HOST
いっそあのホストに訊こう!

第1夜 「顔じゃないよ、嗅覚だよ」

糸井 えー、お待たせしました。
あのー、なぜホストの零士さんと「もて道」について
対談をやろうと思ったたか、簡単に説明しときます。
繁華街歩いてると、若い男の子が
いっぱい歩いてるのを見るじゃないですか。
あれが結局なんのために歩いてるんだろうと思ったら、
要するに、ナンパですよね。
零士 もちろんそーですよね。
だいたいふたりで組んで。
糸井 そうそうそう、とくに渋谷とか新宿とか。
あれ見てると、モテることを商売としてやっている
ホストとか、タレントとかと、
街歩いてる男の子ってのは、
あまり区別がないと思うんですよ。
どんどん同じになってくる。
零士 逆にそいつらのほうがイケちゃってる場合もあるし。
あれ〜スカウトかなぁ? なんて見てると、
ただ普通に意味もなく歩いてて、
で、女の子がきたら声かけて、っていうね。
糸井 そうそう。
で、逆に言うとタレントさんは、
街歩いてる男の子たちをマネしてというか、
取り入れてる部分がありますよね。
零士 ええ、そーですね。
糸井 で、ホストさんという商売も、
俺たちが昔知ってた……、
さっき冗談で言ってたんだけど、
ラメ入りのガウン着て(笑)、
という姿とはちがって、変化してきてると思うんです。
零士 本当は今日僕は“それ”で登場しようとしたんですよ。
やっぱ白のガウンにね、片手にワイングラス。
糸井 犬飼ってたりして。
零士 ペルシャ猫ですね。
糸井 ああ(笑)。
そういうイメージでホストという職業を
見てた部分があるんだけど、
たぶんそうじゃなくなってるんだろうなぁと。
で、僕がインターネットで新聞出す前に
「どんな企画をやろうか……」って
ずーっと考えていたときに、
「男はみんなホストになりたいんだ」という、
暴言をまず吐いて、ウチの若い子を修業に出そうと
思ってたんですよ。
零士 (笑)。
糸井 で、コネクションさがして、
たとえばテレビ局でディレクターやってるけど、
一時期ホストやってた人とか、
けっこういるんらしいんですよ、あちこちに。
零士 いや、けっこういるんですよ。
あと“自称”ね。
“自称”もいるんですよ。
スナックでバイトしてた人がね、
「いや、俺実はホストでさぁ、店の名前は言えないけど」
とかって言っちゃってるやつ。
糸井 で、驚くのは、
「ホストやってました」というのが、
男が見栄をはれるネタになってるわけですよ。
昔だったら考えられないですよね。
零士 今、そういう意味ではイメージ変わりましたね。
糸井 それから、柴門ふみさんの漫画の「あすなろ白書」で、
すごくいい男が、そっちの商売に入って、
という設定もあったよね。
零士 ええ、ありましたよね。
糸井 ああいうふに見てると、
結局は、ホストっていう名前が抵抗感があるだけで、
モテちゃうことを職業にするという商売に
若い男って、なりたいんじゃないか、と……。
零士 元ホストっていうことが、
ちゃんとした形容詞になってますよね。
糸井 ですよねー。
元ホストって言ったほうが、
ひとつニュアンスが出るじゃないですか。
と考えると、「男はみんなホストになりたいんだ!」
というのが間違いじゃないんだと。学生を含めて。
零士 ただ、僕がいつも思ってるのは、
ホストって……僕はべつに
ホストにコンプレックスはもってないですけどね、ただ
「ホスト、イコール、ずるい、きたない、こわい、
 あやしい、だまされそう……」
そういうイメージあるじゃないですか。
でも、ホストやってる本人、やろうと志してる人は、
スチュワーデスの男版みたいな感じでね、
パイロットみたいに、女性を操縦してやろうという、
そういうイメージがあるんですよね。
それが一般的には
今まで約30年くらいの歴史の中で……。
糸井 ホストの歴史って30年くらいなんですか?
零士 やっぱ30年か40年くらいじゃないですかね。
糸井 いちばん古くからやってる
ホストさんというのは今何歳くらい……?
零士 いや、まだ現役がいますよ。
当時からの現役の方ですよね。
20歳からやってて、今55歳とか。
糸井 いるんだ!
零士 いるんですよ。
で、そういう人は必ず黒いんですよ、日焼けして。
糸井 ゴルファーみたいな感じ?
零士 ええ、そういう感じですね。
オールバックで、服に多少ラメ入ってて、
で、鎖のアクセサリーびっちりして、太いのを。
カフスのとこもとがっちゃって、襟も大きくて、
みたいな、そういう人が現役でいるんですよ。
で、かっこいいんですよ。
やっぱ、かっこいいんですよ。
糸井 様式美だよね、一種の。
零士 ええ、そうですね、はい。
糸井 で、最初の企画を「ほぼ日」で実現させたかったから、
その後も、いくつか心当たりをあたったんですよ。
ホームページ見ると、ホストのページって
けっこうあるんですよね。
で、お店に取材を交渉するやり方もあるけど、
僕らはコネクションがあるわけじゃないから、
ひとりでやってる人のページとか見て、
その人を取材しようと思ったの。
そしたら、よく聞いたらウソだ、って言うんですよ。
つまり、自分はホストをやってなくて、
スナックで働いてただけなんだけど、
「ホストだ」って言ったほうがお客さんが来るから。
「実は僕は作家になりたいんです」とか言うわけ。
がっかりしちゃってさぁ。
零士 そういう人は多いと思いますよ。
さっき僕が言ったように
“なんちゃってホスト”が多いんですよ。
糸井 “陸サーファー”みたいなもんだ?
零士 そうですよ。
糸井 へぇ〜〜〜〜。
零士 実際のサーファーはかっこよくなかったりしても、
陸サーファーはかっこいいやつばっかりで、
「あ、サーファーってかっこいいんだ」と
世の中の人が思い込んでるのと同じで、
よく訊かれるのは、
「ホストは顔ですか?」っていうから、
いや、「顔じゃないよ、嗅覚だよ」、と。
糸井 嗅覚!! さっそく出ましたねぇー。
太字でテロップ出したいくらいですね。
「顔じゃない、嗅覚だ!」って(笑)。

(つづく)

2000-05-08-MON

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