HOST
いっそあのホストに訊こう!

17夜 三手先を読め、三手先にもっていけ

糸井 昔こういうふうに言ったら、
保守的な女の子の心の針がゆれて、
一気にグラッときたという、そういう言葉……。
あ! 零士さん、まだ現役で使ってそうだなぁ(笑)。
そういう言葉ってありますか?
零士 (小声で)僕はですねぇ、あの……、
なんとなく言った言葉でいうと……。
クサイ言葉だから普段は言わないセリフですよね?
あの……意外に効果があるのは、
なんか、一緒にいて食事してても、
何もしゃべらない時間ってありますよね。
そういうとき……自分は本当に
しゃべりたくないだけなんですけど(笑)。
糸井 うん(笑)。
零士 で、逆にそのことを、そのまま言っちゃうんですよ。
「何もしゃべらないでいられるって、
 それって、そのままだから……」って。
糸井 (拍手)これ、字幕!(笑)
零士 (笑)でも本当のことですよね。
糸井 つまり事実をふたりで確認するわけだ?
零士 確認するんです、常に。
で、それを外部から「おまえ、それちがうだろ!」
って言うヤツがいくらいても、
もうシャットアウトしちゃうんですよ。
防音装置はっちゃうんですよ。
そういう、なにげに言っちゃったことで、
ものすごく相手の心に響いちゃうことがあるんですよ。
糸井 は〜〜〜。
零士 「去年の何月に、あなたこういうこと言ったでしょ?」
「え? どこで? あー、はいはい」
「本当に素朴だなぁ。
 ああ、こういう人なんだなって思ったの」って言ってる。
でも、それ、ウソじゃないんですよ。
「いや、あの時はさ、俺疲れてたんだよね。
 本当に疲れてて、なにもしゃべりたくなかったんだよね」
「いや、それ、伝わってきた……」って。
もちろん僕がご馳走に招待したわけですよ。
ちゃんとした店で、
おいしいとかなんとか言う前に、
「なんかこうやって、しゃべらないでいられるのもさ、
 それ、俺のままなんだよね……」って。
なにもしゃべってないんですよ。
糸井 (拍手)カメラマン笑っております。
ニッコニコしております(笑)。
は〜〜〜。
零士 「スーツ? これはただの鎧だ」とかね。
それは文字どおり、こんなスーツはただの鎧なんだよ、
っていう意味を、含めてるかもしれないし。
別な意味かもしれないし。
「目の前の料理なんか、どーでもいいんだ。
 この空間が、俺にとっては、
 すごく素に戻れるっていうか……違和感ないね」って。
それがどういう意味なのか、
そこまでは言ってないですから。
糸井 (笑)言ってないのねぇ、
相手の解釈で決まるのねぇ。
零士 でも、ウソじゃないですから。
本当に疲れててしゃべりたくないんですから。
糸井 あのさ……こんなに言っちゃっていいの?
零士 あ、いいですよ。
糸井 あ、そう……。
零士 ええ。
最近それに加えてるのは。
こう……無心っていうか。
糸井 無心(笑)。
零士 「無心になれるってのは、いいよなぁ」って。
糸井 俺、今気づいたんだけど、
それって、倦怠期の夫婦を演じてるんですよね?
先の先のことですよね?
零士 だから、僕らはよく
「三手先を読め、三手先にもっていけ」と言って、
間の1つ、2つをとばしちゃってるんですよ。
とばして三手先に行ってるんですよ。
糸井 そうだよね。
零士 だから、難しい相手のときに、会って早い段階で
「もう君のこと、わかってますよ」っていう流れに
もっていくってのは、そういうことですよ。
糸井 たーめになるなぁ〜。
零士 でも、あれですよ、
今回、これだけ対談の時間をとってもらったから、
みなさんに伝えられるんですよ。
これ、10分や20分の話じゃ伝わらないことなんですよ。
難しすぎて。
糸井 みんなさ、テレビとかだと時間短いから、
キャッチーなひと言が欲しいじゃないですか。
でもそれって、言ったらおしまいで……。
零士 ビールの泡をシャンパンの泡に変える言葉みたいに、
短くてパーンという言葉を
メディアは求めてますよね。
糸井 それはもうダメなんですよね。
零士 本当はダメなんですよ。
で、僕はテレビに出たりすると、
あえてみなさんにわかりやすいように……、
つまり、ホストに対するモヤモヤしたイメージを
吹っ飛ばしたいがために、
ちょっとコミカルで、
ちょっと古風なことを短時間の枠でやるしかないんです。
テレビとかは、時間の尺が決まってますから。
短めに。
糸井 テンションの高い露出ですよね。
で、零士さんの話からいろいろ拾えるんだけど、
テレビのことを「古風なこと」って、
一発で言えちゃうのも、センスだよね。
テレビは古風ですよね。
零士 古風ですよー。
古風なことをやるしかないんですよ。
それも、決まった尺度の短い時間で
パーンと行くしかないんです。
糸井 それ、テレビ局の人は案外気づいてないと思う。
テレビを“今”だと思ってるよ。
零士 いや、あれはちがいますよね。
“今”じゃないですよ。
糸井 古風ですよね。
零士 古風です。
“今”ってのは、今話してることですよ。
これは現実に進んでることですから。
いつも“今”なんですよ。

(つづく)

2000-06-17-SAT

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