80's
『豆炭とパソコン』のひとり旅。

第12回

“自分探し”
というキーワードを軸に練り上げた構成案を持って、
勇んで乗り込んだ約半年ぶりの鼠穴で、
私を待っていたのは、糸井さんのこんな一言でした。

「あのねえ、“自分探しをしよう”なんて思ったのは、
 間違いでしたねえ」
え、えぇ?・・・今、何とおっしゃいましたぁ?

「この連載っていうか、「ほぼ日」やってたらねぇ、
 “自分探し”なんていう考え方が
 吹っ飛んじゃったんですよ」
は、はぁ・・・。

「第一、そんなことを考えてるヒマはないわけですよ。
 血のつながりがどうこうっていうより、
 他人も家族も自分も、みんな一人の人間なわけで、
 その中でどうやってルールを作って
 生きていくかってことが大事なんですよね」
と、いうことは・・・。

「そうだなあ。この本のテーマは“親切”だなぁ。
 インターネットでつながると、会ったこともないのに、
 こっちが困ってると知ればメール送ってくれたりして、
 親切のやりとりができるんですね。
 すごいよ。インターネットのおかげで、
 あらゆる物事の関係性が変わるよね」
うーん、なるほど・・・。

「でね、この“母A”ことミーちゃんがまた、
 今までの常識みたいなものを
 バンバン壊していく人なんだよ。
 お隣との関係とか、お金の使い方とかさ。
 考えたらミーちゃんて、
 ただの80歳のおばあちゃんなんだけど、
 なんか楽しそうにやってるんだよね。
 そういう生き生きしている老人の暮らしっていうのが、
 この本の核になるんじゃないかなぁ。
 マルイさん、一度行って来るといいよ、ミーちゃんの家。 
 おっもしろいよぉ」
・・・。

結局、私が考えていた“自分探し”を見据えた企画は
こうしてあっさり反故となり、
この段階で構成案はまた白紙に戻ったカタチとなりました。

でも・・・なんだかいい方向じゃありませんか!
それに、「書き下ろしを加えたい」という私の申し出にも、
「うんうん、それはもちろん必要でしょうね」
と快いお返事。

そして、糸井さんから新たなる提案が出されました。
「この本を進めるにあたっては、いろいろ思い出したり
 考えをまとめたりしないといけないと思うんだけど、
 いま「ほぼ日」で“快録テレコマン”として連載を
 お願いしている永田ソフトくんにも手伝ってもらったら
 どうかなあ? とにかく彼の取材能力は抜群なんだよ。
 彼にぼくを取材してもらったら、なんかうまーく、
 ぼくの考えを引き出してくれそうな気がするなぁ」

“快録テレコマン”の連載は
「ほぼ日」でまだ始まったばかりでしたが、
テレコで録音した会話をほぼそっくり再現した原稿で、
あたかもその場に居合わせたように読ませるという
テレコマン氏の斬新な手法に、
私も感心していたところだったので、
すぐに「それはいいですねえ」という話になりました。

それにしても・・・
もう、こうなったら
何度でも構成は考え直すしかありません。
とにかく一度、私はミーちゃんに
会いに行ってみることにしたのです。



【お知らせ】

今日は、読売新聞に掲載されているはずです。


darlingが「決死の覚悟で(本人・談)」
『豆炭とパソコン』の取材を受けまくっている。
だから、普段登場しないような番組とか、雑誌とかでも
「決死の中年男」を目にすることが多いと思います。

どんな番組や雑誌に出たか、出るかについて、
ここしばらくの予定をここに書いておきます。
(編集部調べ)

<書評>
他にも共同通信発の各地方紙に記事がありました。

 ・11/10(金)発売「週刊ファミ通」
 ・11/11(土)発売「サンケイスポーツ」

<インタビュー・対談>

 ・11/15(水)読売新聞朝刊「デジタルトレンド面」
 ・11/27(月)発売「ぴあ」
 ・11/28(火)発売「週刊朝日」の「林真理子対談」
 ・12/1(金)発売「日経アドレ」1月号
 ・12/27(水)発売「メイプル」2月号の
   「BOOKインタビュー」

<出演>
 ・12/1(金)文化放送「吉田照美のやる気満々」
        15:15〜15:30(予定)



『豆炭とパソコン』
糸井重里著
1400円
世界文化社
ISBN: 4-418-00520-X

2000-11-15-WED

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