magic
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『これが大人の世界だっ!』


今年も小学校巡りをしてきました。

今回は1日2校で、5日間に10校を回って
特別授業を担当、ハードながらも楽しい日々でした。

「マジシャンが小学生に授業を?
 やっぱり、マジックを教えるの?」

いやいや、
ただ単にマジックショーを見てもらうだけじゃ、
授業とは言えないでしょう。

私は、大きなハンカチを見せつつ、
子供たちに尋ねます。
「このハンカチの中から出てくるのは1番リンゴ、
 2番バナナ、3番ミカン。
 さぁ、何番でしょうか?」

子供たちは口々に、
「1番だと思いまーす」
「2番だよ〜、だってバナナ、好きだもん」
「3番だよ、僕、知ってる」
などと大騒ぎ。

で、私の答えは、
「残念でした。
 正解は4番のスイカでしたぁ〜!」

子供たちは出てきた大きなスイカに驚きつつも、
「4番?
 4番なんて、言ってなかったじゃん」
そりゃもう、全員で猛抗議の嵐。

そこで私はひとこと、
「子供たち、よぉく聞きなさいよ。
 これが大人の世界だっ!」

我ながら無茶苦茶な展開なんだけれど、
不思議なことに子供たちは
納得したように急速に静かになるんですよ。

まぁ、あまりのことに
絶句しているだけかもしれないけれど。

当たり前だけれど、学校で教えられるのは
たくさんの常識ですよ。
非常識なことなんて、一切教わらない。

でも、大人になると、社会に出ると、
学校では教わらなかった非常識なことが、
いっぱいあったりする。

そんなことを、もう薄々でも、
マジックの意外性を通して
感じてもらおうというわけで。

先生から1万円札を1枚借りて、
「このお札が、なんと2枚になります!」
子供たちはワイワイ、大喜び。

ところが、1万円札は
2枚の千円札に変化してしまう。
子供たちが再び、

「インチキだよ〜!」
「2万円じゃないじゃないか〜!」
「サギだぁ〜、サギ師だぁ〜!」

そこで私は、
「私はサギ師ではありません!
 サギ師は去年でやめました。
 今年から手品師です、へっへっへ」

更に続けて、
「1万円札を2枚にすると言うと、
 僕らはなぜか1万円札が2枚になるんだなぁと
 思ってしまいます。
 でもね、千円札が2枚、
 5千円札が2枚ということもあるよ。

 なのに、僕たちはいつも
 自分に都合よく考えてしまう、
 悪いクセみたいなものがあるんだよ」

子供たちは不満タラタラながらも、
なんとなく納得している様子。

お終いに、
「君たち、ちゃんと勉強しないと
 僕みたいになっちゃいますよ!」

子供たちが深くうなずくのがちょいと哀しい、
私の特別授業でありました。

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2016-10-16-SUN
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