「「冬の都会で」編  今回の先生/諏訪雄一さん プロフィールはこちら
名前その22 スイバ
※この回を更新した後に、読者の方から、
 「これはウラジロチチコグサです」
 というご指摘のメールをいただきました。
 その後、取材場所からこの植物が姿を消していたため
 確認できずにいたのですが、
 どうやらご指摘は正しいようです。
 同じ植物に出会ったら、あらためてご紹介いたします。
 それはそれといたしまして、
 この回の会話をおたのしみくださいませ。
冬の都会を歩いては、
みちくさを見つけて、しゃがみこむ。
これをもう、何度も繰り返しています。
さて、
諏訪さんが解説してくださっている植物は‥‥?
 
諏訪 これもやっぱり、ロゼットになってますね。
吉本 ほんと、ぺたーっと姿勢を低くして。
諏訪 北風を、やりすごす。
吉本 この子はなんていう名前なんですか?
諏訪 これは、スイバっていうんです。
 
吉本 スイバ。
諏訪 スカンポともいうんですけど、
ほら、よく子どもたちが‥‥
吉本 ああ! これがスカンポですか?
諏訪 そうです、スカンポ。
ちいさいころ食べたりしませんでした?
茎が出てきたら皮を剥いて。
ちょっとすっぱい味で。
吉本 わたしは食べたことないですけど、
でも、スカンポっていうのは
よく聞く名前ですよね。
諏訪 スイバは、漢字だと、
すっぱい葉っぱ、
「酸い葉」って書くんです。
吉本 へえ〜。
諏訪 ぼくはけっこう食べてましたよ、
幼稚園のころ(笑)。
吉本 そうですかあ、スイバ、スカンポ‥‥。
こうやって見ると、
ちょっとおしゃれな感じもしますね。
 
諏訪 ですね、ぼくもこれ、おしゃれだと思います。
‥‥おしゃれといえば、
あの、これはちょっとスイバの話じゃ
なくなっちゃうんですけど‥‥。
吉本 なんでしょう?
諏訪 スイバで思いだしたんですよ。
これに、見た目がちょっと似ている野菜に、
スイスチャードっていうのがあるんです。
吉本 スイスチャード。
諏訪 フダンソウ(不断草)ですね。
ほんとに、余談なんですけど‥‥
それがすごくおしゃれな野菜で。
吉本さん、見たことありません?
吉本 うーん‥‥見ればわかるのかなぁ。
諏訪 最近、ちょっとしゃれたレストランにいくと、
まっ黄色だとかショッキングピンクの茎が
サラダに混ざって出てくるんです。
吉本 ショッキングピンク?!
野菜ですよね。
諏訪 そう、もうほんとにカラフルなんです。
食感もちょっと、スイバに似てるかな‥‥?
 
吉本 そんな色の野菜が‥‥不思議です。
諏訪 スイバはタデ科で
スイスチャードはアカザ科ですから、
別の植物なんですけどね。
吉本 へええ〜、見てみたい。
諏訪 最近よくみかけるんで、
たぶん近々食べることあると思いますよ。
すごくよく出てますから。
‥‥ごめんなさい、
思い出しちゃったもので、つい(笑)。
 

今回は「スイバ」のお話からたのしく脱線して、
「スイスチャード」という
不思議な野菜の名前も登場しました。
諏訪さんはやっぱり、
畑で育つ野菜たちのことがいつも頭にあるのですねー。

ともあれ、今回覚えるのは「スイバ」です。
別名・スカンポ。
すっぱいから、「酸い葉」。
覚えました?

次の更新は、来週の月曜日に。
「冬の都会でみちくさ」編、最終回になります。

 
吉本由美さんの「スイバ」
 

諏訪さんにスイバの話を教わったその翌日に、
予言どおり、ぴったり、ばっちり、
近所のスーパーマーケットの有機野菜コーナーで
色鮮やかなスイスチャードに出会ったのだ。
この店には週2回も3回も来ているが、
もちろん見たのは初めてのこと。
これって諏訪さんと「スイバ」の"おみちびき"?
まあ、私自身、神様のいたずらに
遭遇しやすいタイプなので、
こういうヘンなことはよく起きるのだが、
それにしても派手な色にはビックリした。
ほうれん草によく似た葉っぱの茎と葉脈が、
黄色、オレンジ色、赤、ショッキングピンクなどの、
野菜にはあるまじき色をしている。
これは自然の色なのかと、売り場の人に確認すると、
「ああ、スイスチャードの色ね。
 もともと黄色はありましたかね。
 ピンクは改良かもしれませんね。
 きれいだからね、ときどき置いてはいますけど‥‥
 あまり売れない」
ということだった。
カラフル過ぎて拒否反応が起きるのかもしれない。
しかし私はせっかくの"おみちびき"だから購入した。
一束でサラダ3、4皿分の量があり、
一人暮らしにはずいぶんお安い買い物だ。
帰る道みち、ちょっと茎を囓ってみた。
スイバ(酸い葉)に似ているくらいだから
酸味を期待したけれど、これは酸っぱくない。
家に帰って、葉をちぎり、カラフルな茎をぱらぱらかけて、
塩とレモンとオリーブ油で和えた。
一人のテーブルが、パッと華やいで賑やかになった。
「スイバ」と諏訪さんの、"おみちびき"に感謝。

2009-03-27-FRI
次へ 最新のページへ 次へ
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN