三重県の県立美術館で、 大橋歩さんの展覧会が開催されています。  この展覧会を準備中の、10月のある日、 大橋さんが「ほぼ日」にいらっしゃいました。 12月で終了する雑誌『アルネ』の取材で、 糸井重里にインタビューをするために。  インタビュー終了後は、穏やかな雰囲気はそのままに、 糸井とのおしゃべりの時間になりました。 おしゃべりのなかに展覧会の話題が混ざっていたので、 それをそのまま、ここに掲載いたします。 「大橋歩展」、どうやら必見のようです。
  • 大橋歩さんのプロフィール。
  • 「大橋歩展」はこんな展覧会です。
  • ちょっとくわしい美術館へのアクセス。
  • 別冊アルネ『三重県へ』も一緒に!
  • 展覧会のカタログ、おすすめです。
その4 400点の大橋さんを。
糸井
『アルネ』は次の号で。
大橋
そう、終了になります。
糸井
期間としてはそんなには長くないですよね?
大橋
でも『アルネ』は7年なんです。


糸井
え? そうでしたか。
『平凡パンチ』よりは短いけど、
長いですね、やっぱり。
大橋
『平凡パンチ』は7年半です。
糸井
そうでしたっけ?
もっとずっと長いと思ってた。
大橋
そうなんですよ。
糸井
ご自分でもそう思いますか。
大橋
パンチは週刊だから数も多いんですけど、
それにしても長く感じてます。
糸井
そうかあ、若い時は長く感じるのかもね。
大橋
ええ、そう思います。
糸井
『アルネ』は短く感じましたもん。
大橋
私にとってもいちばん短いです。
糸井
ですよね、きっと。
大橋
ピンクハウスはそこそこ長くて
10年なんですよ。


ピンクハウスのための
イラストレーション(1980~90年)

糸井
そうですか、そんなに。
大橋
でも、いちばん長く思ってるのは、
やっぱりパンチでしたね。
たった7年半だったんだなあと。
糸井
7年半。
大橋
いつも7年くらいでひとつの仕事に
飽きちゃうんですよ。
ピンクハウスも8年目の時に
やめたいと言ったんです。
でも「あと少しやってください」と言われて
10年までやったんですが、
その2年っていうのが‥‥もう‥‥。
これは、いつものことなんですけど、
パンチのときもそうだったんです。
やめさせてくださいってお願いして、
「わかりましたけど
 今年いっぱいやってください」ということになって‥‥
それからがよくないんです。
あとちょこっとだから頑張ろうと思うんです。
でも、たのしくできなくて。
糸井
ああ、それは気をつけないといけないですよね。
自分でもそれはありますよ。
大橋
本当に。


糸井
──もうすぐですよね、展覧会。
10月の24日から?
(※この対談は10月上旬のことでした)
大橋
はい。もう本当にすぐなんですけど、
実は、アートの部分で
まだできていないのがあるんです。
あまりにも大きくて。
糸井
仕事が残ってるんですね。
大橋
そうです、残ってる。
変なものをくっつける仕事が。
糸井
変なもの。
大橋
何ていうんでしょう‥‥
ピンクのウネウネしたのがあって、
それがたくさん必要なので、
そこはボランティアの方に
手伝っていただいているんです。
糸井
ボランティアの方が。
大橋
ピンクの布を縫い合わせて、
中に綿を詰めてウネウネを作るんですけど、
場所に行ってみたら足りないんです。
「すみません、足りないんですけど」と言ったら、
みなさん見に来てくれていて、
「あ、これじゃ足りませんね、大丈夫です」って。
今も作り続けてくださってるんですよ。


糸井
まさしくそれに、
日比野克彦くんがやられちゃって、
すっかり夢中になってたんです。
ボランティアの人と一緒にっていう。
あれはもう、本当に、
うれしくておもしろいらしいですね。
奈良美智さんもそうですよ。
展覧会にはたいていボランティアさんと
一緒にやるものがありますでしょ。
大橋
あ、そうなんですか。


糸井
しびれるくらい、おもしろいらしいです。
大橋
私は初めてですから、もう恐縮して。
みなさんものすごく
たのしそうにやってくださってて、
ありがたいなあと思ったんです。
糸井
その醍醐味はなかなか味わえないですよ。
大橋
ピンクのウネウネを作っていて、
誰も「これ何?」って
おっしゃらないのがすごいです(笑)。
糸井
信頼関係ですよね。
大橋
こういう布のチューブに
延々と綿を詰めていくだけの仕事なんですけど、
みなさんがぜんぜん変なものと思わないで
やってくださって。
ほんとに、ありがたい。
糸井
いいですよね。
日比野くんの話とか聞いててやっぱり、
何ていうんだろう‥‥
他人の体と自分の思いが一緒になって
作品になるわけじゃないですか。
大橋
はい、はい。
糸井
その大きさの自分になっちゃうわけですよね。
大橋
ああ‥‥。
糸井
ご主人と引っ越す話もそうだけど、
「セットですね」っていうのと同じように、
「集団でセットですね」ってなった時に、
生き物としてのよろこびが
うまれてくるんじゃないかと思うんですよ。


大橋
そうかもしれないです。
なにしろ初めての経験なので。
糸井
個人の仕事ばっかりでしたもんね。
大橋
そうなんです。
ひとりで撮りに行って、ひとりで机の上で、
みたいなことばっかりだったので。
糸井
だからきっと、
すごく初々しい経験になったんじゃないですか。
大橋
ええ、すごいですね。
糸井
ぼくが今、
会社をやってることもやっぱりそうですよ。
それまではひとりだったから。
大橋
ああー、なるほど。
糸井
その、ピンクのウネウネも
たのしみになりました。
大橋
ああ、どうしよう‥‥
「なんですかこれ?」って、
笑われるかもしれない。
糸井
いやいや(笑)。
大橋
こういう展示みたいなときって‥‥
ちょっと恥ずかしい感じがあるんです。
もちろんそればっかりじゃなくて、
「いいの、気にしなくて」
っていう気持ちもあるんですよ。
でも観に来てくださった人には、
「あ、ちょっとこんなもので」
みたいなことをすぐ言っちゃったりするんです。
糸井
恥ずかしがり屋さんだから(笑)。
大橋
でも、恥ずかしいんですけど、
こういう展覧会が実現していくことは、
すごくうれしいです。
幸せだなあと。
糸井
やっぱり、時ってあるんですね。
大橋
あるんですね。
糸井
あるんですよ。
大橋
よかったです、年をとって。
糸井
うん。
それは本当、思いますね。
大橋
本当に。
糸井
‥‥しみじみしたりして(笑)。
大橋
すみません(笑)、
ついおしゃべりが長くなっちゃって。
糸井
こちらこそ。
展覧会前のたいへんな時期に。
──あれですね、
たとえば関東からだと
三重に行ったことがない人も多いでしょうから、
アクセス、みたいなことも
ちょっと詳しくご案内しながら、
「三重県へ行きましょう」
ということをやらせていただくと思います。
大橋
ありがとうございます。
ちなみにこの前、
夫がひとりできたんです、ひとりで。
糸井
ひとりで、三重の美術館まで。
大橋
はい。
名古屋で近鉄に乗り換えるんですね。
JRでもいいんですけど本数が少ないので、
「近鉄の特急に乗って、
 それでいくつか止まるから津で下りてね」
ってちゃんと話をしてたんですよ。
してたのに、当日‥‥
美術館の方が「大変です!」って。
糸井
あー(笑)。
大橋
「石井先生が名古屋から大阪まで、
 ノンストップの電車に乗られました!」って。
糸井
やっぱり(笑)。
大橋
日頃からそういうところがすごくあるので、
「ああ、やったね、しょうがないよね」と。
糸井
じゃあ、
「乗り換えに注意!」というご案内もして、
「津駅にとまる電車に乗ってください」と。
大橋
はい、よろしくお願いします。
糸井
きょうは長い時間、
ほんとにたのしいおしゃべりを
ありがとうございました。
大橋
ありがとうございました。


 
(糸井とのおしゃべりは終了です。
 11/28は、三重県立美術館から
 展示のようすなどをテキスト中継する予定です。
 どうぞおたのしみに!)
  2009-11-17-TUE