モノポリーエッセイ

第6回

【世界選手権大会のルール】

――世界選手権大会のルールはどうだったですか?
  日本でのルールとは
  だいぶ違う部分があったとも聞いていますが…

岡田
はい、正直言って世界選手権大会の運営方法は
アバウトな部分が多かったですね。
皆さんから聞いていたので、
ある程度予想はしていたんですが。
改めて日本の大会の運営方法が
いかに洗練されたものであるかを実感しました。

――具体的にはどんな違いがありましたか?

岡田
まず第一には、先ほども触れました、
順位を一切評価しない「ドル制」ということが
ありますよね。
これは、全員が交渉をしないで
サイコロを振りつづけて給料をどんどんもらうと、
全員の成績が上がるという、
そういう変な可能性もあるので、
どういうことになるのか戦々恐々という感じでした。
実際に私のいた予選2回戦でもアメリカ代表が
「みんな、交渉しないでサイコロを振りつづけようぜ」
と仕切るような場面があって、
実際かなり長い時間、
交渉しないでサイコロを振っていたりしましたからね。
第2には、ゲームを行う人数です。
日本では5人か6人でゲームを行いますが、
世界選手権は4人か5人でした。
予選はわざわざ4人テーブルを多くしたため、
総テーブル数を増えてしまい、
バンカー(※33)をつとめるべき
「本物の銀行員さん」が足りなくなりました。
注目を集める決勝戦が5人でしたので、
主催者側が4人と5人のどちらに比重を置いているのか
よくわからなかったです。

※33 バンカー
   ゲーム中、場にある現金や権利書を
   管理する人のこと。
   通常のゲームではプレーヤーの誰かが兼任するが、
   大会などでは専任のバンカーさんがいることがある。
   世界選手権では実際に銀行に勤めている人が雇われ、
   ゲームのバンカーをつとめることが多い。

――なるほど。

岡田
また、ゲームのルールも全体的にアバウトなんですよね。
レンタル料は請求しないともらえないんですが、
「ウソ」のレンタル料を請求してもいいんです。
払ってもらえれば時効になっちゃうんですよ。
揃っていないライトブルーのレンタル料が
$40(※34)だったり(苦笑)。
そういうのを指摘してあげようとすると、
「ノー サジェスチョン!」って怒られるんです。
各権利書のレンタル料の値段というのを覚えている人も、
あまりいらっしゃいませんでした。
やっぱり、「競技モノポリー」をやっているのは、
日本くらいなんですか。
審判は
「ギフト(相手にお金をプレゼントする)はいけない」
と何度もいうので、
ウソのレンタル料を相手に支払うのは
一種のギフトじゃないか、
っていってみたんですが、
取り合ってもらえなかったですね。

※34 揃っていないライトブルーのレンタル料が
   $40アメリカ版の地名だと、
   オリエンタル通り、バーモント通りの
   レンタル料が$6、
   コネチカット通りのレンタル料が$8だから、
   $40はちょっとサバ読みすぎですね。

あとは、トイレに行ったりして席を離れた人は、
どんどん飛ばして次の人がサイコロを振ってしまうんです。
席を離れた人はサイコロを振らないから
レンタル料を払わなくていいんです。
その代わり自分がもらえるレンタル料も
席を離れていて請求できないから
もらえないですけど(笑)。
トイレに10分行ってた人もいました。

――交渉時間とかはどうだったんですか?

岡田
前の人がサイコロを振ってから、
交渉できる時間が7分と決まっていました。
7分たったら交渉を打ちきって、
次のプレーヤーがサイコロを振るという具合です。
ただ、逆に
「タイムアップ間際でも7分は
 交渉を隠れ蓑に時間稼ぎができる」
ということでもあるので、
このルールはどうかな、と思いますね。

――サイコロの扱いとかはどうでしたか?

サイコロがボード外にこぼれても
その目を有効にしていました。
最初からボードの外でサイコロをふる人もいました。

――えっ、それは私(百田さん)のときと違うなあ。
  私のときはボード外にサイコロが出たら
  サイコロ2つとも振りなおしでしたねえ。
  で、テーブルから落ちてもOKだったんですか?

岡田
いえ、テーブルから落ちたサイコロは振りなおしでした。
でも、振りなおしはその落ちたサイコロ1個だけで、
テーブルの上に残った1個は
その目をそのまま有効となります。

――カードの山にサイコロが乗ったりしたときは
  どうでした?

岡田
サイコロが斜めになったときは振りなおしでした。
斜めかどうかっていうのはかなり微妙でしたけど。
審判がプレーヤーに
「どうだ?」って聞いたりしてましたから(笑)。

――家の競売とかはどうでしたか?

岡田
これも、ちょっとおかしかったですね。
私がダークブルーとイエローを持っていて、
相手がレッドとライトパープルを持っているときに、
家の競売になったんですが、
私が家を落札したら
「イエローに建てなくてはならない」
相手が家を落札したら
「ライトパープルに建てなくてはならない」
って審判がいうんですよ。
「おかしいじゃないか」
って聞いてみたら、
「競売のときは自分が持っている一番安い土地に
 家を建てなくてはならない」
っていうルールがあるって言うんですよ。
どこにそんなルールがあるんだか(笑)。
でも、
「あらかじめこの土地に家を建てたいと宣言してあれば、
 一番安い土地でなくても建設してよい」
っていうんで、次の競売からは
「ダークブルーに建てる」とか宣言しましたけど(笑)。
また、家の建設定価以下の価格で落札しても
構わなかったですね。

――時間切れのときとかはどうでした?

岡田
90分の時間切れがきたら、
日本のように
「次の人がサイコロを振って終わり」とかではなくて、
そのままゲーム終了でした。
ですから、時間切れ間際にサイコロを振りたくないときは、
自分の番がきてもサイコロを振らないでいれば、
時間に救われるということもあるかもしれませんね。

――交渉中に、相手にサイコロを振られてしまうとかは
  ありました?

岡田
はい、ありましたね。
ただ、「ウエイト!」って言っておけば、
振らないで待ってもらえるんですけどね。
ただ、「リザベーション」っていう
わけわかんないことがありまして(笑)。

――それは?

岡田
はい、自分のサイコロ番で相手の交渉が長いときに、
審判に「交渉が長いんですけど」と断っておくと、
「OK! リザベーション」とか言われて、
相手の交渉後にサイコロを
「優先的に」振る権利がいただけるんです。
つまり、相手の交渉がまとまっても、
その相手が家を建設する前、
つまりレンタル料が高くなる前に
サイコロを振らせてもらえるんですよ。

――それは確かにわけわかんないですねぇ(苦笑)。

岡田
細かいところでは、
テーブルにつくと、もう既に
各プレーヤーの座る席が決まっているんです。
それで、サイコロを一番に振る人だけ決めて、
あとは時計回りということになります。
日本だと、サイコロを振る順番を全員で決めて、
その順番に座りなおしますよね。
あと、駒もスタート順に選ぶのではなく、
勝手に選んでました(笑)。

【世界選手権大会の概要】

――今回の世界選手権に出場した国は、
  今までよりも多くて
  38ヶ国39名(※35)だったそうですね。
  岡田さんの実力が、いくら抜け出ているとはいえ、
  勝つのは大変ですよね。

※35 38ヶ国39名
   38ヶ国(地域)の代表と、
   前回チャンピオンの39名が参加しました。

岡田
さっき出ましたように、普段と違う「ドル制」ですし、
どういう相手なのかも手探りでしたから、
始まるまでは結構不安でした。

――バンカーはやはり、
  本物の銀行員さんとかだったんですか?
  前の世界選手権ではそうだったんですが。

岡田
はい、本物の銀行員さんが6名くらいいて、
バンカーをやってました。
ただ、9テーブルあったので、
残りはハズブローのスタッフが入って
バンカーをやってました。
プレーヤーはサイコロを振るのがとにかく早かったので、
銀行員さんもスタッフも
モノポリーになれているわけではないので、
おぼつかない感じでした。

――予選は3回戦だったということですが。

岡田
1日目に予選を1回、
2日目に予選を2回やって、
あわせて予選3回戦の合計資産額の上位5名が、
3日目の決勝戦に進出できるという仕組みでした。
決勝戦は一発勝負で、勝った人が世界チャンピオンです。

――その間に公式の観光ツアーとかも
  用意されていたらしいですね。

岡田
1日目の予選のあとに、
ナイアガラの滝への観光が用意されていました。
かなり強行軍だったんですよ。

(つづく)

2000-12-18-MON

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