても重要な指摘のメールなんです。
原発関係者の方から、到着いたしました。どうぞ。







・東京電力に始まって各地で
 原発が停止して緊急の調査点検と報じられています。
 マスコミが電力会社のお偉いさんを追求すると、
 末端では下請け会社の作業員が
 24時間体制で作業をし、放射能を浴びます。

 迅速な対応を要求されると
 それだけ作業員の被曝は増加します。
 追求するマスコミと受ける偉い方々は
 放射能を浴びて
 昼夜交代勤務で作業することはありません。
 調査点検の技能者は限られています。
 技能者が線量オーバーになると
 調査点検はストップします。
 でも、マスコミはそれを許しません。
 死ぬまで線量を浴びろと
 記事の行間で要求します。
 結果として線量計を外して作業します。

 こいうことが判明するとまたマスコミは批判します。

 このくらいの損傷は問題ない、
 大丈夫と、本当は言いたいのですが、
 100%の安全は誰にも言えないし、
 説明するのは200%の労力でも無理。
 問題を承知の社員の誰かが
 家族を原発の近くから遠く離れた東京にでも
 疎開させたということは一例もないはずです。
 それを問題がない証拠のひとつと
 捕えてくれると助かるのですが、
 そんなマスコミはない。

 もう一度言います。
 マスコミが騒ぐ度に、
 末端で作業をして被爆しています。
 (匿名希望)






1回テレビや新聞で騒がれるたびに、
かならずどこかで、技能者が被爆をしている……。
どの立場に身をおくかによって、
言うことはずいぶん違ってくるんだなぁと思って
メールを拝読いたしました。
貴重なおたより、ありがとうございます。

第54回のこのコーナーで、
「わたしのダンナが、
 マルチ商法にひっかかりつつあるんです」
というメールをお届けしたところ、
ものすごい反響がありました。

ご本人のプライバシーがあるので
ここではとても紹介できないというほど
詳細で壮絶なお話から何からたくさん届きまして、
たしかに、かなり一般の人たちに
近づいているものなのだなぁと感じさせられました。

今日の「ニュースのご近所」は、ラストに、
3通の、割と長いメールをご紹介したいと思います。
すべて、マルチ商法のご近所から届いたメールです。
では、どうぞ、お読みくださいませ。







・今、マルチ商法に
 ダンナがハマりそうな方の記事を読みました。
 私も似たような立場にいます。
 その人は私の初恋の人でした。
 ホントに好きで好きで仕方がない人でした。
 私はもう結婚もして一児の母親ですが、
 カレと今年、再会しました。

 前にもらったメ−ルで、
 その商売をやってたのは知ってました。
 当然、話す事はその事ばかりです。
 「自分の夢を叶えながらも世界が良くなる」
 「世界の苦しんでる人たちに何かが出来そうだ」
 「今がチャンスなんだ」
 「ここで辞めたら負け組になる」
 ……他にもいろいろ言ってました。

 例えて言うとその時のカレは
 『やたらとアッパーな人』でした。
 こんな人間に意見するのは無駄だと思い、
 ただただ相槌を打って話を聞きました。
 でもその裏で調べに調べました。
 とにかく!こんなインチキに騙されてるバカ(彼)に、
 「負け組」とか「いい話なのに…バカじゃねぇの?」
 って、言われるのがたまらなかったからです。

 アタマから否定されると、人は心を閉ざします。
 私はカレがそれにハマってしまった
 バックグラウンドを理解してから
 (マルチを理解するのではないです!決して!!)、
 「でもね、思想を語るだけで成り立つ商売ってどうよ?」
 「(セミナーで不手際があった時)
  ああいう事態になっても返金しないって、
  商売やってる人間にあるまじき行為。
  ましてや年収1000万なんでしょ?ケチくさくない?」
 ……などなど、
 世間の意見ではなく、自分の意見を言う事にしています。
 今の御時世に、その商売は、
 インスタントに夢を与えてくれるようですが、
 だけど、夢ってモノは自分で見るから夢なんですよね。
 そしてそれに答を出すのは自分なんですよね。
 誰かのやり方で答を出しても、
 おんなじ結果が待っているだけです。

 彼がどう言おうが、そう思います。
 (め)



・ダンナさんが、マルチ商法にダマされそうに
 なっている方のお話を読んで、
 いたたまれなくなりました。

 わたしは3年程前に独立し、
 フリーで仕事をしています。
 当時は「ベンチャー」という言葉が
 ものすごく勢いをもっていたときで、
 フリーも含めた若い経営者たちは、
 とても鼻息が荒かった。
 でも、若い経営者たちのほとんどは、
 経験も力もお金もなく、
 てっとり早くお金になりそうなことに、
 すぐに手を出してしまいがちでした。
 マルチ商法もその1つです。

 なんだか新しい匂いのする言葉を駆使して、
 「夢」を語る勧誘の人達に
 次々とひっかかっていく様は、本当に見事というか、
 情けないというか、とにかく圧倒的でした。

 とりわけここは田舎ですから、アメリカの
 ビジネススクールで学ぶような言葉を羅列されると
 コロッといくタイプが多かったように思います。
 そのうち数少ないクライアントの1つが、
 ずぶずぶとはまってしまい、
 あからさまな勧誘をしてきました。
 はっきりと断ると、
 当然のように仕事がこなくなりました。
 その会社は、後に倒産したようです。
 もっと困ったのは、大きめの仕事を回して
 くれていた会社の社長がはまってしまったときです。
 なんとか消費アドバイザーという人に相談しましたが、
 マルチ商法というのが
 今ひとつはっきりわかっていなかったようで、
 いいアドバイスは得られませんでした。

 結局、自分でいろいろ調べて、
 結論を出し、はっきり断りましたが、
 やっぱり仕事がこなくなりました。
 マルチ商法というのは、別名、
 「しがらみ商法」ともいいますが、このときほど、
 「しがらみ」を痛感したことはありません。
 わたしはスタッフを抱えていませんから
 自分がひもじい思いをするだけですみますが、
 スタッフを抱えているところは、顧客企業から
 勧誘されたら、中々断れないだろうと思います。

 ダンナさんが今までどんな仕事をされてきたのか
 わかりませんが、「マルチ商法」とは
 結局、商品を売らなければお金にならないのです。
 どんな商品でも、この不景気の中で
 売るということはたいへんなことです。

 それから、たいていの場合、勧誘をしてくる人の
 言うことと、その商品を作っている
 メーカーの人の言うことは違っています。
 ダンナさんが
 「こんなにいい商品なら売れるに違いない」
 と思ってらっしゃるなら、一度
 メーカーに問い合わせてみてはどうでしょう?
 実際には、類似の商品とそんなに変わりなかったり
 することが多いようですよ。

 夢中になっている人の目を覚まさせるのは
 とってもたいへんなことだと思います。
 消費者生活センターなどに相談してみてはいかが?
 ちなみに、わたしは「悪徳商法マニアックス」
 http://www6.big.or.jp/~beyond/akutoku/"
 というホームページを参考にして、
 勧誘を撃退してきました。
 (えむ)



・私の弟はアメリカから来た洗剤や浄水器、
 サプリメントなどのある会社に引っかかって
 もう6年目になろうとしております。
 日本では(法律上は問題ないらしい)
 「マルチまがい」と呼んでいるようです。

 「2人目の子どもが産まれておめでとう!
  産院に連れてって!」
 と乗り込んだ彼の車後部シートに
 そのマニュアル+カタログを発見した時のショックは、
 今だありありと思い出せます。

 なぜ?
 なぜうちの弟なんだろう?
 他にもオバカはいっぱいいるのに。

 たまたま彼のそばに関係者が複数いた事。
 これが最大原因です。
 こんなご時世ですから、将来には不安だらけ。
 子供の事。親の世話。
 さらには、誰だって「もっといい生活」がしたい。
 夢とかキレイな日本語は、
 こんな時(だます時)本当に便利です。

 「子供のためにとか言ってるけど
  アンタは自分がやりたいだけよ」
 泣きながら話す私に返ってきたのは、
 「誤解をうまく解けないみたいだから、
  本部の人間に説明してもらうよ」
 でした。それは私の幼馴染の人間でした。

 年老いた親にあんまり深刻な説明は出来ません。
 何とかしないと、だけ言いました。
 「いつか目が覚めるから、気が済めばいいから」
 母はそう言いました。
 「あの子のする事にアンタが口出ししないで。
  お父さんには黙ってて」

 それからどんな事があったかは、
 いくらでも事例がでています。
 幸いにして破綻はありませんでした。
 夫婦で始めてしまいましたが
 とりあえず悲惨な事にはなりませんでした。
 が、セミナーを繰り返し受けて行く事で、
 以前の彼は死にました。
 「死んだ」とは大げさですが、
 そう思う事で私は自分を納得させています。
 今あそこにいるのは宇宙人に体を乗っ取られた弟。義妹。
 私の好きだった彼なりの「いい所」は
 どこか奥深くに封印されているだけ。
 いつかきっとまた赤い血に戻るはず。

 今では組織とは距離を置いているようですし、
 どちらかと言えば落ち着いた、
 うまい付き合い方をしているようです。
 でも以前の(封印されてしまった)弟は戻りません。
 知らなかった昔には戻れないのです。

 専門家が練り上げたマニュアルに
 素人が対抗できる訳がありません。
 反対すれば決意が固まるばかり、
 黙っていれば容認したと同じ……。
 悪いのはその組織なんです。
 弱い人間の暗い部分に付けこんでいいはずがない。
 オバカなのは認めますがオバカだからと
 引きずり込んで良いわけはありません。

 公的機関に相談するのは一策ですが、事によると、
 もっと上の、例えば議員さんのレベルまで
 力が及んでる事もあります。
 私は弟に「こんな人たちも認めてるんだよ!」と
 リストを見せられ、それ以来CD買えないし、
 TVも楽しめないし、選挙も馬鹿馬鹿しくて
 行かなくなりました。本も読んでて半信半疑でして……。
 (匿名希望)






3通のどのメールからも、
イタさを直に感じている人の持つ、
「人間のよわさについての、ある程度の諦観」
のようなものを感じました。

悪徳商法について、それほど知識のなかった
わたくしほぼ日スタッフとしては、ただただ、
メールをじっくり読んで「なるほどなぁ」と思うよりほかに
感想を言いようがないのですが、
さまざまなメールを、ほんとうにありがとうございました。

では、明日の「ニュースのご近所」でまたお会いしましょう。


さまざまな、日本国内や海外からの
ニュースのご近所のおたよりは、
件名を「ご近所ばなし」として、
postman@1101.comまで、どうぞーー!!

2002-09-30-MON

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