ニュースのご近所。
あの出来事、近くで見るとこんな感じ。

第59回 一瞬で、一年分の生活費を盗まれる。


みなさん、こんにちは。

「かなり多額のお金を、一気に盗まれてしまった」
という被害のメールが、到着しています。

このメールをくださった方の住む地域は、
日常的に「爆撃のお知らせ」が流れたりと、
ただでさえ、ニュースのご近所なのですが、
「それにしても、一年分のお金は大きいなぁ」
と思いながら、メールを拝読しておりました。

さっそく、紹介しますね。







・先日、盗難に遭いました。
 ちょいと目を離しただけで
 カバンごと持っていかれ、
 30分後に銀行口座を空にされました。

 一年分の生活費が消えたことになります。
 一瞬の不注意で一年分。
 憤怒と後悔の念で震えがくるほどです。
 日本では、
 カバンやバッグで席取りなどしますよね。
 そんな「のどかさ」が切実に恋しい今日この頃。

 もともと、いま私が生活する地域は
 独立テロの本拠地です。
 2年間の間に、爆発音を聞くこと数回。
 大学の講義中にサイレンが鳴り響き、
 爆弾設置予告で避難させられた経験もあります。
 その時は今に吹っ飛ぶのではないか、
 と膝がガクガク……。それでも、
 「折角講義がなくなったのだから、
  お茶でもしていかない?」
 と慣れきった地元民を見ていると、
 青くなった自分がバカみたいでした。
 「爆弾より交通事故で死ぬ確立の方が高い」
 と言われて、妙に納得してしまったのですが。
 
 しかし、よく考えると、ここでは
 「怖がる」のが「普通」の反応ですよね?
 海外生活では、ときどき、
 価値観の基準が分からなくなります。

 ふだんの暮らしは、ですが……。
 私の住んでいる国では、友人のお宅を訪問すると
 先ず最初にトイレから台所まで隅々まで案内されます。
 これ、恥ずかしいんです。
 特に夫婦の寝室を見せられると
 普段は乏しい想像力が
 「あっ!」と羽ばたいてしまいます。

 私が過剰反応しているのか、現地人が鈍いのか。
 ちなみに、うちはソファベッドなので、
 客人がある時はソファの形にしています。
 皆、寝室はどこなんだろうと思っているのでしょうが、
 質問されたことはありません。
 ……なんだ、やっぱり恥じらいはあるんじゃない。
 (レオ)






盗まれた時の様子といい、
大学講議中のサイレンといい、
「海外生活では、ときどき、
 価値観の基準が分からなくなります」
という感慨が、伝わってくるメールでした。

そして次は、
「ある事件の加害者の身内なんです」
というメールを、お届けしたいと思います。







わたしには、
 通り魔事件の加害者となった親戚がいます。
 20日に、1審の判決が出ました。

 犯人の男は、母のいとこの子どもです。
 隣町だったこともあり、
 保育園で預かってもらえるまで、
 彼をうちで預かっていたこともありました。

 そのときの写真があり、わたしが、
 お座りをできるかできないかの彼を、
 5歳くらいのわたしが抱いて座っているとか、
 彼の重みに負けて、ひっくり返っている瞬間のとか、
 そのショットを、よく覚えています。

 彼の親2人は、学校の教師でした。
 母のいとこは、はやくに母親を無くし、
 あとからきた義理の母親と、腹違いの妹と、
 そして、養子の夫と暮らしていました。
 わたし達に、恩義を感じていたのか、
 盆や暮れや、わたしの進級、進学などに、
 必ず挨拶に、夫婦で見えました。

 そんな小さい頃に会ったきり、
 彼と会って話したことはまったく無いのです。
 でも、可愛かったことだけ頭にあります。
 だから、わたしは、
 「まさか彼が」と思うのです。

 実際、被害に遭われた方々は、
 寝耳に水状態のこの忌まわしい事件に、
 怒り心頭していることは、想像できます。
 どちらも、気の毒でなりません。
 何の力も無いけれど、
 裁判の行方を、気にしています。

 わたしの知る、
 可愛い赤ちゃんだった彼を思い出すにつけ、
 30余年の間に何があったのか、
 悲しさをそんなに溜め込んでいたのかと、
 考えずには、いられません。

 そして、これをきっかけに、
 世間で起こる事件を聞いても、
 「加害者ばかりを、
  したり顔で裁くような発言」
 は、できなくなりました。

 (くまこ)






最後の
「したり顔で裁くような発言はできなくなりました」
という言葉が、とても印象深かったです。

時に恐ろしい暴力をはらむ事件は、
特殊な、まるで違う種の動物が行うものではなく、
ふつうに暮らしている人の、
ほんの延長線上にあるのかもしれないなぁと、
このメールを読んでいて、思いました。

では、次回のこのコーナーで、またお会いしましょう。


さまざまな、日本国内や海外からの
ニュースのご近所のおたよりは、
件名を「ご近所ばなし」として、
postman@1101.comまで、どうぞーー!!

2002-09-28-SAT

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