80's
『豆炭とパソコン』のひとり旅。

第27回

やっとこさ連載原稿のダイジェストの仕上がりが
見えてきたのは7月の半ばで、
イラストをお願いすることになった山田詩子さんには、
一度ミーちゃんのお家に行って、
そこに流れる雰囲気を実際に感じてもらおうと思い、
私も同行して出かけることになりました。
よく晴れた海の日のことでした。

詩子さんはちょうど身重だったので、
そんな大事なときに長距離の移動は
申し訳ないとも思ったのですが、恐る恐る申し出てみると、
ご主人の運転する「車でなら」と
快諾していただけたので、
関越道の寄居パーキングエリアで
待ち合わせをすることにしました。
それまで、詩子さんとは電話を通じてしか
お話したことがなかったので、
うまく落ち合うことができるかどうか、
ちょっと心配でしたが、
先に到着していた詩子さんと優しそうなご主人、
それに可愛らしい息子さんの姿は、
すぐに見つけることができました。
ちょうどお昼過ぎだったので、
おにぎりやらサンドイッチやらをつまみながら
その場で簡単な打ち合わせをし、
私たちは揃ってミーちゃんのお宅へ向かうべく
再び車に乗り込みました。

私がミーちゃん宅を訪れるのも、はや3度目です。
お馴染みのミーちゃんやノリコさんの笑顔に迎えられ、
あたかも親戚の家に遊びに来たような親近感と安堵感が
ついつい顕わになってしまう私。
それにひきかえ、詩子さん一家は少々緊張気味か・・・
と思いきや、詩子さんはスケッチブック片手に
すでに積極的にミーちゃんへの取材を開始していました。

お茶とともにすっかり定番となった
お隣のドイツ菓子屋さんの香ばしいクッキーに
「これ、すごく美味しいですねー!」
の歓声で口火を切った詩子さんの突撃取材は、
食器棚にちらと見える外国土産と思しきコーヒーカップ、
棚に飾られたスイス人形、松本民芸の箪笥、
手編みのスカート、手染めの間仕切りに
庭に咲き乱れる鮮やかなお花の数々まで、
時折スケッチしたり写真を撮ったりしながら
「これは何ですか? ステキですねー!」
と止まるところを知らず続きます。

片やミーちゃんも、
流しの生ゴミ処理機の説明から
毎日実践しているちょっとした健康法、
引っ越してきてから毎年1枚ずつ揃えている
イヤープレートの話、ご親戚の結婚式でのエピソード、
そして20年ほど前にミーちゃんが新聞社に
取材された話まで、淀みなく惜しみなく、
楽しそうに応えています。

その間、ふたりのおしゃべりの横にいた私は、
ミーちゃんの秘密の(?)エピソードの数々を
一緒に聞くことができて、
なんともラッキーな時間を過ごすことができたわけですが、
初めてお会いした詩子さんの、妊婦とも思えない
バイタリティ溢れる取材ぶりには圧倒されっぱなしでした。
そして、その気取りのない、気分のいい人となりに
いつのまにかすっかり魅了されていました。

「これでばっちり!」と詩子さんを見つけた糸井さんの
もはや動物的とも言える勘の鋭さに、
永田さんの「とってもいいと思います」という得点が入り、
さらに祖父江さんの「任せて安心」という言葉が
加算されたところに、
ミーちゃんのお墨が付いたような、
そんなもの凄い高得点をマークした詩子さん。
私は、彼女がこの本のイラストを引き受けてくださった
幸運にあらためて感謝しながら
ミーちゃん宅を後にしたのでした。

マルイさんへの激励や感想などは、
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2001-02-11-SUN

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