magic
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『運命の甘噛み』


動物ドキュメンタリーのシリーズを観た。

ガラパゴスに生きる
海イグアナの生態を追った映像がすごかった。

海の近くの砂場から、
卵からかえったばかりの海イグアナの赤ちゃんが
顔を出す。

すぐに、親たちが住む険しい岩場まで
移動しなければならない。

海イグアナの赤ちゃんは、四つ足歩行で岩場に向かう。

すると、岩場からニョロニョロと蛇、蛇、蛇、蛇。
数え切れないほどニョロニョロ、ニョロニョロ。

海イグアナの赤ちゃんは、生まれたばかりなのに
早足で岩場へと必死に走る、走る。

しかし、蛇たちも早い、早い。
しかも数匹で一匹の海イグアナの赤ちゃんを追う。
恐ろしいスピードで追う、追う。

蛇の牙をからくも逃れ、
やっとの思いで岩場にたどり着き、
岩肌を登って生き伸びる海イグアナの赤ちゃん。

しかし、どうやら生き残るのは少数のようだ。
途中で捕まり、数匹の蛇に巻かれ、
締め殺される海イグアナの赤ちゃん。

なんという過酷な運命だろう。

バッファローも大変だ。
オオカミの集団攻撃に倒れ、
鋭い牙で生きたまま皮を肉を裂かれて絶命する。

アザラシはシャチの連続攻撃で海に落ち、
咥えられて海深く沈められ、あわれ窒息死させられる。

ひな鳥はペリカンに丸呑みされちゃうし、
ネズミはフクロウに捕食され、
ピラニアだってカワウソに食いちぎられるのだ。

マジシャンである私も、
「ちっとも不思議じゃない、面白くない」
「いま、タネが見えたぁ〜!」
などの激しい口撃を受け、
絶命するかと思ったことがある。

また、渾身のギャグが滑りに滑り、
観客の集団無視作戦に
神経をズタズタにされたりもした。

だが、映像に出てくる動物たちの試練に比べれば
大したことじゃなかった。

私も人並みに悩み、苦しみ、
もがき続けたように思っていたが、
なんのことはない、運命に甘噛みされたようなもの。

甘噛みだから、少しは痛かったかもしれないけれど、
傷なんてまるで残ってないし。

そういえば、誰かに言われたっけ。

「小石さんは、人を喰ったような芸風ですね!」

いえいえ、私のも優しい甘噛みなんですよ。

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2017-04-09-SUN
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