「八ヶ岳倶楽部」編 今回の先生/柳生真吾さん
名前その56 ママコナ
柳生さんと吉本さんは、のんびりと雑木林を進みます。
ふつうに歩いていたら通りすぎてしまいそうな場所で、
柳生さんが足をとめました。
指さす先にある、ちいさなピンクの花の名は‥‥?
柳生 ちらちらと見えてますが、
わかりますか? このピンクの花。
吉本 はい、かわいいのがありますね。
柳生 もうちょっとすると、
ここはピンクの花でいっぱいになります。
柳生 この人の名前は、ママコナといいます。
吉本 ママコナ?
柳生 ママコナっていいます。
吉本 不思議な、不思議な形。
ママコナ‥‥。
柳生 ママコナの「ナ」は、
草という意味なんですけど、
「ママコ」はどういう意味かわかりますか?
吉本 ママコ‥‥
あのぅ、義理のお母さんの‥‥?
柳生 ん?
吉本 あんまりいい言葉じゃないんですけど、
血のつながっていない子どものこと?
柳生 ああ、継子(ままこ)ですね。
吉本 ちがう?
柳生 そうですね、それもママコですね。
うん。
これは、そのママコじゃないんです。
吉本 じゃあ‥‥ご飯?
柳生 そう、ご飯。
正解。
マンマ、ご飯粒。
漢字で書けば「飯の子」です。
吉本 米粒みたいに見えるからでしょうか?
柳生 そうそうそう、すばらしい。
この白い部分をお米に見立てて。
吉本 ほんとだ、米粒みたい。
柳生 さっき吉本さんがおっしゃった、
「継子」がついた植物もあるんですよ。
吉本 あるんですか。
柳生 ママコノシリヌグイっていう草があります。
吉本 えーー?!
柳生 それはね、葉っぱも茎もぜんぶトゲトゲで
さわるとすっごく痛いんです。
吉本 そんなに痛いもので
子どものお尻をぬぐうの?
それ、ひどくないですか?
柳生 ひどいですよ。
その草で子どもいじめるっていう意味ですから。
でも、そういう名前なんです。
吉本 うーん。
名前をつけられたほうも
たまったもんじゃないですね。
柳生 ほんとうに。
‥‥で、こっちのママコナの話に戻ると。
吉本 はい。
柳生 おもしろい特徴があるんですよ。
虫の目からは、
このママコの部分がぶわあって
光ってみえるんだそうです。
吉本 光ってるんですか、これが?
柳生 「虫の目カメラ」っていう、
虫の目で見たらどういうふうに写るか
っていうカメラがあるんですよ。
それで、これを見ると、
このママコが光ってるんです。
吉本 人間の目には見えない光‥‥?
柳生 紫外線。
紫外線をここから出しているんです。
吉本 えぇーーー?
柳生 ぼくらは白にしか見えないけど、
虫の目からはパーッと、
ここがネオンサインのように光って見える。
吉本 それで虫が来ちゃうんだ。
柳生 そのとおり。
虫がこれを見たら、
もう行かずにはにいられないっていう。
吉本 繁華街のネオンサイン。
「いらっしゃいませー」って(笑)。
柳生 そうそうそう(笑)。
吉本 すごいねぇ。
柳生 すごいでしょう?
たいしたママコなんですよ。
ご飯粒に似ているからママコナ。
これも覚えやすい名前ですね。
紫外線を出しているお話も興味深かったです。
それにしても、ママコノシリヌグイ‥‥。
かわいそうな名前ですねえ。

今回、吉本さんのエッセイはお休みです。
次の「みちくさ」は、火曜日に。
「八ヶ岳倶楽部でみちくさ」編は、
火・木・土の更新でお届けいたします。
 
2010-09-11-SAT
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