magic
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『40年目のパンツ』


デパートにパンツを買いに行った。
ズボンじゃなくて、下着のパンツ。

メンズのパンツも種類が増えたもんだ。
色んなブランドのパンツが並び、形も様々だ。

「こちらはオーガニック・コットンで、
 縫い目のないものです。
 とてもはき心地良いです」
と、女性スタッフ。

「あの、もちろん、男性スタッフの感想です」
誤解のないよう、すぐさま補足。

実際にはいた男性にも聞いてみたいが、
「そのぉ、収まりがよろしいというか、
 こう、包み込まれる感じが、
 やはりシームレス独特でして」

なんて具体的に説明されるのも微妙だし。

オーガニック・コットンのパンツの
なんともいえない肌触り、
伸びやかさにウットリ、
素晴らしいなぁと値札を見れば、
¥12,000という数字。
ん? ¥12,000?

しかし、高いだけある超やわらかな手触りにウットリ。
あまりのやわらかさにほおずりしたいところだったが、
絶対に怒られるのでやめた。

「あの、肌シャツも良いのが入ってます。
 こちらはシルク95%、着心地良いと思います」

確かに、パンツは高級なのに
肌シャツは安物じゃぁちょいと寂しいかも。

「こちらは9,500円でございます」
ふむふむ、確かになめらか、滑るような感触。

もうひとりの僕がささやく。
「マジックって見えないところ、
 タネ仕掛けにお金をかける芸能。
 見えないところこそ、命」

結局、
「僕の人生の中でダントツ高いパンツ、ふっふっふ」
と、高揚感に浸りつつ購入を決意。

翌日、12,000円のパンツ、
9,500円の肌シャツでステージに立ち、
手品売り場で買った2,800円のマジックを
堂々と演じることができた。

『良いマジシャンになるためには高いパンツをはけ』
40年目にしてたどり着いた真理であるが、
若手にマネされるのはイヤだから内緒、
秘密にしておこう。

ツイートするFacebookでシェアする

このページへの感想などは、メールの表題に
「マジックを読んで」と書いて、
postman@1101.comに送ってください。

2017-03-05-SUN
BACK
戻る