ほぼ日刊イトイ新聞

マンガでドミノ

今週のマンガ
『ヴィンランド・サガ』
『ヴィンランド・サガ』
著者:幸村誠
発行:講談社

リアルな描写と歴史ものつながりということで
『ヴィンランド・サガ』を推します。

舞台は北欧、時代は11世紀。
奴隷の売買、戦闘と略奪があたり前で、
戦場で死ぬことが男の最高の生き様と考えられていた
ノルド(ヴァイキング)社会で
奴隷も戦争も無い世界を模索していく
少年トルフィンの成長物語です。

といってしまうと、
ものすごく簡単&月並みになってしまうのですが、
紆余曲折のディティールが細かく、
感情の重みがずっしりとして、
その「簡単じゃない」感じにすごく励まされます。

また、大きなテーマは「非戦」なのですが、
ヴァイキングの戦闘シーンは非常に血湧き肉踊るもので、
戦闘モノの漫画としても充分以上に面白いです。
斧、剣、弓矢での肉弾戦なので、
リアルに残虐でもあります。

更に、トルフィンの父の仇でありながら
彼の師匠的な位置にもあるキレ者のアシェラッド、
戦闘を嫌悪する王子クヌート、
王子殺害を目論む父・スヴェン王など
がっちりと作り込まれた人物同士の複雑な感情のやりとり、
駆け引き、知能戦など、
先の読めない物語の楽しさもあります。

まだ未完ですが、
何度も読み返す本になるだろうと思っています。
この作品の作者は既出の『プラネテス』を描かれた方です。

(はと)

2013-08-03-SAT