magic
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


ホット・エアー

最近、いろんな人々の会見を聞くことが多い。

コンプライアンスの時代に合わせて、
皆さんメモ等を読み上げておしまいにする。

あまり表情も変えず、質疑応答はほんのわずか、

「皆さん、ありがとうございました」

早々に切り上げる。

でも、まんざら嘘にも聞こえないから不思議だ。
嘘でも真実でもない、言葉で時間を埋めるだけ。

アメリカの友人に聞いたことがある。

「あぁ、それは英語で
 『ホット・エアー』と言います。
 ただの温かい息、空気ね」

なるほど、なるほど。
言えてる、言えてる。

暖簾に腕押し、だっけ。
さすがに、生温かい空気には
ツッコミなどできやしない。

なぜ、そんなことが気になったのか考えてみる。
たぶん、私も人前でしゃべることを
仕事にしているから、
言葉の使い方を少しは考えているからかもしれない。

しゃべりが、ただの温かい息、空気だったら、
きっと笑いはとれないだろうな。

マジシャンのしゃべりだから、実のところ、
心にもない嘘ばっかり。

「タネ、しかけ、いっさいありません」

いえいえ、本当はタネとしかけしかありません。
マジックだもの。

「こんな良いお客様は初めてです」

具体的にほめるところがない場合の、嘘。

嘘は嘘だけど『ホット・エアー』ではないと思う。

それに、観客は始めから嘘と分かっていて、
むしろ嘘を楽しんでくれるみたいだ。

マジシャンて、実にありがたい職業かも。
嘘ついても、めったに怒られないし。
だいたい、笑って許してもらえるし。

以前、自称、超能力者に、

「マジシャンは嘘の天才、プロなんだよ」

と、ホメられたことがある。

仕方ないから、

「あなたの超能力は本物です」

と、笑顔で応えておいた。


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2018-07-01-SUN
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