女王陛下のカップケーキ

台風がいくつか通って、
秋雨前線からの雨もやっと上がったら、
東京はすっかり秋になってました。

秋のはじめになると、
デパートでイギリスフェアが開かれたりして、
おいしそうな香りに
何となく吸い寄せられてしまうここ数年。

確かに、ちょっと肌寒くなってくると、
タータンチェックやツイードが恋しくなるような。
木の葉も少し色づく午後には、
紅茶とビスケットでひと息いれたいような。

しかも、どうもロンドンのカップケーキが
可愛くて、おいしいらしいのですよね。
日本では恐らく発想しなさそうなこの色合いや佇まい。
てのひらサイズのケーキのなかに
小さな外国が詰まってるみたいで、ちょっと素敵です。

そういえば、SATC(ドラマ「Sex and the City」)で
一躍、有名になった
マグノリアベーカリーに代表されるように、
カップケーキといえば、アメリカ!
っていうイメージがありますけど、
その人気の余波がイギリスにも押し寄せて、
ロンドンでもカップケーキは大人気だとか。

見た目も然ることながら、味もどことなく、
ふわっと外国が香る感じといったらいいのでしょうか。
外国資本のスーパーで売ってる
粉のケーキミックスを買ってきて
ケーキを焼いた時みたいな、
なんていうか全く複雑じゃない味です。
(↑ほめてます。)
しかも、このたっぷりなアイシング。
こういう、クリームとかをケチってない感じが、
もしかしたらまだ舶来ものに憧れや有難さを感じちゃう
理由ではないか?とさえ思ったり。

そして、さすが、ロンドン。
こんなデザインもありました。

カップケーキの上に、クラウンが載ってます。
この春におん歳、90歳を迎えられたエリザベス2世。
やはり、存在感は絶大なのですねぇ。

ロンドンオリンピックの年に
ダイヤモンドジュビリー(在位60周年)を
迎えられた女王陛下。
オリンピックの開会式では、バッキンガム宮殿から
ジェームズ・ボンドに警護され、ヘリコプターで移動、
ユニオンジャックのパラシュートで
ボンドとともにスタジアムに降り立つーー
なんて、VTRとライブ映像をつないだ
洒落た演出がありました。
リオオリンピックの安倍マリオ総理の元ネタはそこかな、
と思えますが、
やっぱり違いは、移動中の安倍総理に
「Prime Minister」と
大きくテロップが出たところでしょうか。
女王陛下は世界中で
最もテロップの要らない人物だものなぁ…と、
思い出したりしてました。

ついでに、ロンドン関係で聞いた話で興味深かったのが、
(談:イギリス文学・イギリス文化研究の教授)
ロンドンで話題になってて、
なかなかチケットが取れなかったと聞く
「チャールズ三世(King Charles V)」という舞台。
現女王陛下のエリザベス2世の
逝去後から始まるストーリーで(これも、すごい…)
あまりに長くプリンス オブ ウェールズだった
チャールズ皇太子が国王になった時のイギリスは……?
という風刺劇だとか。
(チャールス皇太子が国王陛下になると
 タイトルのチャールズ3世となるのですね。)
待ちに待った(?)国王の座についた
チャールズ3世の巻き起こす軋轢と、
その収拾に奔走するウィリアム王子とキャサリン妃、
一般女性とのスキャンダルにまみれる
次男のヘンリー王子や、
王室を悩まし続けるダイアナ妃の亡霊も登場するという
凝った内容で
2015年にはイギリス演劇界の権威である
ローレンス・オリヴィエ賞の最優秀作品賞も受賞、
ニューヨークで上演での評判も上々だったとか。
いやぁ、イギリス流のブラックって、
筋金入りですよね。喝采。

カップケーキから、
すっかりイギリスの話になっちゃいましたが、
ロンドンメイドでもニューヨークメイドでも
ホームメイドでも、
フォークや皿を使わずにパッと手で食べられて
見た目も可愛いカップケーキは、
冷蔵庫にあるだけでちょっと気分が上がります。

あんなにかしましかった蝉たちの声もパッタリ止んで、
代わりに虫たちの声がにぎやかになってきた秋の夜長。
あたたかな飲み物といっしょに、
カップケーキの紙をむきながら
頬張るときの幸せに思いをはせつつ、
どうか、良い初秋を。


わたなべ まり

 

 

●LOLA'S cupcakes
http://lolascupcakes.co.jp/

●FRANZE & EVANS LONDON
http://franzeevans.jp/

2016-09-27-TUE