NAGATA
怪録テレコマン!
hiromixの次に、
永田ソフトの時代が来るか来ないか?!

第38回 テレコマン、宇宙へ行く 〜その2〜

非常に舞い上がった状態にある
僕のお相手をしてくださったのは、
宇宙開発事業団の中川人司さんという方である。

広い会議室に僕が入ると
ブラインド越しの光を背に中川さんは立ち上がり、
にこやかに挨拶して座ると
机上にすでに作動しているテレコを見た。
中川 あ、もうスイッチが入ってしまうんですね。
永田 あ、はい、もうすぐに回してしまうんですよ。
中川 うっかりできないですね(笑)。
僕は座り、とりあえず落ち着くことにして、
ここに来た簡単な経緯をお話しした。
中川さんはまず自己紹介から始めた。
中川 私、所属が有人宇宙活動推進室と申しまして、
宇宙飛行士の技術サポートでありますとか、
宇宙飛行士の搭乗権の獲得などを担当しています。
要するに、宇宙飛行士にいちばん近い場所で
活動しておりますので、
宇宙飛行士のことであれば、
なんでも聞いてください。
永田 はい。えへへへへ。
またしても耳を疑ってテープを何度も巻き戻してみたが、
そこで僕はたしかに「えへへへへ」と笑っている。
まことにもって情けない話である。
永田 まず僕、宇宙飛行士を公募しているという
事実にかなり驚いてしまいまして。
といいますのも、宇宙飛行士というと、
アスリートに近い感覚でとらえてまして、
なんかこう、募集するようなものではなく、
どこかで狭き門を通った人が
スペシャリストとして存在しているのかなと
なんとなく思ってたんです。
中川 ああ。過去の日本人宇宙飛行士は、
すべて公募した中から選ばれています。
いままでに4回、募集選抜してまして、
だいたい2〜3年に1回くらいのペースですね。
書類選抜から始まって、英語検定、
一次選抜、二次選抜、三次選抜とあるんですけど、
まずは、その応募条件からお話ししましょうか。
永田 お願いします。
中川 いちおう、英語ができることは必須ですが、
この資格がなければいけないということは、
とくにないんです。
ええと、こちらが応募条件の一覧になります。
永田 はい、ホームページで拝見しました。
中川 あ、ご覧になってますか?
永田 はい。穴があくほど。
中川 (笑)。ざっと説明しますね。
まず「日本国籍を有すること」。
それから「大学卒業以上」、
しかも「自然科学系」という
理系の分野の卒業以上であること。
永田 あの、僕は文系なもので、
そこでまずダメなんですけど、
つまりこれ、文系の人は、確率ゼロ?
中川 いままでは少なくともすべて理系の人ですね。
なぜかというと、
宇宙飛行士はパイロットとは違うんですが、
飛行機でいうところの機関士とか、
そういう技術的な仕事をすることが多いんです。
それで理系の素養が必要だということで
こういう規定を設けています。
ただ、今後はですね、人文科学系の人とか、
教師だとか、芸術家だとか、そういう人も
ぜひ宇宙に行ってほしいと考えていますので、
今後応募条件が変わることは十分考えられます。
永田 なるほど。
中川 それから、
「自然科学系の研究開発に
 3年以上の実務経験を有すること」。
ある程度の研究歴、業務経験が必要ということです。
大学院に在籍していた人は、
その期間を業務経験に換算できます。
そうしますと、大学卒業してから
3年は必要ということになりますので、
いちばん若くて25歳くらいということになります。
永田 そうですね。
中川 日本で受かった人ですと、
いちばん若くて28歳くらいになります。
永田 いちばん年上というと、毛利さんですか?
中川 ですね。受かったとき37くらいだったと思います。
永田 実際宇宙に行かれたのは、もっとあとですよね。
中川 そうですね。40代になってからですね。
2度目の飛行は50代でしたけれども。
永田 50代ってすごいですねえ。
なんか、体力的なものがすごく必要なのかと
思ってたものですから。
中川 そうですね。
まあ、業務をこなせる体力があれば、
それほど超人的なものは必要ありません(笑)。
永田 そうですね(笑)。
中川 ちなみに年齢で言いますと、
アメリカでジョン・グレンという宇宙飛行士が、
77歳で宇宙に行ってます。
永田 77歳!
中川 つまり、現在の技術ですと、
肉体的には70代の人でも行けるくらいの負荷しか
体にはかからないということです。
これがアポロの時代ですと、
体にかかる重力が6Gもあったので
宇宙飛行士のほとんどは軍隊出身でした。
いまのスペースシャトルですと……。
永田 3Gくらい。
中川 ええ(笑)。要するに、
ジェットコースターぐらいのGですので、
それほど大きな負荷になるわけではありません。
永田 昔の映画のようにはならないわけですね。
中川 昔の映画といいますと……?
永田 なんか、こんなんなって、
グワーーーッとなって、ガーーーッとなるような。
中川 ああ、そうですね(笑)。
それから、応募条件としては、
「国際的な宇宙飛行士チームの一員として、
 円滑な意志の疎通がはかれるよう
 英語が堪能であること」。
現在、国際宇宙ステーションの公用語は
英語になっておりまして、
すべての宇宙飛行士が英語で
コミュニケーションをとります。
ただ、途中からロシアが宇宙ステーション計画に
参加したんですけど、
ロシアが参加することによって、
だんだん英語とロシア語が公用語というふうに
変わりつつあります。
永田 ええと、公用語というのはどういう経緯から?
中川 国際間の取り決めがありまして、
その文書に当初、盛り込まれていました。
いまもその文書は有効なんですけれど、
実務上は、ロシアのソユーズを使ったり、
ロシアのモジュールが宇宙ステーションに
くっついたりするもんですから、
ロシア語の能力が必要になっています。
永田 はー。あの、素朴な疑問なんですけれど、
たとえば、最初に宇宙に行ったのがイタリア人で
イタリアの宇宙ステーションが最初にできてたら、
宇宙の公用語はイタリア語に
なっていたかもしれないわけですか。
中川 う〜ん、どうでしょうね。
現在はやはりNASAの出資額が多く、
活動の中心になってるもんですから
英語になってるという部分はあります。
あと、まあ、世界の公用語が英語だから
ということもあるんでしょうが……。
永田 なるほど。
とりあえず、いまの宇宙飛行士の応募条件に
ロシア語は入ってないんですよね。
中川 はい。ですが、宇宙飛行士に採用されたあとに、
ロシア語の訓練を行っています。
だいたい週に2回程度、2時間のレッスンを
マンツーマンで受けてます。
永田 あ、そうなんだ。
中川 いままでの日本人宇宙飛行士は
すべてスペースシャトルで宇宙に行ってましたが、
今後ロシアのソユーズを使って
行くこともあるでしょうし
……あ! これは言ってよかったのかな?
永田 あはははははは。
中川 あの、すいません(笑)、これは、
あとで私は原稿をチェックできるんでしょうか?
永田 ご要望があれば、もちろん(笑)。
中川 お願いします。
永田 ひとまず自由にしゃべってください(笑)。
中川 ええ。
そのように、僕にとって至福の時間が始まりました。
取材はまだまだ続きます。


Love & Space!!


2002/02 筑波宇宙センター

2002-03-08-FRI

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