magic
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『ありがとうございました』


ずいぶん以前のこと、永六輔先生と千葉県に行った。
『永六輔とナポレオンズの会』公演が、
千葉の旭市で催されたのだ。

公演の帰り道、ドライブインで遅い夕食を食べながら
3人だけの反省会となった。

途中で僕は席を立ち、入り口近くの公衆電話で、
「もしもし、まだ永先生の話が続いてるんだよ。
 あれこれダメ出しがあってさ、帰りは遅くなるなぁ、
 これじゃ」
などと、ぼやいていた。

電話に入れた10円玉がボトンボトンと落ちて、
「もう10円玉がないから、すぐに切れちゃうかも」
そう言った直後、10円玉を数枚乗せた大きな手が
ぬっと目の前に出てきた。

「あ、どうも」
10円玉を1枚つまんで黒電話に入れつつ振り向くと、
そこに永六輔先生のニッコリ笑顔が‥‥。

芸についてはよく叱られたりもしたが、
いつも優しい我が師でありました。
あの時の10円、返したっけ?

永六輔先生のことを、『ライフ・イズ・マジック』
(2000年8月5日更新)に書いていました


『しかし、捨てる神あれば拾う神あり。
 敬愛する松旭斎すみえ先生にご紹介いただいた、
 あの永六輔先生がまさに我々を拾ってくれた
 神さまだったのです。

 永先生は、我々を地方の青年団などの主催するイベントに
 連れていってくれたのでした。
 「彼らのマジックが分かんない人は、
  センス悪いんですよ!」
 などと紹介してくれ、無理矢理笑わせたりして
 大いに自信を与えていただいたのでした。

 また、永先生自らカゴを持って、
 観客にお金を投げ入れてもらうのでした。

 夜、宿泊先の旅館で、
 その「投げ銭」をきっちり3等分するのです。
 まるで「永六輔とナポレオンズ一座」なのでした。
 その楽しい一時ったら!
 芸人の歓びの原点ですよね。

 ともかくも、僕らは僕らのセンスを信じて、
 やりたいようにやっていけば良いんだ、と思ったのです。
 「ヘンテコリン」を、楽しんでくれる人がいました。

 また僕の田舎(岐阜)で、
 「小石君の故郷に錦を飾る会」を結成していただき、
 父母及びあらゆる親族、
 及び町の人々の前で公演するという、
 夢のような機会まで与えて頂いたのです。

 もし、やはり永先生も、僕らを
 「ヘンテコリンな手品師だねえ」などと
 評価されていたなら、
 僕らはいったいどうなっていたことでしょう。
 やはりマジックの技術より、人との出会いですよね。
 永先生には、心より感謝いたします。
 (まだ直接、申し上げられないでいますので、
  この場をお借りして)』

永六輔先生、本当にありがとうございました。

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2016-07-24-SUN
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