80's
80代からのインターネット入門。
前橋の母Aが、Eメールで原稿を
送ってくるまでの物語。

第10章 レッスン6・そして網のなかに(1)


若い、実用のために使うという人なら、
きっともっと急いでいろんなことを学んでいくのでしょうが
普通の人が、よりよいコミュニケーションのために
インターネットにつながりたいという場合は、
そんなにあわてることはないのだと思うのです。
ミーちゃんが、ゆっくりと着実に、
自分なりのスキルをアップしていこうとする姿勢は、
案外、「途中で投げ出してしまう人」には
欠けているものかもしれません。

また、先生である南波あっこさんの、
思いやりのある指導は、
そういうミーちゃんの姿勢を尊重してくださっています。
こういう師弟関係がうらやましいと、
たくさんの読者がメールをくれます。
ぼくも、うらやましいと思っています。

では、第6回目のレッスンの様子を、
南波先生、レポートお願いします。



なんである、アイデアル(懐かしい!)

間違えた・・・アメデアル。
ミーちゃんレッスンにおける、初めての雨である。

梅雨に雨など「当たり前田のクラッカー」?
あぁ、雨が脳味噌にまで浸透してしまったようだ。

湿った脳細胞と共にお宅にお邪魔するのは気が引ける。
が、しかたない。これも人生のひとこま。
・・・あぁ、相当やられているようだ。

それにひきかえ、
カラッと爽やかなミーちゃんの笑顔。
まるで乾燥機にかかったように蘇る私の脳細胞。

見学者の皆さんの靴がない。
前回の「パン食い競走」がいけなかったのだろうか。
皆さん、お忙しいから、しかたない。
そのうえ、この雨だ。

スリッパに足を入れながら、気を引き締める。

「今、日記をちょっと手直ししてたんですよ〜。
そうしたら、なにやらおかしなことになって・・・」

おっと。
トラブルのお出迎えとは、なかなか粋な計らいだ。
なにせ、トラブルあってこその「先生」だから。

クラリスワークスで書いてらっしゃる、その日記、
「ミーちゃんファイル」。
画面を見ると、
どうやら、その下の方(新しい方)から順番に体裁の
手直し作業をなさっているようだ。

前回、本文を一字分下げて揃えたい、とのご希望により
インデントをお教えした。
しかし、今日については、それを実行されているのだか、
スペースを一字分入れての作業だか、それはわからない。

一目見てわかるのは、とにかく一字分下げて揃える
作業をされているとことだけだ。

「ここに一行あったんですよ、さっきまで。
それが、どこかこの辺に触れたとたん消えちゃって」

あぁ、また、消えちゃった・・・?

「消えてしまった」「消えてくれない」
お馴染みのフレーズだ。
ということは、ミーちゃんを常に悩ましているのが
この「存在」のトラブルだということである。

自分の意志・希望とは別のところで、その「存在」が
勝手に操作されているような感触なのであろう。

「どこのあたりを押したら消えたんですか?」
「スペースっていうんですか?この長いの。それを
押したと思うんですけど」
「そのとき、カーソルはどこにありました?」
「その文の先端にあったんですよね〜」

それなら、スペースがひとつできるだけのはずだが?

一行ずつスペースを入れて文章を揃えてらっしゃった
ということはわかったが・・・
それまで成功していたことが、ある行になったら突然
失敗するとは・・・。

「じゃあ、その一行が選択されてたとか?青い色に
なってませんでしたか?」
「いや〜、それはないと思うんですよね。
そういうことはしてなかったと思いますけど」
「こういうふうに、文字を選択してあるとき、
スペース等を押すと一瞬で消えてしまうんですけど」

試し書きをして、それを消してみせた。 
「あらー!」びっくりミーちゃん。
「ここ(return)を押しても消えちゃうんですよ。
その選択した部分が改行に変わっちゃいますから」
「あらー!そうなんですか。それじゃ気をつけないと。
へたに選択しない方がいいわね〜」

「まったく、ちょっとできるようになったからって、
生意気して(笑)いろいろなところ、いじってみたり
したから」
「あ、いいんですよ〜、いじってくださって。
みんな、失敗しながら覚えていくんですから」

「生意気する」
私にとってちょっとしたツボであった。
「それにふさわしい身分や年齢ではないのに出すぎた
言動をする」
ミーちゃん、謙虚なんだから、もう。

「パソコンを使うにふさわしい身分や年齢」?
そんなもの、あるわけない。
「出すぎた操作・作業」?
そんなものも、ない、ない、ない。

しかし、
ミーちゃんのおっしゃる「生意気して」とは
明らかに「欲を出して」という意味。
なら、ミーちゃんの本筋ではないか。
当然、欲を出さねば進歩はない。

ミーちゃん、iMacいじりを「生意気」とは思わずに
どんどん「生意気」していってください。

・・・などと話をまとめているようであるが、
「一行消え」の謎が解き明かされたわけではない。
いつもの通り、謎は深まるばかりである。



なるほどねぇ。
「生意気する」かぁ。
これは、ぼくが好奇心につられて、
冒険的なことをやるときの気分そのものだなぁ。
ところが、ことコンピュータに関しては、
息子のぼくは、まったくと言っていいほど、
「生意気しない」のですよね。
なんども言ってきているけれど、
使うソフトは、メールと、ブラウザと、エディターだけ。
それ以外に、調子づいて買ったやつは、
ぜーんぶ捨ててやりました。
『釣り竿一本だけで釣りをたのしむ』というようなことを、
パソコンでもねらっているのかもしれませんね。

〔さぁ、山場が来てますね。明日につづく、です!)

1999-07-19-MON

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