ほぼ日刊イトイ新聞

マンガでドミノ

『この世界の片隅に』

『この世界の片隅に』

著者:こうの史代
発行:双葉社

またまた大きく路線変更ですが、
「なんでもないけどリアルな日常」繋がりということで
『この世界の片隅に』をお勧めします。

舞台は戦時下の広島。
海苔すきと絵描きが得意な
ちょっとのんびりな19歳の女の子、すず。
嫁ぎ先の呉での生活に、
不器用ながらも馴染んでいって…。

この漫画に描かれているのは、「戦時中の日常」です。
不自由なことも多い時代ですが、
その中で工夫をしたり、助け合いながら
普通に暮らす人々の物語です。
小姑さんが怖かったり、
ヤキモチ焼きあって喧嘩したり、新しい友達ができたり。
現代と全然変わらないような、
ささいな喜怒哀楽が散ばめられています。
でも反対に、大切な人や物を
簡単に奪われてしまうかもしれない、
そんな側面も普通の人の目線で語られています。
特別ではない、日本中にいる普通の人たちが経験した日々を
ちょっと切り取ったという感じで、
「戦争反対!」などと叫んでおらずとも、
とてもリアルに戦争が悲しいことだというのを
感じられるのです。

自分が今暮らしているこの世界が、
いとおしくなる漫画ですよ。

(おかゆ)

2012-10-20-SAT