MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『雨の降る夜に思い出すのは』


< 目玉焼き >

外国の友人たちとホテルのレストランで
朝ごはんを食べていた。

アメリカ人の友人が、
「卵はサニー・サイド・アップで」
そう頼んだあと、私に、
「ねぇ、サニー・サイド・アップって、
 日本語ではなんと言うの?」

私はすぐに、
「あぁ、日本語だと、目玉焼き、だよ」
そう英語で説明しようとして、やめた。

適当な英語が思いつかなかったこともあるが、
まさか
「フライド・アイ・ボール」
などと直訳するわけにもいかない。

本当は、なんと説明すればいいのだろうか?


< アプリ >

久しぶりに知人に会った。
が、名前を思い出せないで焦る。

顔も状況も覚えているのに、名前が出てこない。
ここ数年来、何度も会っているのに、
名前だけ思い出せない。

こんな時のお助けアプリがあればいいのに、と思う。
スマホを彼に向けると、
『田中一郎さん、◯◯会社専務、54歳』
なんて情報が画面に浮かぶ、
そんなアプリが開発されないものか。

指名手配犯バージョン、なんてのもあるといいかな。
前に座っている怪しい男にそっとスマホを向ければ、
『◯田◯夫、強盗の疑いで指名手配中』
なんて画面に表示される。

ちょっと恐いか。


< 弱点 >

老超能力者は、いつものように目隠しを幾重にも重ねた。
このままスケッチブックに書かれた文字を透視するという。
「なんでもいい、文字を書いてくれ」

私は、思いっきり小さな文字を書いた。
スケッチブックの文字を透視していた老超能力者は、
小さく首を横に振り、
「おい、何も書いてないじゃないか」

老眼だと、こんな小さな文字は見えないもんね。


< ファーストクラス >

以前は、
「一度でいいから、
 国際線のファーストクラスに乗ってみたい」
そう思っていた。

そんなことを思い出しながら
新聞に挟まれたチラシを見ると、
『ハイクラスの墓所をあなたに』
の文字が目に飛び込んできた。

飛行機のファーストクラスは
いつか降りなきゃいけないけれど、
ハイクラスの墓所は永遠に入ってられるのだろうか。


< メンマ >

仕事で目黒に行った。
終わってみたら腹ペコ、駅近くのラーメン屋さんに入った。

スープがあっさり、それでいて旨みたっぷり。
それに、メンマの旨いこと。
メンマは大ぶりで、独特の歯触り、味わい、香り。

私は思わず唸った。
「うぅむ、メンマは目黒にかぎる」

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2016-05-22-SUN
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