magic
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『外見じゃない、見た目だ』


ぼんやりテレビ画面を眺めていたら突然、
マジック番組の予告が始まった。

マジックの殿堂といわれる、
ロサンゼルスにあるマジック・キャッスルでも
収録が行われたようで、懐かしい光景が映し出されている。

ただ単にマジシャンのネタを見せるだけではなく、
マジックに魅せられたきっかけ、
その生き方なども収録されたようで、
実に興味深いではないか。

こんな面白そうな番組ならば、
私にもお声がかかってもいいのになぁ、
ちぇっ、なんて思う。

さて、次の収録のための面白いネタはないかなぁ、
なんて考えつつ街をブラブラしていると、
知らないお爺さんに声をかけられた。

こう言っちゃぁ申しわけないが、
昔話に出てくる『悪いお爺さん』のような、
意地の悪そうな人相風体の爺さん。

案の定、
「昔はよく見てたけど、
 最近はテレビで見ないねぇ」
などと大声で言う。

まったく、余計なお世話だよ。
私がテレビに出ようが出まいが、
爺さんには関係ないだろうが。

だいたいねぇ、爺さんは全部のテレビ番組を
1日24時間、365日、地上波もBSも
欠かさず見ているというのかい。

反論するのもナンだから言わなかったが、
私だってあちこちの番組に
ちょくちょく出させてもらっているマジシャンだよ。

つい先日も、あのご長寿番組の収録があったし、
頻繁ではないが、しぶとく長く
ちょいちょい出演しているマジシャンでございますよ。

だから、爺さんは、
「ワシの見ている、ごく限られた番組では、
 あなた様のご尊顔、ご出演を確認できず、
 誠に残念でございます」
と言うべきなのだ。

だが、私は良いおじさんなので、
「いやいや、また近々出ますからご覧くださいね」
と、大人の対応。

すると爺さん、
「へぇぇぇ、じゃぁ、楽しみにしてますよ」
と、またまた嫌味たっぷりに言い残す。

嫌な爺さんだよ、まったく。

こうなると、あの爺さんだけには
見てほしくないと思う。

あんな悪い爺さんに見せるために
マジックやってるわけじゃない、
良いお爺さん限定なのだ、ふんっ。

でもね、悪そうに見えて
本当は優しい良いお爺さんなのかもしれない。
かもしれないが、見た目が悪過ぎる爺さんだったし。

はたして、どちらなのだろうか。
良いお爺さん?
それとも、悪い爺さん?

私は、先輩芸人さんの名言を懐かしく思い出した。

「人は外見じゃないよ。
 人は、見た目だ‥‥」

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2017-04-23-SUN
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