MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『暗闇のなかで僕は泣いた』

スクリーンから、
男の切ないつぶやきが聞こえてくる。

『普通の人生を手にいれるのって、
 実はすんげぇ難しいって。
 ものすごく努力して努力して、
 どうにかなれるのが普通で・・・』

良いマジシャンになるための努力って、
いったいどのようなものなのだろう。
はたして、方法なんてあるのだろうか。

はたして僕は、なんとか普通の芸人にはなれた
のだろうか。それとも?

『親父、生きるのって難しいなぁ』

これまでも幾度か思い知らされた。
これからも、時に思うのだろう。
本当に、生きるのって難しいよねぇ、親父。

『手品っていう漢字は、手はひとつしかない
 けど、口は3つもあるんだよ』

手技を1回練習したら、それに合わせた
しゃべりを3回練習するってこと‥‥
じゃないよね。

『ここじゃなぁ、手品氏も玉乗りも、
 笑い取らざる者は食うべからずってなぁ』

米国の人気マジシャンが言っていた。
「驚きとか拍手とかはさ、
 お客さんは嘘でもするもんさ。
 でもさ、笑いって嘘じゃ絶対にできないんだよ」

『ユリ・ゲラー? 由利徹じゃなくって?』

ある年代の人じゃないと、
このセリフに笑えないです。

『やっと俺もA(エース)とか
 K(キング)になれるのかなぁって』

そう思える時でもないと、
やっていけない世界なのかもしれない。
たとえ勘違いでも。

『鯨(げい)を喰って芸を磨け』

そういやぁ最近、鯨を食べてないが。
まさか自分のダメさ加減をそのせいにするわけにも、
いかないよね。

『まぁ、ダメはダメなりになぁ』

そう、ダメはダメなりに。

『何やっても、ちっともうまくいかなくて、
 もう全部やめちゃおうかなって
 思ったりすることもあるんですけど、
 その人生が、どれだけ母親から
 強く望まれてきたものかっていうことを知って、
 それで、その後、
 人生がすごく愛おしいものに思えて。
 だから、母親は僕にとって、生きる理由です』

生きる理由なんて、考えたこともなかった。
だけど、誰にだって生きる理由が、あるはず。

暗闇のなかで僕は泣いた。

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2015-06-07-SUN
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