はじめての中沢新一。
アースダイバーから、芸術人類学へ。

とんでもなく大きい視野のイベントができました!
友人たちが関係者席に座りたがってタイヘンです。
タモリさんと、糸井重里の依頼で、
中央大学教授の中沢新一さんが、登場するんです。

30年間の研究を、徹底的に濃縮し、
糸井重里に邪魔されながら、
タモリさんに突っこまれながら、
旧石器時代から現在につながる人間たちを、
そして未来に向けての人間たちの希望を……
たぶん、目の前に、想像させてくれるはずです。

「対称性、という道具を持って世界を見るうちに、
 自分の思考の中でなにか決定的なことが起きた」

縄文地図を手に東京を歩く『アースダイバー』や
全5巻の大傑作『カイエ・ソバージュ』の内容を、
いい会場、きれいな座席、長丁場で、語りつくす!

イベントがどんなにおもしろくなるか、
想像できそうな、打ちあわせの会話を、
「ほぼ日」では、連載してゆきますね。

第7回 資本主義が生まれる瞬間
タモリ 縄文の墓の跡は
残っているんですか。
中沢 骨は溶けちゃってるんです。
壺に入れて埋めてますから、
壺は残っているんですよね。

簡単な埋葬なんです。

三内丸山遺跡というのは、
三十センチぐらい掘って
埋めるだけだから、
体が出ている状態で……
そういうやりかたなんですけど。
バリ島なんかも、そうだったよ。

バリ島の原住民は
湖のほとりに墓が十三個あって
その上におくだけなの。
風化していきますよね。
十四人目の死者が出ると、
十三人目の死体を湖に捨てちゃう。
タモリ 定員が決まってる。
中沢 定員十三人と決まってるんです。
糸井 臨時の場所なんだね。
中沢 そうそう、湖にいくまでの。
タモリ 簡単な埋葬の時代と
古墳を作る埋葬の時代は、
死の認識が変わりますよね。
中沢 根本的に変わるんじゃないですか。
タモリ 変わりますよね。
死の認識がはっきりするということは、
おおきな意味でいえば、
資本主義のもとがあるかもしれませんね。
中沢 そのとおりですね。
死の認識がなければ
資本主義は動かないですからね。

縄文時代は
村があって、
村は円環じゃないですか。
その真ん中に、埋葬していたから
死体は身近ですよね、夜になると
いっしょにおどるわけで。

それがやはり墓が離れると……
資本主義になってきます。
タモリ 縄文のころと、
大規模な古墳が
出てきた時代とは
明らかに
意識がちがうってことですね。
中沢 そうですね。
弥生のころ、
中国からきた連中は、
イヤだイヤだと言いつつも
国家を知っていますからね。
糸井 うん、逃げてきたわけだから。
中沢 縄文の人たちは
その観念がゼロですから。
アメリカインディアンも
ゼロでしたけど……。

アメリカインディアンの
ジェロニモが戦争に勝った時、
ジェロニモを王にすればいい、
という案が出るわけですよね。
ジェロニモもその気になったんです。
だけど翌朝、
インディアンの部族が
連合を解いて帰っちゃうんです。
そんなもんを作るのはイヤだと。
で、インディアンが負けちゃう。
タモリ アメリカ的な話ですね……。
そう考えると、
縄文から弥生に移る時って、
おもしろいですよね。
中沢 ええ。
資本主義が
生まれるか生まれないかの。
糸井 中沢くんの考えによると、
また、縄文に
近づいていくんだよね、
おおきく孤を描くように。
中沢 うん。
糸井 案外、すぐかもしれない。
それがおもしろいと思う。
中沢 そのきっかけを作ったのが
"9.11" だとしたらおもしろい。
あれは自壊の方向ですよね。

主義はいろいろあるけれども、
ヨーロッパでは
一神教がベースになっちゃってる。
だけどイスラム教のほうは、
「一神教の中の経済的負け組」
ですから、そのあいだで
激突が発生しちゃうのは
しょうがないんですよね。


(明日に、つづきます)

2005-09-28-WED

(C)Hobo Nikkan Itoi Shinbun