CAKE

 
 
円い月餅に幸せを願って

月が冴え冴えとしてきました。
いつから‥‥と定かには言えないものの、
澄んだ空気も、高く青い空も、雲の形も、虫の声も、
季節が移ったと全部が教えてくれる秋の入り口です。

季節に関係があるのか、あまり明るくないのですが、
月餅です。

実は、買ってきたのではなくて、
近所の中華料理屋さんの夫妻からいただきました。

よく働く夫妻で、“くるくる働く”という形容詞は
立ち働く様をうまく言い表しているんだな〜と
実感しながら通いはじめて、暫くが経ちます。
気持ちよく動く姿に感じ入りながら、
絶品の餃子を一皿で足りなくて
時々、2皿頼んだりします。
会計をして帰ろうとした先日、
「弟が中国から来ておみやげに持ってきたから、
 ちょっとだけど」
と、持たせてくれました。
中国版ケンタッキーのビニール袋に
ころんと入れられた月餅は、
どっしり重くて、身内に近所の店で買ってきた、
もしくは時々、話に出てくるお母さんが
買ってもたせてくれた感が満載でした。

育った街に中華街があったので
月餅は馴染みのお菓子ではありますが、
その地に長い時間をかけて溶け込んできたのとは
また違う趣きや風味を感じました。
まだ踏んだことのない大陸に思いを馳せつつ、
ここで頑張ると決めた働き者の夫妻と
家族の幸せな未来を祈りつつ、
月餅に乾杯した秋の夜でした。
少しづつ丸くなっていく月の下、
月明かりの照らすどの場所にも
美しく穏やかな秋が訪れますよう‥‥。

 

                   わたなべ まり

追伸:
あまりに私的な回になったので
(といいながら、いつも全く私的なのですが)、
買って食べたりする月餅も添えます。
差し上げる時にも小さくて可愛らしくて、
喜んでいただけているようです。

伊勢丹の地下1階「円果天(えんかてん)」という店の
月餅は5百円玉より少し大きいくらいで、
殿方ならほぼひと口サイズの可愛さです。
しっとりと柔らかく、甘さもほど良いので、
蓮の実餡とか木の実餡とか、栗餡とか黒胡麻餡とか
十四果天とか、いろいろ買いこみたくなります。

ほぼ日編集部にちょこっと差し入れようと買って、
栞を見ていたら、
「中国では、お月見の時に一家円満を願い、
 円い月餅を食べる
 習慣があるそうです」と書いてありました。
知らずに書いていたのに(!)幸運なタイミングでした。
というより、お月見が近づいたから
月餅をお裾分けしてくれた夫妻に
感謝を新たにした次第です。
よいお月見を。

 

2009-09-29-TUE