映画『モテキ』を、 ほめさせてください。(c)2011映画『モテキ』製作委員会
大根仁さんプロフィール 大根仁監督 × 糸井重里

第6回 ぼく、オリジナルの才能がないんです。
糸井 あとやっぱり、
適度に様式美を入れてるのが
大根監督のセンスだと思うんですよ。
踊らしちゃうとかね。
あるいは、堂々とおきまりのセリフを入れて
さっとシーンを終わらせちゃうとか。
ああいう度胸は、
ものすごいベテランのように慣れてますよね。
大根 うーん‥‥ベテランの自覚はないんですが、
まあ、度胸がいいっていうのは、
たまに言われたりしています。
糸井 「堂々と」については、
最近ちょっと思ってることがあるんです。
なんて言うか‥‥
若いときに軽蔑していたものが、
「本当はいい」って、堂々と認められる時代に
なってるんですよ、いま、どうやら。
たとえば、
田島貴男さんが『なごり雪』を歌ったりして。
大根 はい、はい。
糸井 『なごり雪』は
岡村靖幸さんも歌ってますね、たしか。
そういうのを見ると、
彼らは「昔ばかにして申し訳なかった」
という気持ちで歌ってるように思えて。
大根 ああー。
糸井 よくよく考えてみると、
ばかにしていた理由のほうが曖昧なんです。
で、いい歌だなと思える今のほうが、
素直なんですよね。
大根 理屈もついてきますからね。
糸井 そうそうそう。
それと同じようなことは、
映画やテレビの表現にもあるんでしょうか。
大根 そうですね‥‥
自分のことでひとつ言えるのは、
もう40を過ぎて
テレビではそこそこいろいろやってきたので、
恥ずかしいことがなくなってきた、
という感覚はありますね。
糸井 なるほど‥‥。
若いときに素直じゃない道に入る理由って、
ろくでもない友だちと
同じような話をしてるからですよね。
誰かが「ダサい」って言うと、
いっしょになって「ダサい」って
言わないといけないような気がして。
大根 うん(笑)。
糸井 「アコースティックギターはダサい」
と周囲が言ってたら、それに乗っちゃったり。
ぼくもそうだったんですよ。
大根 あります(笑)、そういうのは。
糸井 大根さんは、取り入れてますよね、
いいものは素直に。
大根 取り入れます。
というかぼく、オリジナルの才能がないんですよ。
糸井 いや、そんなことはない(笑)。
大根 いやいやいや、ほんとに。
あるものをいじるのが好きというか、
いろんな素材があって、
それをうまくくっつける。
ミュージシャンでいえば
弾く人じゃなくてDJだと思ってるので。
いいレコードがいっぱいあって、
これをこのタイミングでかけて、
次これかけて、つなぎはこうして、みたいな。
それでフロアを盛り上げるのが好きなんです。
糸井 それは伊丹さんも‥‥
大根 そうです。
伊丹さんもオリジナルの人じゃないんですよ。
糸井 やっぱり大根さんの口から
最初に伊丹さんのことを言っていただいて、
なんかすごく、
「ああー」と思えてます、ずっと。
大根 伊丹好きとしては、
さっきの本も踏襲しようと思って、
『モテ記』っていう本を出すんです。
伊丹さんのにちょっと似ているレイアウトで。
そこは誰も気づかないだろうけど(笑)。
糸井 おおー、それもたのしみですね。
‥‥さて、どうしよう、次はどこをほめよう。
大根 (笑)
糸井 森山未來さんが演じた、
主人公、幸世の話もしておきたいですね。
大根 幸世。
幸世のことは‥‥。
ぼくも、未來くんも、
みんな幸世が嫌いなんですよ。

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糸井 ほぉ、そうなんですか。
大根 「こいつムカつく!」っていうのが、
ずっとあるんです。
糸井 そうか、
森山さんにしても、
自分じゃないんですよね、明らかに。
大根 そうです。
糸井 物語の幸世くんは踊れないしね。
大根 踊れないです、あれは妄想ですから。
ああいう踊りとかがないと、
ただリアルに幸世を描いたらもう、
なにもできないダメなやつが
振り回されてるだけの映画になるので。
糸井 でも、
「あらゆる恋愛は人に迷惑なものだ」
ということからすれば、
まあ、それを凝縮した人ですよね。
大根 そうですね(笑)。
糸井 恋愛一般を、愛と性を凝縮した男ですよ。
大根 ええ。
糸井 あとは‥‥
とにかく出演者はみんなよかったですよ。
真木よう子さんは、やっぱりいいし。

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大根 はい。
糸井 また激しいセリフを言わせてましたねぇ。
大根 そうですね(笑)。
糸井 でもそこもサイズ感が合ってるから、
グッとくるんです。

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大根 ありがとうございます。
糸井 あと、短いけど、
出演時間は短いけど、あの女の子‥‥。
大根 仲里依紗。
糸井 バーの女の子。
大根 そうです、愛ちゃんという役。

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糸井 あのくらいの分量で出る子が、
ほんとに嫌味なく、しびれさせますよねぇ。
ドラマ版の『モテキ』でいうと、
菊地凛子さんがそうでした。
大根 はい、はい。
糸井 あの分量で出る子の描き方が、
すごく思いきりがいい。
この監督は、これもうまいなぁって。
大根 仲里依紗はこの映画で、
幸世と歩きながら話す長いシーンがあるんです。
そこはワンカットで撮りました。
割らずに撮ろうと思ったのは、
あとで誰かから
「ここ長いから切ろうよ」
と言われたときに、
「すみません、ここはワンカットなんで」
と切れないようにするためでした。
それは里依紗ちゃんのために、ですね。

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糸井 はあー‥‥いいなぁ。
その話は、ちょっといいですねぇ。

(つづきます)

2011-10-11-TUE


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