「もしドラ」を書いた岩崎夏海さんに 「もしドラ」を5回も読んだオトヤが会いにゆく。  feat. AKB48(チームA)
第2回 I have a dream――

「もしドラ」を5回も読んだ、弊社のオトヤ。

その甲斐あってか
岩崎夏海さんがプロデュースに関わった
人気アイドルグループ「AKB48」の公演に
お招きいただく光栄に恵まれました。

‥‥忘れられない、あの夜の熱いステージ。

これまでの人生を体育会系タテ社会で過ごし、
アイドル方面は「ウブ」なオトヤのもとへ、
ライブ終了まぎわ、
前田敦子さんの投げた「一輪の赤いバラ」が
飛んでくるという、信じられないミラクル‥‥。


前田敦子さんの投げた赤いバラは、オトヤのひざへ落ちた‥‥。

‥‥うおっほん、うおおおおっほん。

とにかく、すばらしいライブを堪能したあと、
覚めやらぬ余韻を引きずりながら
われわれは
この日の目的である、岩崎さん取材に臨んだのです。


いつの間にか前田敦子さんのバラをポケットへ刺しているオトヤ。

‥‥と、胸の内ポケットから
おもむろに一通の封書を取り出すオトヤ――。

なんとこの男、「もしドラ」の読書感想文を
書いてきてたんですよ。聞いてないよ!

それも『しろばんば』の後書きを丸写しして
済ませたという中学校のとき以来、
じつに20数年ぶりとなる読書感想文らしい。

実際は、岩崎さんご本人の前で朗読した
その全文を、
ここに、謹んで公開させていただきます。

なお、例によって、せっかくですので
「AKB48」のライブ写真のスライドショーを
いちばん下に置いておきましょう。

そちらも、どうぞ、お楽しみくださいませ。

 
『もし高校野球の女子マネージャーが  ドラッカーの『マネジメント』を読んだら』を読んで  東京糸井重里事務所 佐藤音也

はじめに、告白させてください――。

私は、今までに本をまともに読んだことがなく、
ましてや1冊の本を
最後まできちんと読み通したことなど
ありませんでした。

小学校以来、
体育会系の世界に所属してきたこともあり、
何かを学ぶときは
「本を読むより、現場で体験する」ことが、
私の得意なやりかたでした。

そんな私ですから、勤務先で運営している
「ほぼ日刊イトイ新聞」で
「はじめてのドラッカー」という特集を
やっていたときも、
ドラッカーがどんなことを言っている人で、
どこに共感できるのか‥‥など、
なかなか理解できず、
ドラッカーという人については
「遠い国の偉い学者」だと思っていました。

そんなある日、会社の同僚であり、
「はじめてのドラッカー」を担当した
奥野という者から、
「おもしろいから、読んでみたら?」と、
ある本を手渡されました。

その本こそが
「もし高校野球の女子マネージャーが
 ドラッカーの『マネジメント』を読んだら」

(以下「もしドラ」)だったのです。

すでに述べましたとおり、
自分は、
本を1冊もまともに読み通したことのない
人間だったのですが、
ためしに読みはじめると‥‥なんと、
たった数日間、
それも通勤の埼京線の車内だけで
読み終えてしまったのです。

驚きました。

理由はもちろん
「おもしろかったから」なのですが、
このことに、
まず、自分自身たいへん驚きました。

私にも本が一冊、読み通せたんだと。

とくに印象に残っているのは
主人公の「みなみ」の幼なじみで
同級生の友人「夕紀」が、
野球部員一人一人と「お見舞い面談」をしていく場面。

ドラッカーでいうところの
「マーケティング」をしているシーンです。

なぜなら、私は仕事上、
商品をいくらくらいの値段で売ったらいいのか、
どれくらいの数量を仕入れればいいのか‥‥
という資料を作成しているのですが、
説得力のある資料を作るためには、
マーケティングで得た情報をあわせて載せることが
重要だと、かねがね思っていたからです。

夕紀のお見舞い面談のシーンは、
資料作成するときの情報収集のしかたなどに、
とても参考になりました。

また、ドラッカーのいう
「イノベーション」の取り組みとして、
私はいま「大型二種免許の取得」に
チャレンジしております。

大型二種免許とは
観光バスやトラック等を運転することのできる
自動車免許のことです。


クリックすると運転席のオトヤが見えます。
取材協力:上江橋モータースクール

上述のように、
私はいわゆる「管理部門」に属しており、
自動車の大型二種免許は、
今の仕事には直接的には必要ありません。

しかしながら、
我が社では、自社商品の撮影をするときなどに、
ロケバスを頼むことがあります。
ものづくりをやっている会社なので、
卸先への商品の搬出搬入という業務もあります。

そういうときに「大型二種免許」が、
有用になってくるのではないか――。

目指しているのは「幅広く動ける管理部門」。

管理部門の常識を覆すという意味でも、
社内に新しい「顧客」を創造するという意味でも、
大型二種免許の取得を決意しました。
 
I have a dream――

‥‥キング牧師は、そう言いました。

同じように、私にも夢があります。
中学校からバレーボールをやっていたので、
将来、小学生にバレーボールを教えて
チームをつくり、監督となることが、それです。

主人公の「みなみ」と同じように、
今度は私が「もしドラ」を教本として、
私のチームを
マネジメントしてみたいと思っています。

そして、チームが強くなり、
取材陣から
「どのようにしてチームを強くしたのですか?」と
監督インタビューなどされるような機会に
恵まれた暁には、
この「もしドラ」を紹介できたらいいなと思います。

最後に、生まれて初めて最後まで読み通した本
「もしドラ」ですが、
現在までに5回を読み終えました。

ドラッカーさん本人の著書もそうなのだと思いますが、
「もしドラ」は、
読むたびに、1回1回、ちがう発見があります。
そのようなわけで、
いま「6回目」に取り掛かっているところです。

それが終わったら、
上田惇生先生の『ドラッカー入門』へ進もうと
計画を立てています。

そしていつの日か‥‥『マネジメント』を読みたい。

「もしドラ」に出会えたおかげで、
「ドラッカー」という長く険しそうな階段も、
一歩ずつなら
登っていけそうな気がしてきました。

本日は、ファンである岩崎先生にお目にかかれ、
のみならず、
人気の「AKB48」のステージも
見させていただき、
たいへんうれしく、興奮しております。

岩崎先生におかれましては、
これからも
ご健康で、ますますご活躍されますことを
心よりお祈り申し上げています。

このたびは、どうもありがとうございました。

 


「‥‥すばらしい」


「ありがとうございます!」

 

‥‥その後、このオトヤの感想文は
何名かのダイヤモンド社の社員さんのあいだで
密かに、まわし読みされたという。

そして、その笑っちゃうほど素でマジな文章に
こころ打たれたという社員のかたから
オトヤのためだけにつくられた、
世界でたったひとつの
バレーボールを抱えた「卓上みなみちゃん」が
後日、届けられたのであった。

<次回へ続く>

 
 
2010-11-03-WED
 
(c) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN