magic
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『叩いても直らない!?』


マッサージチェアの作動中にノイズが出る。
まるで笛のような、ピーピーという高い音が鳴る。

この音は使い始めから鳴っていて、
すぐに電話して修理してもらえば良かったのに、

「使い始めだからだろう。
 そのうち、こんなノイズは消えるはず」

などと、マッサージチェアのあちこちを
叩いたりしていた。

そうこうしているうちに、
保証期間の1年が過ぎてしまった。

ピー音は消えるどころか
ますます大きく高く響いていて、
とうとう修理を依頼することにした。

ある日、白髪頭のおじさんがやってきた。

「修理担当の者です」

こういう時、いつも思う。

「はたして、この修理のおじさんはデキる修理の人?
 それとも?」

私は自分を疑うことはしないが、
他人は疑いまくる性格である。

修理担当の人だから、誰でも優秀とは限らない。
プロであっても、才能や経験の差とかで
優劣は出てくるし、
中には修理のヘタな人もいるに違いない。

なぜそんなことを考えるのか?
それは、私がプロのマジシャンだから。

一般の方々はきっと、

「プロのマジシャンです」

そう言われれば、

「きっと凄い技の持ち主だろうなぁ」

そう信じてしまうだろう。

しかし、実はマジックが苦手な
プロのマジシャンだって存在するのだ。

秘中の秘であるが、
私自身が自白しているのだから間違いない。

私は疑り深く修理のおじさんの仕事振りを観察した。

マッサージチェアも、実に複雑なメカになったものだ。
あちこちデジタル化もされている。

昔の電化製品などは、
ちょっと叩いたりすると直ったりした。

永六輔先生のお話を思い出す。

「僕が乗ってたタクシーが事故を起こしてね、
 僕も少し頭を打ってね。
 そうしたら、むしろ体調が良くなって。
 やっぱり、昭和のものは叩くと直る(笑)」

パソコン、スマホは叩いても直らないもんね。
あぁ、昭和の時代が懐かしい。

私が感傷に浸っていると、

「モーターを交換しますが、
 使い始めから音がしていたということなので、
 部品代はいただきません」

私は出張費と技術料のみをお支払いした。

おじさんは上手いプロの修理人だったようで、
丁寧な作業、分かりやすい説明だった。

私は静かになったマッサージチェアに横たわり、

「変だなぁと思ったら、叩いたりしないで
 保証期間のうちに電話してプロに直してもらうべし」

心の中で大いに反省をした。

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2017-06-18-SUN
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