magic
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『続・ジビエ大作戦』


天然鮎のフルコースを味わおうと、
島根県津和野の名店『美加登屋』に向かった
我々であったが、まさかの大遅刻に女将は困惑しきり。

しかし、板長の、
「なんとか数はありそうです」
で、やっと笑顔になって2階の宴席に案内してくれた。

子うるか、鮎の内臓らしいが、白くてふわふわの舌触り。
苦うるか、こちらは茶色っぽくて苦いのに、芳香。
背ごし、新鮮でなければ絶対にいただけない若鮎の刺身。

清汁仕立て、柔らかな冬瓜の上に香ばしく焼かれた若鮎。
塩焼き、緑の笹の葉に盛られた大漁の焼き鮎。
うるか茄子、茄子とうるかを口中調味、
山と清流の夏風味。

うるか味噌揚げ、鮎カツといった風情、骨もパリパリ。
鮎昆布〆、生姜と酢でさっぱり、身はねっとり。
白味噌仕立て、鮎と白味噌が合う、合う。

鮎めし、炊きたてご飯から鮎の芳香、
たっぷりの身の甘み。
すべて天然鮎、まさに清流のジビエを味わい尽くし、
しばし放心。

車で今宵の宿、『ペンション北斗星』へ。
荷物を部屋に置き、敷地内にある日原展望台に向かう。

今回のツアーは欲張りで、お腹を満たした後は
満月、土星、金星と、夜の宇宙を味わおうという目論見。

実のところ、お腹いっぱいで星を見るというのも
どうかいなと訝っていたのだが、
これがまるで輝くデザートのよう。

いにしえの山と川の上、漆黒の闇を照らす星々の輝き。

羽田から1時間ちょい、
萩・石見空港から車で30分ほどで、
日本の原風景に浸ることができるとは。

ジビエ大作戦の2日目は、太鼓稲荷神社詣でから始まった。
果てしなく続く朱塗り門を登ると、
自ずと厳粛な気持ちになるから不思議だ。

津和野を見下ろす高台から、
小さな電車が盆地を走り抜けるのを見つめる。
実にのどかな風景。

途中合流の鉄ちゃん、Mさんの解説付き。
「そろそろ、今度は下り電車が見えてきますよ。
 あぁ、これはいいなぁ」
Mさんは解説しつつ、写真撮影。

いつも思うことだが、マニアというのは実に羨ましい。
なんせ、もう、
それさえあれば幸せという生き方ではなかろうか。

「小石さんだって、マジックマニアなんでしょ?」
そういわれるが、私は趣味を仕事にしてしまっていて、
となるとただ楽しむ、てなわけにはいかなくなるのだ。

「滝と即身仏、棚田、武将のお墓、
 これらのマニアという方もいて、なんというか、
 ニッチなマニア、ニッちゃんとでも
 言うんでしょうかねぇ」

「サブカルチャーマニアは、サブちゃん、ですかねぇ」

神社の境内で、なぜか奇妙奇天烈なお話。

続いて、スキー場のリフトのような乗り物で
津和野城址へと向かう。

「熊が出たら、犬の鳴きマネをするといいよ」
実際に熊に出くわしたら、
犬の鳴きマネなんてできるのだろうかと思いつつも、
「ワン、ワン」
と吠えてみる。

『 夏草や 兵(つわもの)どもが 夢の跡 』
まさに、芭蕉の俳句そのものの津和野城址。

だが、城址から見下ろす津和野の風景は本当に美しく、
なぜか懐かしい。
『 城址(しろあと)の 夏草の先 あぁ津和野 』

                  (つづく)

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2017-07-30-SUN
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