magic
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『飛ばない鳥』


2017年の年賀状に書いた一句。
『この春や 低空飛行で ふわふわり』

酉年だから、
『大いなる飛翔を』
『世界を飛び回ります』
『マジックでうっトリさせます』

てなことも考えたのだが、
なんだか気分にしっくりこなかった。

始めは、年明けから低空飛行というのも情けないし、
盛り上がりに欠けるなぁと思っていた。

しかし、よくよく考えれば『低空飛行』が
今の気分にピッタリのような気がしてきた。

思い返せば、私はいつだって低空飛行だった。

大汗かいて歯を食いしばって、
大空高く大飛翔なんて性に合わないし、
やったことなど一度もないのだから。

鳥類の中でもダチョウ、エミュー、ヤンバルクイナ、
ペンギンなど、飛ばない鳥にシンパシーを感じてしまう。
鳥類なんだから飛べばいいものを、
彼らは飛ばない生き方を選んだ。

私も、マジシャンなんだから
不思議なことだけやればいいのに、
ついついお笑いマジックを求めてしまう。

もともと、私は高所恐怖症である。
もう、高いところは一切ダメなのだ。

以前、ロケで、
「はい、小石ちゃん、その堤防の上に立ってね」
なんて言われて堤防に上ったのだが、立てなかった。

堤防の高さは3mくらいだったが、
その上に立つともう目が回りそうになり、
私はすぐさましゃがんで堤防にしがみついてしまった。

ディレクターが怒るのなんの。

最近はさすがに慣れたが、
以前は飛行機に乗るのも怖かった。
窓から下界を眺めるなんて、とてもとても無理だった。

ゆえに、低空飛行しかないのだ。
いつでも降りられるように低く、ゆっくりゆっくり飛ぶ。
そりゃもう安全第一。

本当はもっと高く、さらなる高みを目指して
羽ばたかねばならないのかもしれない。

しかし、いったん高く飛んでしまうと、
今度は少しでも下がってしまうのが怖くなる。

ちょっとでも下がると、もとの高みを目指さねばと
必死になって羽ばたいてしまう。
なんだか哀しい。

遥かなる高みを飛び続けるなんてできるのだろうか。
羽が抜けたり折れたりはしないのだろうか。
いつか力尽きることはないのだろうか。

ついつい、下方を飛んでいる鳥たちを
見下したりしないのだろうか。

いかんいかん。
やはり、お調子者の私には低空飛行がお似合いなのだ。

ちょっとだけ助走してフワリと浮いたら、
あとはゆったりフワフワ。
時に歩き、走り、ふわりふわり、私の空を漂いたい。

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2017-01-29 -SUN
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