「八ヶ岳倶楽部」編 今回の先生/柳生真吾さん
名前その63 ノリウツギ
ゆったりと続いてきた八ヶ岳のみちくさも、
そろそろゴールがみえてきました。
雑木林を出た柳生さんと吉本さんは、
なだらかな坂道をのぼり
「八ヶ岳倶楽部」の入り口へと向かいます。
吉本 そろそろ? ゴール?
柳生 そうですね、そこが、ほら、
「八ヶ岳倶楽部」の入り口ですから。
吉本 ほんとだ。
雑木林を抜けて、
このあたりをぐるっと歩いてきたんですね。
柳生 そう。
けっこう歩いたと思いますよ。
吉本 なんだか、ぜんぜん疲れてません(笑)。
柳生 ねえ、まだいけますよね(笑)。
吉本 きもちいいし、
いろんな植物があるし‥‥
あ、ほら、あそこにもあんなにいっぱい。
柳生 咲いてますね。
吉本 あの花は‥‥
今回いちばん最初に教えていただいた
アジサイですか?
柳生 よく似てますけど、
あれはノリウツギっていうんです。
吉本 ノリウツギ。
柳生 皮をとって揉むと、
和紙をつくるときの糊がとれるんです。
吉本 糊。
柳生 ええ。それで、ノリウツギ。
「ウツギ」は漢字で書くと
空っぽの木、空の木。
吉本 あー、そうなんだぁ、
空(うつ)の木だから、ウツギ。
柳生 そう、中が空洞になってるんです。
吉本 なるほどー。
柳生 で、これもやっぱり、
花びらに見えるのは
虫を呼ぶための飾りなんですよ。
吉本 そこはまたアジサイといっしょ。
柳生 そういうことです。
このなかに、ほんとうの花が‥‥
吉本 はい、はい。
柳生 まだつぼみですけど、
あるでしょう?
吉本 ある、あります。
このちいさいのが、花になるんですね。
柳生 はい。
吉本 ‥‥うーん、
なんでこんな高い場所に
アジサイが咲いているのかと思ったら‥‥
柳生 ノリウツギなんです。
吉本 そっかぁ‥‥おもしろいなあ、ほんとに。
柳生 というわけで、そろそろゴールかな。
吉本 そうですね。
柳生 ‥‥あ、でもそうだ、
最後に約束していたあれをお見せしないと。
吉本 ん?
なんでしたっけ。
柳生 行きましょう、
たしか、あっちにあるんですよ。
アジサイによく似たノリウツギ、覚えました?
漢字で書くと「糊空木」。

ゴールを目前に
柳生さんが思い出した約束とは、
いったいなんなのでしょう?
どうやら最後にもうひとつ、
みちくさのことを教えてもらえるようですね。

次回、木曜日の更新で「八ヶ岳倶楽部」編は最終回です。
(今回、吉本さんのエッセイはお休みです)
2010-09-28-TUE
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(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN