モノポリーエッセイ

モノポリー日本選手権
全国大会結果報告(その6)



こんにちは。
モノポリー日本一を決める大会、
「モノポリー日本選手権」も、
いよいよクライマックス、
決勝テーブルがはじまるところまできました。
この晴れの舞台へ進出しました5名の選手を、
改めて成績順にご紹介いたしましょう。
数字は予選3回戦での
総資産(単位:ウルトラマネー)です。

予選1位名古憲司さん 20,175
〃2位金谷衛さん 16,878
〃3位中野大輔 さん 13,633
〃4位篠塚博文 さん 13,580
〃5位小沼啓文 さん 12,284

まずは、名古憲司さん。
近畿地区大会第4位。
昨年に引き続き、2年連続2回目の出場です。
もうすっかり、大阪在住の「強豪」の一人として、
全国区の顔となりました。
ご本人によれば、最近はお仕事が忙しくて
なかなか思うように
モノポリーをプレイする機会もないそうですが、
「たまにふらりと出場した」地区大会で
ブランクを感じさせぬ好成績をあげ、
今年も全国の舞台へ出てきたわけです。
「ひさしぶりだとものすごくダイスがよかった」と
嬉しそうにコメントしていたのが印象的です。
今回は予選をトップで通過して、
初めて決勝テーブルに進みました。
好きな食べ物は「ケーキ」。

続いて、金谷衛さん。
東北特別地区大会優勝。
2年連続3回目の出場。
今回は東北代表としての出場ですが、
実はお住まいは群馬です。
小学校の先生というだけあって、
いつも礼儀正しく、モノポリーの交渉でも
ハキハキと大きな声で喋るのが、
とても好感の持てる好青年です。
今大会中はずっと「カウボーイ」の駒を持ち込みで
ゲームに使用しています。
そういえば、ご本人も長身で運動的な、
なんとなくカウボーイに似ていなくもない雰囲気。
見事優勝カップを「投げ縄」で
奪取することができるのでしょうか。
好きな食べ物は、「茶碗蒸し」。

中野大輔さん。
関東地区大会第6位。
3年連続3回目の出場。
地元の調布市で
「調布モノポリークラブ(略称:CMC)」を
ご夫婦で主宰しています。
月に1回の定例会には
付近のモノポリー好きな仲間たちが集まって
楽しくダイスを振っているようです。
普及にも熱心で、初心者や希望者に対して
懇切丁寧にゲームの遊び方を教える姿が印象的です。
その調布から観戦に来ている奥さんが、
ギャラリー席からじっと見守っています。
好きな食べ物は、ラーメン系。
特に埼玉にある「ぐりえ」の「マーラーぐりえ」が
ごひいきです。

篠塚博文さん。
九州地区大会第2位。初出場。
やはり奥さんの万里子さんに、
ギャラリー席から見守られての決勝戦です。
ご本人は「3ゲーム目」に課題があると
自己分析しているようです。
確かに、九州地区大会では、
1,2ゲーム目をモノポリー勝利していながら
3ゲーム目はいいところなく破産。
この全国大会でも、1,2ゲーム目を制していながら
3ゲーム目はやはり「あっさりと」破産しています。
でも全国大会は4ゲーム目が決勝戦です。
本人にとっても未知の「大会4ゲーム目」は
いったいどのような波がくるのか、注目です。
好きな食べ物は「天ぷら」。

小沼啓文さん。
関東地区大会第1位。初出場。
関東地方の各地のモノポリーサークルに
精力的に通っている、新鋭です。
予選3回戦でモノポリー勝利を達成されて、
一気に他の選手たちを「ごぼう抜き」して
決勝進出を決めました。
この急浮上のしかたは、昨年度の日本チャンピオン、
表寺さんを思い出させます。
歴史は繰り返す、とばかりに、
勢いに乗ってこのまま優勝へ一直線となるか。
好きな食べ物は、「肉類」。

ここ数年の決勝テーブルにはどちらかというと
「ベテラン勢」が肩を並べていた印象がありますが、
今年は全員が初めての決勝テーブルという、
非常にフレッシュなメンバーが揃いました。
もちろん、誰が勝っても「初優勝」です。
一方メンバーの年齢層としては、
ちょうど世間で「ウルトラマン世代」と呼ばれる人たちが
中心であるように見えます。
やはり今年の大会使用公式ボードが
ウルトラマン版であるだけに、
この決勝メンバーは
ある意味必然だったのかもしれませんね。

予選順位1位の名古さんから順に名前がコールされ、
拍手を受けながら、決勝戦のテーブルに着席していきます。
決勝戦は予選成績順にダイスを振るため、
既に選手の座るべき位置は決まっているのです。
ほどなく5名の選手全員が着席。
選手の席のほかには、バンカー席と、
採譜者のための記録席があるため、
テーブルの周囲には7名が着席することになります。
会場内には恒例となった「大盤」コーナーも設置。
また反対側にはカメラマンがスタンバイし、
実験的なネット中継も試みられています。
そしてその周りをギャラリーがぐるりと回りこみます。
360度方向から自分の一挙一動が観察される、
この瞬間の選手の緊張感というのは、
実は想像以上のものがあるのです。
ましてや全員が決勝戦初体験とあっては、
テーブルの周囲に張り詰める緊張感は
かなりのものがあります。
さあ、いよいよ最初のダイスが振られました!

決勝戦の序盤。
一見静かに権利書を購入していきます。
順調に購入していくのは篠塚さんと小沼さん。
この2名が1枚ずつダークブルー(DB)を購入。
これでもうすぐにでも、
一連の交渉がスタートしそうな雰囲気です。

実はこのお二人、篠塚さんと小沼さんは、
今朝の予選2回戦でも直接対戦されており、
その際にもDBを揃える交渉を行っていたのです。
そのときには小沼さんがDBを揃えたのですが、
運悪くお客さんに止まってもらえず経営は失敗。
そのときの「トラウマ」が
小沼さんの脳裏に残っていたのかもしれません。
今回はDBを放出する気持ちが強いようです。
一方の篠塚さんは、
この大会で自分に運気が回っていることを自覚されており、
決勝戦ではとにかくカラーグループを揃えて、
流れに身をかませる作戦だった模様です。
これに加えて、直前の3回戦でカラーを揃えることなく
破産してしまった記憶がやはりあったのかもしれません。
篠塚さんの方は、
先行してカラーを揃える気概が強いようです。

かくして、お互いの「方針」が一致していたこともあり、
交渉は成立。
篠塚さんがDBを揃えました。
篠塚さんは代償としてOrなどの重要な権利書を
放出しており、
これにより小沼さん、中野さん、名古さんの3名で
LB、LP、Orの3色が揃う形となりました
(結果的には、小沼さんがLB、名古さんがLP、
 中野さんがOrを揃えることになります)。
DBという確率の悪いカラーを経営しながら
この3色を相手に回すのは容易ではなく、
かなりのハイリスクを背負っての経営開始と
いえるでしょう。
しかし前述の「作戦」の通り、
篠塚さんの心に迷いは見られません。
基地を4軒建てて、静かに流れを待ちます。
ここで唯一、交渉の輪の中に入れずに
孤独だった金谷さんが、
なんと真っ先にDBに止まってしまいます。
更に続く中野さんのダイスロール。
ゲーム終了時のコメントによると、
中野さんはこの時に
「(DBに止まる目が出るのは)知ってた」とのこと。
やはり何かの「流れ」を感じていたのでしょうか。
果たしてその通り、続く中野さんまでもが
DBに入ってしまいます。
場内は騒然。

一気に「流れ」は篠塚さんへやってきました。
現金も権利書もなく、非常に苦しい立場の金谷さんは、
必死に交渉を重ねて、
スーパーメカ(鉄道)を3枚集めて
反撃の機会をうかがいますが、
そのまま何もできないうちに
みるみるうちに出費を重ねて沈んでいってしまい、
結局破産してしまいます。
なんとゲーム開始14分で破産。
これは日本選手権の14年間の決勝の歴史の中においても、
ひょっとしたら「最短記録」なのかもしれません。
金谷さんの名誉のために念を押しておきますが、
このゲームでの金谷さんの立場では、
勝つのは非常に難しかったのでしょう。
モノポラーたちの間では、
後にこのゲームの棋譜を再現しながら、
金谷さんの立場で勝機があったかどうかを検証する
「金谷命題」なるものが
ひとしきり議論のテーマとなったくらいです。
ちなみに、現在でも明確な「解答」は見つかっていません。
ともかくも、決勝進出者の中では
最も「優勝者予想」における投票数が多かった、
本命の金谷さんが、真っ先に脱落してしまい、
場内も大きなドヨメキに包まれます。

さて、圧倒的に有利な立場に立った篠塚さんを
追いかけるために、
名古さんがLPに無理やりに増築、綱渡り的ながら、
どうにか基地を増やしていくことに
ここまで成功しています。
逆に小沼さん、中野さんは破産してしまい、
勝負は「篠塚さんDB」対「名古さんLP」となりました。

篠塚さんは、小沼さんから奪い取ったLBも
追加経営していました。
ウルトラ版に則して例えるならば、
これまで次々とライバルたちを葬ってきたDBを
一撃必殺の「スペシウム光線」だとするならば、
レンタル料は安くても命中率のより高いLBの経営は、
地味でも確実に相手を弱らせていく
ウルトラチョップやウルトラキックを
繰り出していくようなものでしょうか。
この組み合わせは非常に強力です。
しかも篠塚さんはスーパーメカを含めて
LPを除く他の全てのカラーの権利書を押さえている上に、
現金も潤沢にあります。
対して名古さんはLPしか勝負できるグループがなく、
現金も枯渇しているという、非常に苦しい立場。
誰もがこの時には、もうあと数分とかからずに
決着するだろうと思ったことでしょう。
名古さんにとっては、
まさしくカラータイマーが
点滅を始めた状態だったといっても
過言ではなかったはずです。

ところが、ここから
名古さんの「地球人ばなれした」回避が発揮され、
「ものすごい戦い」に突入していくのです。
ここからの展開は、
おそらく後世までの語り草になるのではないでしょうか。
いったいどんな内容であったのか。

次回、感動の最終回!

2004-09-22-WED

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