SHIMIZU_MICHIKO
清水ミチコの試供品無料進呈
(秘密厳守)
1999年8月の日記

第86回

8月1日・日曜日
羽田から金沢へ。
空港で「伝染るんです・5」を買い、飛行機で読む。
シティモンドホテルというところでライブ。
ここはめずらしいことに、
ホテルなのに、小ホールがあるのだ。
デラックスなシャンデリアの大宴会場じゃない。
いいねー。金沢、リッチだねー。
お客さんもデラックス?で、本当に
「白いハンカチで口を押さえながら笑ってる女性」が
客席にいた。
私はこれをまだ1回もやった事がない。
いつか、記者会見でね。何の。

8月2日・月曜日
そのまま福井へ行き、「おかず屋さん」ロケ。
「実はね……」で始まった、
あるおっさんの自慢話(カネ)にあいづち。
途中からうざったくなってきて、さりげに席を移動。
おっさんたちは本当にカネとカネの話が好きだなー。
「100円あげるからあっちに行ってろ」と、
大空にぽーんと投げてやさしく言えたらなー、と想像。

終了後、「映画に行こうよー」とウチのスタッフを誘う。
「何時から何やってるか、
ぜんぶ私が調べるからさー。ねー」とたのむ。
映画館を調べ、電話、かたっぱしからかける。
「ぴあ」のなかった頃を思いだし、楽しくなってきた。
「そちらの映画館の場所はどこですか?」と聞いたら、
「ウチの映画館を知らない人がこの世にいるのか!」と、
驚いたような声だったのがおかしかった。
場所を聞かれたのは初めてみたいだった。
「ハムナプトラ、7時からなら見れるって。場所はここ」
と指定。
しかし、映画はつまらなかった。
虫がくどい。

8月3日・火曜日
「おかず屋さん」3本収録。
東京へもどり、夜、LFでラジオ番組の録音。
自分の夏休みをとるため、スケジュールも忙しいが、
こうやってまわりにも迷惑をかけてしまっているの。
でも死守するの。
ヤノッチもさすがに疲れてあまり話も出ないの。
でもマイクの前だと元気になるの。
元気なふりをしていると
本当にたちまち元気になってしまう不思議。(字余り)

8月4日・水曜日
郵便貯金ホール(メルパルク)でライブ。
全国の保母さん対象の関東編というわけです。
一見、コギャルたちとなんら変わりはない
保母さん1800名。ほぼ、保母。
でっかいステージで気持ち良かったー。
ピアノもいいやつで、リハから弾きまくり。
「ピアノどころか、ジァンジァンより
自分の声がよく聞こえる!」と言ったら、夫に
「ジァンジァンのスピーカーは
モノラルだったからなあ。」と言われた。
それでミュージシャンたちはあそこで、
わざわざスピーカーを搬入してたわけだ。
そうだったのか!
ステレオ・スピーカーばんざい!

そのあとNHKで8月19日の番組の打ち合わせ。
現場の仕事は好きだけど、打ち合わせみたいなのって、
いきなりたるくなる。
会議室中にエナジーフローが漂っていた。
家に帰ってコドモの部屋で、そのままコドモと一緒に寝た。
タバコ吸わない人のベッドは、
いい香りまでついてるような気がする。

1999-08-24-TUE

第87回

8月5日・木曜日
高田文夫さんが夏休みのため、ビバリー昼ズは
海砂利水魚としゃべった。
久しぶりー。
とにかく何をやっても上機嫌な私。
そのあとCBCを終え、麻布で「アド街ック天国」の
打ち合わせ。
今度、高山で(番組内の)CM撮影をするのだ。
そしてこれが、国内最後の仕事となる。ふふふふー。
そのあと家に帰って荷作り。たくさん本を詰めた。
夜10時の飛行機で、家族との夏休みが始まるのよーん。
どこかは教えないわー。アロハー。
部屋から一歩も出ず、海を見ながら
「何も考えない」ってのをやってみるのだー。

機内で「この気分にピッタリ合う、おだやかーで、
かつ、フレッシュな音楽」を聴こうと、
チャンネルを探していたら、高田文夫さんが一席やってた。
すぐ変えた。

8月6日・金曜日
古ーいコンドミニアムに到着。
ボロくて静かで安くて、外人さんばっかでー、
音にしたら、ワーイ、キキッ、ってカンジ。
どことは言えないけど。ごめんね。

ここでしか着ることのないであろう、
ハデハデなミニワンピースを着た。
気分は日系人なのであーる。
昼寝したあと「マリカのソファー」を読む。
コドモも起きてマンガ。
夫は松本清張。
誰かがごはんと言い出さない限りはこのまま読むぞー。

夕方、中華料理を食べ、
夜、海を見ながら「何も考えない」をしようと、
一人ベランダの椅子に座った。
しかし、実際のところなかなかこれが難しい。
ぼーっとできるのは顔だけで、あんがい頭の中は
いろんな事をしゃべり出すもんです。
頭の中に流れてきた歌にもストッパーがきかない。
ずーっと鳴っていた。
(しかもあまり好きじゃない、
ナショナル住宅のテーマソング
「家を作るーならー」ってヤツ。
「思うのであーりーますー」のところが、
とくにくやしいカンジ)
あんがい「本当に何も考えない」って事って、
修行がいるよーな事なのかもわかりませんね。
いかに「ぼーっとした女子高生」だって、
これは無理だろうて、と、
今度はその女子高生の事を考え始めたりした。
いかんいかん。

8月7日・土曜日
朝起きたら、夫がいなかった。
夫は昔からものすごい「散歩」好きで、
旅行のたびに一人、遠出をして帰ってくる。
これがぜったいくたびれるので、家族は誰もつきあわない。
今日は「適当に3時間くらい」歩いてきたのだそうだ
(3時間って散歩って言えるんだろうか)。
結婚する前も、この人と歩き始めると
「じゃ、次の駅まで」とか言ってえんえん歩くので、
心の中でしょっちゅう文句をたれていた。
ブランチを作って食べ、いざ泳いだら寒かった。
コドモは一般的に、なぜ平気なのだ。
「カゼの子」というけど、コドモというもの、
本当に体感温度に鈍感なのかもしれない。
小さい頃は「そんな格好で風邪ひくじゃないの!」
なんてしょっちゅう言われてましたし。

コドモに「いろんなもぐりのしかた」を見せてもらった。
「では」という表情が、かわいー。
私は「寝泳ぎ」をした。
上向きで寝たまま、えんえんと浮いていられるというのが、
私の特技。いいでしょう。これだと寒くないし。
本当は、そのまま本も読めるんだけど、
これやるとすごーく「これ見よがし」みたいな
「自慢げーな姿」になる。無念である。

そのあと親子で「スターウォーズ・エピソード1」
字幕スーパーなしに挑戦。
理力(フォース)で観ろ、と説得。
映画館ガラガラ。
途中、迷子になった部分もあったが、
なんとか宇宙に飛んできたーっ、て気分で楽しかった。
コドモ、C-3POが気に入ったらしい。
うまいことマネをした。
サイズもそっくりなのでおかしかった。
夜、確かユーミンが「小道に、神を感じた」と、
雑誌で言っておられた
「ロミロミマッサージ」に電話予約。
「いっぱいですが、あさってならOKです」というお返事。
ミロミロ、と、心でしゃれ。

8月8日・日曜日
朝、また夫がいなかった。
「散歩男だよね」と言うと、
「散歩、一回くらいつきあってもいいな」と、コドモ。
「でもおとーさんは一人がいいんじゃない、きっと。
そーゆー時間が欲しいのかもよ」
などと噂しつつ、サラダ、ベーコン目玉焼き、
トースト、コーヒーを作った。
こういう所での料理はなんて楽しいのー。

コドモ、宿題している間に、宮部みゆき読む。
黒人がいきなり部屋に侵入してきたと思ったら、夫だった。
灼けちゃったよ、と言ってた。当たり前だ。
買い物に行ったら、サイババ・グッズに、ブッダ関係、
クリスチャン関係、ヒーリングCD、パワーの石など
売っているニューエイジ・ショップ発見。
購入して行く人をじっくり拝見。
ちゃんと「そういう顔」をしているものだ。

ふと見ると「サイキック・リーディング
(15分35ドル・30分60ドル・1時間100ドル)」
と書いてあるポスターがあった。
ヒラメキ。ぜひ、やってみたい。
ネタになるかもしれないし、
逆にとんでもなくはまるかもしれない。
どっちにも惹かれる。わくわくする。
「日本語の通訳の方っているんですか?」と聞いたら、
「ちゃんと予約すればつきます」とのことで、
「じゃ、あさって!」とやや興奮気味に予約。
鼻息荒くおとーさんに話す。
詳細は次回に。
では、乞うご期待。

1999-08-28-SAT

第88回

8月9日・月曜日
朝、また夫が散歩でいなかった。
今日は現地の大学まで行って来たそうだ。
私は「出た、ムダッ!」と言ったが、
「サイキック・リーディングとかいう方が
ずっとむだ好きだ」と言っていた。

ブランチ後、130度の日焼け止めを塗って、
3人でプールへ。また寒い。
私が低温人間だからなのだろうか。みんな平気そうだった。
夕方から友人お奨めのホテルへ移動。なるほど、豪華な。
でも、正直なところ、ボロ・コンドミニアムの方が
なんだか落ちつく気がした。
豪華って、シャンデリアにしろ、大理石にしろ、
クルーザーにしろ、なんか寒いんですよね。
低温という意味で。
予約したロミロミマッサージ受ける。
あー、いい気持ちーって以外、
深いモノはなにも感じなかった。
ロミロミにもいろいろあるのかなー。鈍感なのかも。

夕方、レストランに行く。
カベルネ・ソービニオン、おいしかった。
しかし、待っても待ってもコドモのだけで、
大人用の料理が遅い。
その旨、文句を言ったら、ウエイトレスが
「確かに、遅かったです。
今夜、パーティーを優先した私が悪かったのです。
マネージャーと相談しました。
お料理、全て無料にさせていただきます。
ソー、ソーリー」と、あっさり。
「いやいや、食べた分は払いたいのです」と
あせってぎくしゃくした英語で止めた。
でも、タダになっちゃった。

8月10日・火曜日
「サイキック・リーディング」、
ドキドキしながらショップの2階の個室で受ける。
リサという女性が見てくれて、
通訳の方が日本語で教えてくださるのだが、
私の背後や、顔などを見ながら言うのではなく、
ちょっと寄り目にするカンジで、
空間の中央一点を見て話す。
「前世から見てみます」と言う。
ちょっと笑いそうになっちゃった。
いきなり普通に言うんだもの。
とにかく私の前世は
「イタリア人で、被爆した人々の
皮膚を調査する仕事をしながら、
励ましの言葉で弱った人間をたくさん癒していた」
のだそうだ。イタリア。リタイア。
「そ、その前は何だったんですか?」と聞いたら、
「イギリスで、アートを見極める仕事で、
のちに画廊も経営してました。
絵を見極める、という目の力が大切な仕事です」
とまじめに。
「現在のあなたには、たいへん重みがあり、
かつ非常に明るいオーラを感じます。
人々を癒したり、アート関係に思い当たる何かを
お持ちではありませんか?」と言う。
アート。顔マネか。あれ、癒しか。
と同時に(いや、こうして占いみたいに、当たってる
ところを自分で探してしまうものかも)とも思った。
でもそのあと、
「あなたのお母さんはどーのこーの、
お父さんはどーの」と、ちょっとぎょっとするような
プライバシーな事実が当たっていくので、
「すごいじゃん!」と見直した。
立ち上がって拍手したくなった。
しかも、
「言いにくいのだけれど、
あなたは普段あまり、まじめな姿でいない事が多いようだ。
ちょっと不真面目?な印象です」なんて笑って言う。
どんな姿が写っているんだ。
でも、ピンポンじゃん! と、
ここですっかりミイラとりがミイラになっちゃった。
あんまり感激してたら、個人的に
「力になってくれる石」をプレゼントしてくれた。

帰りながら、この浮き立つような楽しさは、
もしかして、もうひとつ、
「自分だけの事を、誠心誠意、
心をこめて集中して話してくれる」ところにも
あるのではないか、とも感じた。
これって大人になると
誰にでも不足しがちなことですもんね。
いつか日本で流行るかも、と思った。

8月11日・水曜日
夫、散歩で、妻、読書、
コドモ、プールでプッカプカという構図、また再現。
プールサイドに、
日本人旅行客が置いていったらしき雑誌があり、
音楽雑誌をめくってみたら、世良公則の記事に
「俺は一生をかけて、世良公則になりたい」
と書いてあった。
切り取って、こういうのを集め、
いつかライブで何かを言いたい。
でも破る勇気がない。
せめてこの日記で、と思ったのでした。
夫の読み終わった松本清張「わるいやつら」を借りて、
はまった。単純に面白い! サイコー!
カネ欲もエロも、淡々と事務的に描かれている方が
ずうっとやらしーもんかも。

夕食、生まれて初めて「アーティチョーク」を正式に注文。
これって下の歯でこそいで食べるもんだったのか!
知ってましたか、皆さん!
いつか、茹でても茹でてもまずかったのは、
茎まで食べてたからだったんだ!と納得。
メニュー見ながら「チョコラテ!チョコラテ!」とコドモ。
見ると「CHOCOLATE」だった。笑った。
英語を読めないけど、ローマ字で読むのって、
なぜかおかしく、夫婦で、これは?これは?と、
どんどん読ませる。
「メヌ!(MENU)」
「スントリー!(SUNTORY)」
「ベー!(BEER)」
「フレー!(FREE)」など、
聞くたびになぜか笑いが止まらなかった。
コドモも笑っていた。

部屋に帰ってコドモ、テレビで昔の
「トムとジェリー」を見ながら、
人はこんなに笑えるものなのか、と思えるくらい
苦しそうにベッドを叩きながら笑っていた。
宿題、途中で完全に忘れられている。
こんなに笑わせられる制作者が羨ましかった。

そのあと日本のニュースで、
きんさんぎんさんの誕生日をやっていた。
「成田きん、ヨーダそっくり!」と、夫。
誰だってトシ取ると、シワの顔なんじゃない、
と言いながらも見たら、本当に似ていた。
アホ知的、と言ったら失礼か。でもそんなカンジ。
アホ知的。いいじゃない。

コドモが寝たあと、TVで「レニー・ブルース」の
ドキュメンタリーをやっていたので、深夜まで夫婦で観た。
わっ、そこまで写さないで! という部分もあり、
けっこうきつかった。でも顔がカッコいい。

8月12日・木曜日
帰宅。
数少ないメールの中、ナンシー関さんから1通きてた。
「(送った写真を見て)地団駄踏んでみました」に笑った。
「写真を見た瞬間、カメラをわしづかみにして、
飛騨高山のジャズ喫茶(私の実家)に行き、
写真を撮れない自分の行動力のなさがくやしい」
とあり、ひゃっひゃっひゃーと、爽快。

野沢直子の制作した映画を観る。
途中、ふと予感がして、コドモに見せないようにした。
「おめこちゃん」だって。
今度は私が地団駄踏んでみました、だ。
メールした。

8月13日・金曜日
「ごきげんよう」を観てたら、
「高校生になった清水ミチコ」の写真が出てきてびっくり。
X-GUNめ。
そのあと2本仕事。
夏休みは終わった。たまってた原稿書く。
でも、仕事もけっこう好きだ。
趣味かもしれない。

1999-08-30-MON

第89回

8月14日・土曜日
今日、本番前のニッポン放送のブースに、
小笠原局長がテンション高く、明るく入ってきて、
いきなり小林克也さんに「おはようーございまーす!」
と声かけて肩をもみはじめた。
10秒ほどたって、局長、もみながら
「おやっ? 肩、コッてないっすねえ!
いつもこんなにコッてないの?」と、まじめに驚いていた。
小林さん「え? コッてますよ、僕は」だって。
「いやあ、コッてないコッてない。
ぜんっぜんコッてない!」と、
言いきる局長もおもしろかったが、
しばらくして、小林さん、奥さんに
「肩、コッてるよねえ? 僕。いつも」と、
まじめに確認していたのがおかしかった。
局長と小林さんの両方の大人が、
まるでコッてた方がえらい、みたいな会話なんだ。
肩コリがあってこそ一人前の男、みたいな。

8月15日・日曜日
FM群馬で花火中継のゲスト。
気分よくしゃべっているのに、
アナウンサーの男性がいちいち
「どーですか、幸田シャーミンさん?
あ、楠田枝里子さんだ!」などと、
モノマネふってくるのがしまいにうざったくなってきた。
はい次これ、はい次これ、ってカンジ。
しかも「ふってあげた」みたいな顔でさー。
私の話も聞けよ!
いい事も言ってるじゃん!
今ボケたでしょ!
と最後はすっかり不満を顔に出してしまった。
もうここには呼ばれないな! きっと! と思ってたら、
別枠の時間でのレギュラーの話をいただいた。
わかっとるねー、だって。

それにしても
花火をあんなに近くでちゃんと見たのは初めてで、
これがけっこう感動。音もいいですよね。
一発50万円ほどもするんですって。
一発っすよ。
知ってましたか皆さん!
私は今までの人生の中で、
花火の値段なんてちっとも考えてなかった。
こんなに見事で立派なカネの使い方があったなんてね!
日本は、いいね!

8月16日・月曜日
ヤノッチ、コドモを誘って
ボーリングに連れて行ってくれた。
ヤノッチの行動力はホント、すごいなー。
よく小学生なんか誘ってくれるわー。
私はとにかく眠かったので、
昼寝したいよー、と甘えて寝る事にした。
コドモ、凄いコーフンして帰ってきて起こされた。
今って、ボーリングに
「ガーターが出ないようになるシステム」が
あるのだそうで、ヤノッチが
「そーいうのやってみる?」とコドモに聞いたら、
「やらない。ガーター出してもいいから、
自分でやりたい」と言ってたらしい。
「カンニングもさー、やっぱりした時気持ち悪かったもん」
と、私を見ながら言ってた。むせた。

8月17日・火曜日
日テレの峰竜太さんの番組に出演。
取材2本済ませて、東京国際フォーラムに行って、
デビッド・カッパーフィールドのイリュージョンを
ヤノッチと観た。
16列目と、前の方の席で観る事ができたせいか、
びっくりした。
目を疑ってしまった! イリュージョン!
デビッド・カッパーフィールドって、
外人なのに、やけに足が短いのだ。衝撃だった。
足長く見せるマジックなんて、簡単なのに!
まれに見る短さ! 個性的!
ホントに、舞台に出された、日本人のお客さんの方が
ずっと長かったんですよ!
外に出てもっとびっくりした。
おっかけがいっぱい! カメラいっぱい!
マジックもすごいんだけど、
そっち関係の方にびっくりしてしまった。
あと、本人が消えたり、宙に浮いてたり、
瞬時に遠くに出るのを普通にやってる、
ユーミンのステージってのは、
世界的にすごいレベルって事なんだなあ、とわかった。
今週は、日本人って凄い、と思う週間だ。

1999-08-31-TUE

第90回

8月18日・水曜日
先月ごろ、
「えーっ! いーの?」と言いたくなるような
映画のお仕事をいただいていた。
でも、ヤノッチが
「清水のスケジュールこんなんですが、いかがでしょう」
と、その方に相談したところ、
「えーっ! こんなに忙しいのーっ?」
(ホントにそう言ったそうだ)ってな事で、
今日、あらためて話がボツになってしまった。くしゅん。
私は今年から
「できるだけ仕事を断らないキャンペーン中」を
はってるので、こんな事にもなる。
コツコツやりなさい、とは聞くけど、
ちまちました仕事って入れないようにした方がいーのお?
などと考えてしまいました。

8月19日・木曜日
ラジオのあと、お台場のZepp Tokyoというクラブで、
NHKの番組「歌と踊りの大冒険」の司会。
ゲストの高野寛さんに、
「ほぼ日の清水さんの日記、読んでますよ」
なんて言われて、たちまち嬉しくなった。
ちまちまいいぞー。
(って、これって仕事じゃないんだけど)。

番組の収録後に、みんなでビールで乾杯し、
写真大会になったら、細野晴臣さん
「清水さん、顔マネしないの? じゃあ、僕、やろうっと」
と、おっとりと言い、
いきなり坂本龍一さんの顔になられた。
めずらしい人だ。
記念に掲載いたしました。


8月20日・金曜日
朝早くっから、車で岐阜・高山へ。
安房トンネルの開通で、到着が早ーい。
ドア・トウ・ドアで4時間。
仕事なんだけど、実家なんで、コドモも連れていく。

さっそく父親が「まあ聴け」と、
買ったばかりのでかいスピーカーから、
フルボリュームでジャズを流した。
あまりにも嬉しそうなので悪い気がしたが、
母親に「じゃあ孫をよろしく」と言って、
すぐにホテル(「アド街ック天国」の撮影の
集合場所だった)へ移動し、着替えとメーク。
ドレスでピアノを一曲弾いて、
着物に着替え、人力車に乗った。

終了後、世にもおいしい食事をいただき、
夕方、コドモと一緒に私の幼稚園時代からの友達である、
公ちゃんの家にぷらぷらと出かける。
公ちゃんは去年からアジア系の民芸小物ショップを
開いており、ちょっとの間「どれ」、と店番。
コドモはビーズでネックレスを作ってた。
信じられなーい! そっくりさんじゃないのー!
と、広島からきた高校生たちに囲まれた。
ビーズのネックレスができたのを見て、
「これって売り物? 私が欲しい!」
とおせじを言って買ってやろうとすると、
「お店に本当に置いてほしいからダメ」とコドモ。

8月21日・土曜日
高山の「ホテル・アソシア」(いーとこよー)で、
去年からお願いされていた1時間ライブ。
なつかしい友達がきてて、ちょっとうるうる。

そのあと家族と夕食。
その食後に、私の好きなラーメン屋さんへ。
贅沢っていうか、貧しいっていうか。
でも、高山のラーメンはだいたい小ぶりにできてるので、
いけるもんなんです。
実家では「ざぶっと、行くか? ざぶっと」
(ラーメン食べるという意味。方言ではない)
なんて言い方するので、ますます食べたくなる。

8月22日・日曜日
「偶然、きのうから高山に帰ってた」
という、よっちゃんが実家に来た。
小学生から一緒で、みんなの憧れの女の子。今もかわいい。
「公ちゃんと、食事に行くんかー」と
ヤキモチ風に私に言ったのがおかしかった。
私とよっちゃんと公ちゃんの3人は、
当時から仲がいいのに、どっちか取り合いの、
ヤキモチ焼きあい、みたいな仲だったんで。
よっちゃんチ(資生堂化粧品販売店)まで歩き、
アルプチン効果のエッセンスなどを買う。

夕食に家族で、
実家(スパゲッティ屋と、お弁当屋をやってるんで)
のものをいただく。これも私の家庭の味なんだなー。
ずるずる。
母親と話をしてるうちに、
「ピアノ見た?」なんて言うので4階に行ったら、
グランドピアノが置いてあった。
中古で買ったらしい。わーい。
帰宅した弟の
「矢野顕子のコピー・奥田民生のコピー(歌なし)」
演奏を聴く。

今やジャズよりも「矢野顕子様のピアノものCD」に
はまっているんだそうで、それはとても正しい、と評価。
この歌詞はこういう意味、あの曲はどうの、と、
兄弟で話しながら弾きあう。
それにしてもCD
「ピアノナイトリイ(PIANO NIGHTLY)」は、
本当におすすめです。

「パソコン貸してー」と言って、
このHPを見ようとしたら、
(遠くに行くと見たくてしょうがなくなるんですよね)
今、まさに故障中、と言われた。

1999-09-04-SAT

第91回

8月23日・月曜日
東京へもどる前に買い物。
ここは岐阜の高山なのに、
DEPTや、HOLLYWOOD・ランチマーケットなどが
並んである一角があるのだ。
しかも品揃えが豊富なんだなー。
明日のテレビ用の洋服を数点購入し、朝市によって野菜と、
ラーメン屋さんでラーメンまで買い、実家の家族と谷口さん
(壁の穴のやさしい店長さん、実の娘よりも長く
 ウチにいてくださっているありがたき方)に挨拶した。
お弁当をもらって、車に乗った。
手を振りながら、
「ちょっと泣きそうになっちゃた」とコドモ。
じわっとしてる間もなく、すごい渋滞にはまり、
なんと6時間。
音楽聴くのも飽きるしよう。
しかし、こんな時こそお弁当がありがたかった。
みょうがごはんと、煮物と、野菜のてんぷら。
お茶にコーヒー。おお、お菓子まで。
さすが家のママ、天職だねー、
サンキューベリーマッチー、と感謝して食べる。

8月24日・火曜日
「笑っていいとも!」のコーナーゲスト。
メーク室でみんなと軽く話をしてたら、
私が住んでいるマンションと、ココリコの田中さんの
マンションがすぐ近所だとわかった。
私もへえー、と少し驚いたが、田中さんは、何というか、
息が止まったくらいの、「驚愕」の表情だった。
それを見た私が、また再び驚いてしまったくらい。
驚きは伝染するもんなんですね。
暗闇などでのバッタリも、先に相手に激しく驚かれると、
驚かれたこっちがそれにもっとびっくりする、みたいな。
しかし、よく見れば田中さんは、
もともとそういう顔つきでもあるようだった。

ところで、田舎のおばさんと、都会のおばさんの違いは
この「驚き」具合にある、と思います。
都会のおばさんって、すぐに驚く、というか、驚き上手。
たとえば何かあげた時なんか、
「あらっ!! こんないいものをっ!?」と
ややオーバーリアクション。
田舎は、ちっとやそっとじゃ驚かないですよね。
じわー、の、しーん、って感じ。
「なんでくれるん……?」みたいな。

8月25日・水曜日
仕事から帰ったら、大橋君たち4名が家に来てた。
「ごきげんよう大賞の受賞、おめでとうございまーす」
だって。
「君のこと話したの、見た?」と言ったら、
「ハイ。お役に立ってましたねえー」と、
あいかわらず「ですます調」で嬉しくなった。
「すみませんが、テレビをつけてもいいですか?」
と聞くので、いいけど、何見るの? と聞いたら、
夏休みにずっと見てた「昼ドラ」にはまってるという。
「大好き! 五つ子」とかいうタイトルで、
見ながらウチのコドモも、
「私も時々これ楽しみなの」なんて言ってた。
おまえは30代の主婦か。
しかし他のコドモらみんな見ていたのだった。何なの。
夕方、それをヤノッチに話したら、即座に
「あ、あのドラマ! 私もはまってる!」と言う。
みんな、何なの……。いつのまに……。

8月26日・木曜日
お台場の帰りに、ヤノッチと遅いお昼ごはんへ。
麻布の焼き肉屋さんで、
ランチの「石焼きビビンバ」セット。
あまりにもおいしい。時間よ止まれ。
じゅっ、と香ばしい。甘くて辛くて香ばしい。
私は焼き肉屋さんの主役の「焼き肉」よりも、
脇役のメニュー(ケジャン、ナムル、ユッケ、
ビビンパなど)の方がずっと楽しみです。
最近の焼き肉屋さんには
「ランチ」というシステムがあるんで、
焼き肉ナシでも大手をふって単品でオーダーできるから
めちゃ嬉しい。

(もとスタッフの)美鶴ちゃんたち来宅。
娘さんの美雨ちゃん(1才)連れてきてて、かわいー。
しかし私が抱っこしたら、
たちまち火がついたように泣いた。
泣きたいのはこっちだー。
歌(まいごのまいごのー)など、気味が悪いくらいの
やさしいソプラノでゆったり歌ってあげた。
じっとニコニコ聞いていたので、ころ合い見て
また抱こうとしたら、また泣き出した。
こういう時って、親がおろおろしたりする。
(なついてあげて!)みたいな。
わかるわかる。大丈夫大丈夫。
「しかたないよ、そう面識ないんだから」と言ったのに、
コドモ、1才児をスタスタと抱っこして歩いていた。あれ。
それを見ててふと思いだした。
ウチのコドモが、やはり1才くらいの時、
テレビ局に連れてった時があったんだけど、
他の芸能人には誰にでもニコニコしてたのに、
松本人志さんが顔を出した時だけ、
ぎゃっ、というカンジで、たちまち火がついたように
泣きだした事があったのでした。
赤ちゃんって、みんな何かを、感知できるものなのね。
何かを。

ところで、「イチョウ」って、知人に聞いたところ、
なんと、の、の、脳軟化症に効くんだそうです。
じゃ、身体が摂取したがってた私って、もう始まってるの。

詳しくは、このHPのスタッフ紹介の清水ミチコの項目 参照。
わーん。

1999-09-07-TUE

第92回

8月27日・金曜日
宝島、夫と写真撮影する。
女子マラソンでニコニコスマイルだった
市橋選手を撮ろうと、外でニコニコ撮影したが、
あまりに似てないため、ボツに。

ヤノッチ、コドモを誘ってプールに連れてってくれた。
後ろ姿がまるで友達同士のようだった。ありがとー。
私は麻布のTWIGGY(美容院)に行き、
WAVEにちょっと寄って、青山ブックセンターへ、
と、独身のような3時間を満喫。
ブックセンターのレジの横に、
ポケモンカードが置いてあった。
そういえば、
野沢直子(サンフランシスコ在住)から聞いた話によると、
ここ最近、道を歩いていると、
しょっちゅう小さな男の子に「あ、見つけた!」
というような表情をされるんだそうだ。
続いて「ARE YOU JAPANESE!?」と、
必死の表情で聞かれるのだそうだ。
「YES」というやいなや、
「READ ME! READ ME! PLEASE!」とか言って、
日本のポケモンカードを
わらわらとポケットから出されるのだという。
「ベトベトン……」など路上で読んであげてるんだそうだ。
すごい事になってますな。

8月28日・土曜日
LFで生放送をして、家に帰り、
コドモと約束してた「自由研究」を手伝う。
到着すると、コドモ、すでにエプロンと
バンダナを用意して待っていた。
「カスタードプリン作り」をやるのだ。
私はもとケーキ屋さんでアルバイトしてたので、
得意になって教える。
砂糖を焦がしたカラメルの甘い匂いと、
焼きあがるあいだのバニラの香りが家中に広がって……。
と、まるでCMのようないい光景みたいだが、
夏のオーブンは最悪だった。汗だーらだら。

できあがったプリンの余熱をとり、
冷蔵庫で冷やしきるまでの間、
コドモはノートをとり、私は洗い物。
そのうち、いろんなところの掃除をしたくなり、はまる。
スカッ。
きれいなダイニングで、レンタルしたまま観てなかった
「シリアルママ」を見る。おもしろかった!
異常な心理モノはおもしろいな!

8月29日・日曜
名古屋CBCで「今田・東野の愛のホンネ家族」のゲスト。
また蛭子さんと御一緒だ。
本番中、話の流れから
「蛭子さんは、誰かのファンだったんですか?」
と聞いてみたら、
「僕はずっと、佐良直美」と、
ごく普通に言ったのに笑ってしまった。
なんでかと聞くと、
「気品があって、歌がうまいし、顔がかわいいから」
なんだそうだ。
気品。

そうして一本目が終わり、
楽屋で私や今田さんたちに聞かれるまま、
賭事などの話をするうち、
「あと一億円はためたいなあ」なんて
軽く言っちゃったもんだから、本番で
「こいつ、一億円欲しいんや! 汚い男やで!! 守銭奴!」
などとつっこまれ、また小さくなっていた。
 
帰りの新幹線のホームに、たくさん人が見に来ていて、
誰だろうと見ると、
「ドラゴンズの選手たち」がいらしていたようだった。
しかも私の前の車両には、SPらしき人がたくさんいて、
ヤノッチが見に行ったところによると
「菅直人代表」だった。
「写真、撮ってもらおーよ! HP用にさー!」と言うと、
「一緒に撮ってくださいなんて、どうしても言えない」
と言う。
本当だ! 私も言えないわ。
「SPがピストル持ってるかもしれないからかな」
と言うと、
「それはない、殺しはない」
とヤノッチ。
政治・芸能・スポーツと
車両をモーラしたのぞみだったけど、
雨で遅れて東京まで4時間もかかってしまった。

8月30日・月曜日
夫、皮膚科に行って帰ってきた。
このところ、なぜかしっしんができてるので。
皮膚科のおじいさんのお医者さんが、
「アレルギーかもしれませんねえ。最近、動物とか?」
と聞くので、
「あ、ハムスターを飼いました」と言ったという。
「どのくらいかな?」と、聞かれたので、
「2月っころでしたか……」と言いかけたとたん、
お医者さんが「ひ、ひいっ!!」という表情で、
瞬間、確かに椅子のまま後ずさったという。
同時に横にいた看護婦さんも、
「ひゃっ!」と目を丸くして凝視したんだそうだ。

「あの、2月っころ、って何かあるんですか?」
と聞いたら、
「え、今あなたニガツッコロって言ったの? なあんだ」
と、ホッとしたらしい。
お医者さんには、ニガツッコロが、
「ニヒャッピキっほど」と聞こえたんだそうだ。
ニガツッコロと、ニヒャッピキっほど……。
ハムスター二百匹じゃ、後ずさりもするだろうて。
そのあとも、
なんだかずっとお互いのニヤニヤが止まらないまま
診察されてたんだそうだ。

8月31日・火曜日
日テレの番組に出たあと、
ヤノッチと四谷でお昼(お蕎麦)。
そのあと、久々に友人のジャズピアニストの
中島久江さんと会った。

「私は今ー、ジャズっていう形にとらわれない
 ピアノ(演奏)に向かっててー」、
と、あいかわらず私の好きなおっとりした口調。
「ここで、せえので盛り上がろう!
 ジャン!で終わろう!」
というのに、すっかり「飽きて」しまったんだそうだ。
なんともったいない言葉。
「盛り上がらなくても、こういう絵を描きたい」
という方向が見えてきて、
そういう演奏だけをしてたくなった、と言う。

しかし需要は、つまり頼まれるライブは、
やはりいつもいつでも
「盛り上がるジャズ!」なのだそうだ。
特に地方ほど「できるだけ、盛り上げてネ」
という顔をされるのらしい。
「盛り上がりに富んだ演奏」、
それをずうっと目指しつつ、続けているのに、
空しく感じられてきた、と。

私が、
「じゃあ、場所によって、ここはプロとしての商売、
 ここでは自分の絵、というように分けるべきでは」
と言ったら、
「うーん、それがねえ、そーゆーことやってると、
 じぶんが表現したいのは何か、というのに、
 嘘つく事になるでしょ? それだとー、つまらないからー。
 ビンボーでも商売の演奏は、
 いっさい、やめようと思ってるの」
と言ってた。

私は感心すると同時に、すっかり手垢のついたような
自分の案が恥ずかしくなってしまった。
とりあえず、新宿PIT-INNなんかだと、
好きにやらせてくださるそうで、
それはありがたいスペースなんだそうだ。

もしよかったら、「ぴあ」など見て、
そういうクリアな考えを持ったピアニストの演奏を、
ぜひ聴きに行ってみてくださいな。
本当にいいピアノなんですよ。

1999-09-12-SUN

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