第2回
イケメンたち、おさえてます。
そして大女優から国民的美少女まで。
──
えー、いつものことではありますが、
話がおかしな方向に行きっぱなしなので、
意識して戻しましょう。
森下佳子さんが脚本を担当する
2017年の大河ドラマ、
『おんな城主 直虎』について語る場です。
あやや
わかりました。
それでは、個人的な思いも含めまして。
あの‥‥言ってもいいですか?
──
言うんでしょ。
荒井
言うんでしょう。
森下
どうぞ、どうぞ。
あやや
『おんな城主 直虎』の魅力を語るうえで、
この要素は欠かせません!
このドラマ、いい感じの
イケメンたちがそろってます!
荒井
きましたね。
森下
うん。
あやや
とりわけ、中心にいるこの4人!
三浦春馬さん、
柳楽優弥さん、
菅田将暉さん、
高橋一生さん。
これは、森下さん‥‥いいですね!
森下
いいでしょう?
あやや
これは、誰と誰がくっついて、
誰と誰がいつ死ぬんですか?
──
そういうことを訊くんじゃありません!
荒井
いま、ふつうに本気で訊きましたね。
あやや
私、推理小説、
最後から読んでもぜんぜん平気。
──
「平気」じゃねーよ!
1年のたのしみを奪う気か。
荒井
危うく、巻き添えになるところだった‥‥。
あやや
まあ、ともかく、いまをときめく
4人のナイスなイケメンが
キャスティングされてますけど、
私、個人的に注目は柳楽優弥さん!
『ゆとりですがなにか』の
まりぶも記憶に新しい。
荒井
「おっぱいいかがっすかー」のまりぶ、
よかったですねー。
あやや
「おっぱい」よかったです!
「おっぱいいかがっすかー!」って。
「おっぱいいかがっすかー!」って。
──
あやちゃん、NHKの食堂だから。
あやや
しかも柴咲コウさんと
共演っていうのがいいですよね。
なんていうか、その組み合わせの「濃さ」!
森下
うん。
あやや
柴咲コウさんと柳楽優弥さん、
言ってみれば、
餃子とラー油! みたいな?
森下
うん?
荒井
ぎょ、餃子とラー油?
──
どうして料理と調味料にたとえるんだ。
ふつうにおいしそうじゃないか。
あやや
え、なんでなんでなんで?
ラー油だよ? 辛いやつだよ?
──
半端だろう。
森下
「このふたりの組み合わせは
 いってみれば、
 餃子とシューマイですね!」
って言うんだったら。
荒井
そうそうそう。
あやや
あ、そうかそうかそうか。
でもね、餃子とラー油だとね、
どっちも個性があるのに、
ふつうにおいしい組み合わせでもある、
っていうようなことが‥‥。
荒井
だから、それだとふつうじゃないですか。
森下
ラー油が調味料なのがよくないと思うんだ。
あやや
でも、食べるラー油とかも
流行ったじゃないですか。
──
もういい。
餃子とラー油の話は、もういい。
あやや
で、またいい味を出してるのが、
菅田将暉くんですよね。
森下佳子作品でいえば、
『ごちそうさん』の長男ですよ。
森下
そうそう、泰介(たいすけ)。
やってもらった。
あやや
『ごちそうさん』のときは
なかなかいい子が出てきたぞ、
くらいの感じでしたけど、
いまやあちこちで引っ張りだこ。
ここ数年で菅田くんを取り巻く状況が
一気に変わりましたよ。
荒井
めちゃめちゃ売れてますよね。
森下
もう、テレビで菅田くんを
見ない日はない、ぐらい見るよね。
荒井
そういうコンセプトなんですかね。
事務所のほうも、
いまはどんどん出す、みたいな感じで。
森下
というよりも、ご自分の意志みたいです。
いまはとにかく
なんでも演じてみたい、っていう。
あやや
演技モンスター?
森下
演技モンスター。
とにかくなんでも演りたくて演りたくて。
あやや
菅田将暉さん、何年か前に
『闇金ウシジマくん』に出てたんですけど、
歯とかまでぜんぶ汚して出てくるんですよ。
すごいですよね。
役になりきって、つくりこんで、
演技モンスターですよね。
森下
うん、役のためなら、そういうことも
まったく気にしないというか、
たのしさしかないと思う。
荒井
柳楽優弥さんと菅田将暉さんっていう
いわゆるキツ目というかツリ目のふたりがいて、
三浦春馬さんと高橋一生さんっていう
ちょっとマイルドなふたりがいるのが
バランスいいですよね。
──
我々、その三浦春馬さんとも、
今日は遭遇がありました。
あやや
そう!!
しかも、なんですか、あの! クァ!
ふらりと、紙コップ、ドヒャ!
──
あやちゃん、変な声が出てる。
あやや
だってあんなところにふらりと!
荒井
役者さんがカツラをつける場所を
見学していたら、
私服の三浦春馬さんがふらりと
そこに現れたんですよね。
あやや
そうなの、そうなの!
なんですかなんですかあの清潔感は!
加えて透明感! 浸透感! 充実感!
──
落ち着けって。
あやや
かっこよかったなーー。
荒井
そして、紙コップをくわえてました。
あやや
そ・う・な・の・よーーー!!
紙コップをくわえてもかっこいい、
ってあれ、なんですか。
なんなんなんですか!
手ぶらで紙コップくわえて、
かっこいいって、どうなってるんですか!
森下
あの状況、ちょっと説明が難しいね。
あやや
ご安心ください。
‥‥サユミ!
(「サスケ!」と呼ぶ調子で)
サユミ
はっ。描きますとも。さらさらさら。
──
サンキュ−、サユミちゃん。
あやや
はーー、しかし、
三浦春馬さん、かっこよかった‥‥。
森下
みんな好きよね、三浦春馬くん。
かっこいいし、いい役者さんだし。
荒井
紙コップくわえて登場、
っていうのはよかったなー。
だって、まったく狙ってないっていうか、
ほんとにふらっと来たわけですよね。
それで、あのかっこよさと感じのよさ。
あやや
紺のセーターがちょっと上品でね。
中のシャツは青? 赤が入ってた?
森下
シャツ、紫じゃなかった?
──
紙コップは白でした。
あやや
あーー、ほんとに
あの紙コップは忘れられない。
今日、私、寝るとき、まぶたの裏に
最後に思い浮かぶのは、あの紙コップです。
──
本人じゃなくて紙コップなのか。
荒井
そういえば、もうひとりのイケメン、
高橋一生さんも、さっきニアミスしたんですよ。
あやや
うっっっそ! いた?
森下
写経の練習してたりしたよ。
あやや
ああああ、ほんとですか!
なんでだ、気がつかなかった!
荒井
こっち向いてずっとしゃべってたとき、
後ろ通りましたよ。
あやや
くぅーーーーー。
無念‥‥森下さん‥‥
こんな私に‥‥
なにか‥‥高橋一生さん情報を‥‥。
森下
高橋一生さんはね、声がいいんですよ。
たまらん。
しかも、マイクを通したほうがいいという
マイク愛され声だと
音楽の菅野ようこさんが言ってました。
あやや
はあああ、声!
そうですよねー! いい声ですよねー!
──
『シン・ゴジラ』に出てた人だよね。
森下
そうそう。
あやや
出てた、出てた。
森下
あと、あややと私が大好きな
『民王』っていうドラマで
すごくいい脇役を演じてました。
あやや
貝原さんだ!
荒井
あ、思えば、
菅田将暉さんと高橋一生さんは
『民王』コンビですね。
森下
私の『民王』好きが
このへんにじわっと表れてるかも(笑)。
──
イケメン以外に目を転じてみましょう。
あやや
もちろん豪華キャストですよ。
たとえば、浅丘ルリ子さん!
森下
かっこいいです。
あやや
ほんとにかっこいい。
森下
もう、浅丘さんがいらっしゃるだけで、
こっちの背筋は伸びるんだけど、
ご本人はいたって気さくな方で、
周囲をパッと明るくするんですよ。
あやや
はー、そうなんですね。
森下
そういうところがまた、かっこいいですよね。
あやや
あと、大抜擢というと失礼ですけど、
いい意味で意外なキャスティングだったのが
春風亭昇太さんが今川義元に!
──
昇太さん、ぜんぜん印象が違うね。
森下
この公家っぽいルックスが、
けっこう似合うんですよ。
荒井
一瞬、誰だかわかんなかった。
あやや
昇太さんが演じるっていうことは、
今川義元はけっこう軽妙な感じ?
森下
ええとね、それがね、昇太さん、
じつは‥‥○※△×#◇なんですよ。
あやや
あははははは。
荒井
それはいいですね(笑)。
──
それもある意味、昇太さんっぽい。
あやや
で、尾上松也さんが
昇太さんの息子役なんですね。
森下
はい、今川氏真ですね。
今川氏真は、ぼっちゃんなんですけど、
私、けっこう思い入れがあって。
今川家って、桶狭間で負けたことばっかり
みんな覚えているんですけど、
そこから10年以上も家を存続させてるんです。
大スターの父ちゃんが死ぬと
たいてい、お家って潰れちゃうんですけど、
今川氏真は、ぐずぐずながらも
10年近くお家を維持した。
しかも、今川家は戦国時代をしっかり生き延びて
江戸幕府でずーっと要職なんです。
歴史上のいろんな物語では、
あんまり扱いのよくない今川家なんですけど、
戦乱を生き抜く智恵があるわけですよ、
そのぼっちゃんが生き抜く様が
かっこ悪くてかっこいいのです!
‥‥って、語りすぎました。
あやや
いえいえいえ、おもしろいです!
──
やっぱり、そういう歴史への見解も、
資料にあたって脚本を書いているうちに
深まっていくものですか。
森下
そうですね、おもしろいですからね。
今川氏真の役はお話が進むうちに
ずいぶん変化していきますので
そのあたりはたのしみにしてほしいです。
あやや
あっ、そして、びっくり!
私、阿部サダヲさんが
出るのは知ってたんですけど、
徳川家康の役なんですね!
森下
そうなんです。
家康は幼少期を今川家で人質として過ごすので、
物語にわりと早くから、
具体的には13歳のころから登場するんですけど、
阿部サダヲさんには、
13歳の役からやっていただきます。
荒井
え?
あやや
13歳?
森下
はい。ほかの役者さんは
だいたい子役が子ども時代をやるんですけど、
阿部サダヲさんだけは子役なし。
13歳から演じてもらいます。
荒井
ふははははは!
あやや
おもしろい、おもしろい!
森下
阿部さんならできるでしょ、ということで(笑)。
──
(13歳の役を演じる阿部サダヲさんを想像して)
‥‥ああ、できるわ。
荒井
できますねぇ(笑)。
森下
スタッフも満場一致で、
「うん、できる!」ということで決まって。
ご本人は
「俺、今年もう46なんですが、
 なぜ俺にだけ子役がつかないのか!」
とおっしゃってました。
あやや
すっごい、たのしみ!
わたしいま『真田丸』観てるから、
家康のこと嫌いなんですよ。
でも、いま好きになりました。
森下
家康は書き方でぜんぜん違いますからね。
うちの家康は、基本的には臆病者で、
凡人で、昔は今川に頭を押さえられ、
うまくやったと思ったら、
今度は、信長に頭を押さえられ‥‥
というような家康なので、
まあ、要するに、阿部サダヲさんです。
荒井
(笑)
あやや
上手でしょうねぇー。
森下
現場、めちゃめちゃおもしろいらしいです。
荒井
かなりたのしみになりました。
あやや
で、家康の正室である
築山殿を演じるのが菜々緒さん。
これは、けっこう悪女の役?
森下
築山殿がどういう人だったかというのも
じつは諸説があって、
陰謀を企てた悪い女だったという
これまでの説がウソだったんじゃないか、
ということも言われているんです。
で、私は太くて強い、
とびっきりの美女にしたかったので、
菜々緒さんにしてくれ、とリクエストしました。
ご本人もね、ものすごくきれいで
ちょっと近寄りがたいイメージがありますけど、
家族とかおばあちゃんが大好きな、
家庭的な人なんですよ、じつは。
あやや
へーー、そうなんですね。
荒井
いままで大河って出てないですよね。
森下
今回がはじめてなんです。
で、大河に出ることが決まって、
おばあちゃんと手を取り合ってよろこんだという。
でも、大河の会見に出るときは、
全身シャネルなんですけどね。
あやや
いいギャップです(笑)。
荒井
いま、資料を見ていて気づいたんですが、
脇役に『あまちゃん』のトリオがいますね。
杉本哲太さん、吹越満さん、でんでんさん。
あやや
ほんとだ、『あまちゃん』トリオだ!
森下
そうなんですよ(笑)。
まあ、もちろん『あまちゃん』だから
というわけではなく、
たとえば杉本哲太さんは、
『天皇の料理番』でお父さん役を
やってもらって、とてもよかったので。
あやや
あー、そうだ。哲太さん、
今回も主人公のお父さん役なんですね。
森下
そうなんです。
小林薫さんもそこから。
私、憧れてる話があって。
『カーネーション』のときに
渡辺あやちゃんが
「(実話ベースなので)善ちゃんという人は
 そういう人なんだろうけど、
 どういう人なのかいまひとつつかみきれない。
 でも、こういう人なんだから
 もうそのまま書いちゃろ」
って小林薫さんに投げたら、
ガチャポンみたいに善ちゃんが出てきたって。
「私もそういうの体験してみたい!」と思って、
芯になることだけ決めて、
あとはまー、いい加減なこといっぱい言う
和尚さんをやってもらってます。
でも、絶対、ガチャポンで出てくると思うんだ!
あやや
頼りになりそうです、小林薫さん。
荒井
で、お母さんが財前直見さん。
財前さんも『ごちそうさん』組ですね。
森下
そうです。
おもしろいのが、財前さんと柴咲さんって、
演じてみると「親子感」あるんですよ。
あやや
あ、そうかも!
目が大きくて、きりっとしてて。
杉本哲太さんと財前さんの子どもが
柴咲コウさんって、
いい感じの「家族感」があります。
森下
でしょ?
あやや
しかし、さすが、大河ですねー。
ほんと、豪華キャスト。
相関図の端のほうに書いてある人も
だいたいメインを張れる人ですからね。
永田さんでも知ってる人ばっかり。
──
いや、ほんと、そう。
ムロツヨシさんとかいますよ。
森下
ムロさん、じつは、いちばん最初の段階で
キャスティングされていました。
瀬戸方久というやり手の商人の役なんですけど、
この人が出てくるどの小説を読んでも、
「これはムロさんしかいないだろ」
みたいな感じで(笑)。
荒井
ムロさんは最近すごいですね。
『LIFE』のコントもおもしろいもんなぁ。
森下
荒井先生的には、
高橋ひかるちゃん、どうですか?
オスカーの国民的美少女のグランプリ。
15歳で大河ドラマデビューっすよ。
荒井
あ、知ってます。
透明感がありますよね。
この人、きますよ、たぶん。
森下
きますか。
荒井
きます。
──
おお、荒井先生のお墨付きがいま。
あやや
くるんだ。
森下
なかなかインパクトのある登場をするので、
期待してください。
和顔の美少女。かわいらしいです。
あやや
往年の大女優から、15歳の国民的美少女まで。
すごい顔ぶれですねー。
荒井
そして、語りが中村梅雀さん。
森下
そうなんです。
あやや
あー、いいですね。
森下
梅雀さん、
『篤姫』で井伊直弼を演じられていたので、
そういうことも踏まえて。
あやや
ああ、そうだ、そうだ。
荒井
粋なはからいですね。
森下
ええ(笑)。


(もう1回、つづきます)
2016-12-30-FRI

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