HOST
いっそあのホストに訊こう!

第26夜 色気ってなんなんでしょう?



糸井 また新しい質問なんですけど、
「おもしろいとモテる」と
男の子が思ってた時期があって、
笑いの方向にどんどん行きましたよね。
合コンだとか、飲み会なんかでも。
あの傾向って今もまだ続いてるんですか?
零士 あの……おもしろいというのも、
それだけを追求していっちゃうと
結局は万人受けするような
おもしろさになると思うんですよ。きっと。
それって、ある特定の人におもしろがられることを
貫いてるヤツのほうが、逆に、
おもしろいときがあるじゃないですか、お笑いって。
鼻の穴に豆入れて、ポンポン飛ばす人が、
そればっかりやってたら、なんかおもしろくなってきたり。
たとえば、春一番さんが、
アントニオ猪木のモノマネだけで通したり。
あの人が出てきたら「猪木だ!」と思いますよね。
いきなりコックの格好してきても、
きっと猪木のモノマネやるんだろうな、とかね。
で、その前に、いろんなキャラの濃い人が
いろんな芸をやっても、最後にあの人が出てきたら、
「1、2、3、ダーッ!」で結局、
「じゃ、よきところで」って解散になっちゃうんですよ。
糸井 左フック一発ですよね?
零士 一発ですよ。
オールマイティーじゃなくていいと思うんですよ。
糸井 あれが一発ってものか!
零士 で、まともな顔してやってるし、
出てくるときには、なんかオカシイというか、
……面白いんじゃなくて、なんかオカシイというのを
売り物にしてるんですよね。
でも、オカシイの裏側を見ると、
ちゃんとやってるってことですから、
ワンセットで見せてるんですよね。
糸井 は〜、環境ごと売ってるよね。あの人ね。
零士 そうなんですよ。
俺、実際見たんですよ。
あるクラブに行ったときに、
名だたる有名人がいたんですけど、
そこにひょっこり春さんがいたんですよ。
「おっ、春一番だ!」なんて、周りの人が言うんですよ。
そこで、もうウケてるんですよ。
糸井 「やって、やって」だよね。
零士 で、最後に出てきて、
「では、ワタクシ……みなさん、わかってますね
 ……いくぞーっ!」って(笑)。
「ダーッ!」ってやって、
「はい、解散」で終わりですよ。
糸井 最後にさらっちゃったんだ?
零士 さらっちゃったんですよ。
それと同じで、
万人に向けちゃうお笑いっていうのは、
結局は保守的なんですよね。
その時点で、もう負けてると思うんですよ。
糸井 モテ道ってやっぱ保守的じゃダメなんだね?
零士 ダメだと思いますよ、俺は。
ただ、ちゃんと線は引いてくれよ、と。
自分のことを、人を鏡にして映して知るのもよし、
上の備え付けたもうひとつの自分のカメラで
自分を見て、自分の位置を確認する、
そういうナビゲーションシステム的な
感覚だけはもってくれよ、と。
つまり、人のせいにするなよ、と。
人の話に乗ったり、ネタとして使っておきながら、
人のせいにするヤツっているじゃないですか。
俺、そういうのはずるいと思うんですよ。
たとえば、この対談を読んで、
僕にいろんな質問のメールをくれた人たちが、
「いや、零士が、ああ言ったから、こうしたんだ」と、
そういうふうなずるいヤツになってほしくないですね。
男も女も。
糸井 もうひとつなんですけど、
“女の色気”と、“男の色気”って言いますよね。
で、色気という言葉ってものすごくあいまいで、
みんな基準がちがいそうなんだけど、
色気ってなんなんでしょう?
零士 さっき話が出た、山崎まさよしさん、
色気、ありますよね。
でも、なにかわからないですよね。
「なにがいいんだろ?」と最初は思うわけですよ。
なんか……この人って、
歌書いて歌ってる人なんだよね……、
でもなんか、目に残るんですよね。
歌が死ぬほどうまいとか、なんとかっていうよりも、
なんかねぇ、しみこんでくるっていうか、
……あれは色気なんですよ。
100パーセント色気なんですけど、
なんでアレが出てくるのか……?
糸井 僕は、色気ってことについては、
前から知りたいなと思って考えてたんだけど、
ひとつ鍵があって、
それは“恥”じゃないかなと。
零士 いやいや、そうそう、だからそうなんですよ。
僕らは恥をかきたくないから、
色気をつぶすんですよ。
で、身振り手振りで派手にやるわけですよ、こうやって。
「わかるかオイ、わかるか? わかっただろ」って。
それで「カッコいい!」って言われたい。
「カッコいいなー、まとめていったよアイツ」って。
糸井 うんうん。
その恥とさ、もうひとつそれの裏に、
「もう恥ずかしくてしょうがない」
という恥がありますよね。
零士 だから、僕らはそれも打破したいから、
脚を使って機敏に動いて、寝ないで時間使って、
さっき言ったように、
相手の女性に時間を感じさせないというのも
結局は恥をさらしたくないからですね。
糸井 零士さんって、根っこは恥ずかしがり屋ですよね。
零士 だと思いますよ、根っこは恥ずかしがり屋ですよ。
顔も赤くなるし、
誰かとすごく目も合わせづらいという時もあるけど、
だからこそ、あえて色気をすっ飛ばしてでも、
動いて、時間使って……タフでマメというところに
行くんですよ。
糸井 それほど恥ずかしさが強いとも言えるんだ?

(つづく)

2000-07-12-TUE
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